最低な美男子
「は?俺もう散々ヤったから、もう生まれ変わりてえんだけど」
クォーター美男子は、ただの反社チンピラだった。
表情が歪んでキツい。これじゃ元の美しさが台無しだ。
ぼくは、そこをなんとか、と引き止める。
「もっと美人とヤらせてもらえたら考えるけどな」
ぼくは、頭がカッとなった。
「ふざけんな!ユカちゃん美人だろうが!目が潰れてんのかカス!」
ユカちゃんのことになると、ぼくも口が悪くなる。目の前のクズ男といい勝負だ。
「いやだって、お前もユカのすっぴん見たろ?あれ、常にメイクしてないとキツいぜ。あれくらいの子なら腐るほどいるわ」
ぼくと美男子は、取っ組み合いの喧嘩になった。
でも、ぼくの腕は彼を通り抜ける。
説明しよう。
ぼくの魔法について。
ぼくは魔法と呼ぶが、要は危険な降霊術だった。
この美男子も、ダンディ美オジも、中性美男も、みんな死霊だ。
ぼくは、この世に心残りがあってフラフラしている美形の男の霊を探しては、スカウトしていた。
霊は滞留する水場に集まるという。
ぼくの会社には、大量の水タンクがあった。
別に飲料水なので濁ってはいないのだが、たまに在庫が長期間ハケないと、フラフラと霊が集まってくることがあった。
ぼくらは、人類が誕生してから何千年も後に生まれてきた。ストックも充分にあった。
そして美形の若い男の霊を見つけ、なにが心残りなのか尋ねてみると、不思議と女に未練のある奴が多かった。
なまじ美しかった分、長生きすればもっと女を抱けたのに、ということらしかった。
イケおじもそのクチだ。
ぼくは契約した。
ぼくに取り憑いて、ぼくの姿を君に変えてくれ。
その身体はぼくのものだが、意識は君にもあるから、体験を共有できる。
その話にのった男たちが、3人いたということだ。
最初のふたりは、もういいやと満足して昇天して行った。
しかし、この男だけは女に意地汚く、なかなか昇天する気配はなかった。
だからこそ、まだまだ使えそうだったのに…
ぼくは、喧嘩腰をやめて、頭をフッと斜めに下げた。くそ…悔しいけど
「頼む。ユカちゃんを助けたいんだ。ユカちゃんのヒーローになりたいんだ。あと1ヶ月……」
言い終わらないうちに、ぼくは絶望した。
ニコニコ笑いながら、後光が射すなか手を振るクォーター美男子がいた。
だんだん透けてきている…あっ、消えそう
消えた。




