ただのヲタ
私は、実家のチャイムを鳴らす。
手には遺影。もとい、パパが入った香水瓶だ。
一時はタッパーに入ってもらっていたが、あんまりなので住み替えてもらった。
「あ〜!ユカちゃん!おかえりなさい〜」
「ママ、ただいま。おうちゃん、いる?」
私は、パンプスがなかなか脱げなくてふらついた。
自宅と同じポプリの香りがフワリとして、安心する。
「おうちゃん、仕事あるとかで今朝帰っちゃったんよ。お姉ちゃんにお土産って、ピアノの上にあるよ」
ありがと〜、と気のない返事をして、リビングのソファにドサっと座る。
手の香水瓶……まだこのままでママと話をしよう。
「ママ、パパと結婚して幸せだった?」
「なにもう!ほら、お線香あげてあげて」
私は、ローズの香りのピンクのお線香を立てる。
少し若い頃のパパの写真は、ママの趣味の花柄に囲まれ、花を背負った王子様のようだった。
「ふふ、もうさ、ユカちゃんがこの歳になったから言うけどさ。ママね、パパのこと大好きだったんよ。今でいうね、推しだったのかな」
私はあんぐり口を開けてママの方を見た。
「は?推し?」
「新入社員の子にね、パパの話してたら、それは推しですねって。分かります、って!私も推しに貢いでますって、ママ仲良くなっちゃって……」
その後もママは誰がどうだの喋っていた気がしたが、全然入ってこなかった。
「え……じゃあ、ママが働いてたのは?」
「ん〜、パパにかっこよくいてほしかったからさ、ほら、ママが稼いだお金でパパを磨いて、これママの推しで〜す!って周りに見せびらかしたかったのかな」
「は……。癌のときも、ママのお金で治したよね?」
「あれはぁ、パパにお金ないの分かってたしさ、ほら、ママ保険屋だから、自分の保険も使ってみたくて」
はぁ?話が違う……




