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負け
ぼくは、ぼくのままでユカちゃんに会うことにした。
これ以上誰かの姿でごまかしても、その先がない。
ぼくは、本気でユカちゃんに惚れていた。あの甘い声、細い腰、しなやかに曲がる身体を、ぼくだけのものにしたかった。
当たって砕けろだ!
ユカちゃんに、今日の仕事が終わったら会う約束をした。
これまでのこと、どう説明すればいい。
ぼくは、顧客に営業することで頭がいっぱいだ。
それについては、その時の僕に委ねよう!
ユカちゃんを前にした時のぼくに、頑張ってもらおう!
ぼくは、本日20本目の電話をかけ終え、クタクタになって退勤した。
「おう、お前、早退か」
高木先輩、17時定時を過ぎて帰るのは、早退じゃないんですよ。あんたも家に新生児いるならとっとと帰りなさいよ。
ぼくは、挨拶だけしてさっさと事務所を出た。
帰り際、何気なく倉庫の方が気になって、ちらっと目をやった。
見なきゃよかった……
あの黒い霊、倉庫の手前まで出てきてこっちを向いてやがった……
目が合ってる………
やばい……………




