私の好きなこと
菅野くんから、連絡があった。
企画書が通ったらしい!やった!
私は、力を込めた小さな拍手をした。
ギリギリだった。
お友達紹介キャンペーンについては、今週末のウォーターサーバーのイベントと、菅野くんが顧客のもとへ直接出向いて営業するとのことだった。
私も、祖父母と孫のイベント申込みを、来週の締切にしていたので、たぶんその頃には参加者が確定するだろう。
料理教室のイベントは、体験とは別に企画したものなので、ここに紹介キャンペーンからくる体験者を入れ込むのに、ギリギリのスケジュールだったわけだ。
でも不思議と、ぴったり収まった。
このまま、この調子を崩さず、当日を迎えられればいい。
私は、ぎっしりと書き込まれたカレンダーに、改めてプレッシャーとワクワクを感じていた。
そして、ふと思い返す。
起業を決めた時の、愚かで愛おしい日々。
手帳には、まだ残っている。
ギッシリと起業セミナーの予定を入れて、とにかく起業仲間と朝活だのランチ勉強会だのをした痕跡が、去年のカレンダーページを埋めていた。
だんだん、起業が目的になっていっていた。
可愛いリボンで飾られた豪奢なレッスン部屋も、幸せを満喫しているSNS投稿も、本当はお料理に必要ないものなのに。
ただただ、幼い頃に母と肉じゃがを作った思い出だけあれば、それが夢の燃料になった。
ママみたいにニコニコお料理できる人になりたい。それで誰かを幸せにしたい。
私、そういうことが、好きだったんだ。




