恐妻よろこんで
私は、久々にブチ切れていた。
でも、頭は冷静だ。これまでの方が恋のぬるま湯で鈍っていたくらいで、今は冴え渡っていた。
菅野くん、どうも怪しいと思っていた。
というか、パパの霊が現れて完全に推測できた。
今までの美形、ぜんぶお化けだ。
だって、どの人にも共通した人格を感じていた。
まるで誰かが何役も演じているような……
「はい……」
目の前の男が、パパの顔から知らない男に変わった。
私は、一瞬面食らったが、この機を逃してはいけない。ラム酒を一気飲みしたつもりで、気を張り直した。
「あなたは……何なの?」
「ぼくは……菅野です」
やっぱり菅野か。
「実は、美形の幽霊にとりついてもらって、姿を変えていました。その……騙すつもりはなかったんですが、あの騙す……ことになって」
「商売の話は生きてるんやろな」
「へ……」
菅野くんは、私の地声に驚いているようだった。
「あ、はい……今、顧客に事前の営業かけてて、このままいけばほぼ成功するかと……」
「よくやってくれた。で、なんで私にここまですんの?で、霊をどうこうのって、この先どうすんの?」
私は、もう取り繕う必要がなかった。
地声、気持ちいい。楽。
言いたいこともズバズバ言える。
いいわ。元の菅野に戻ってくれて。
恐妻でもなんでも。
菅野とならこの先やってける気がする。




