菩薩さま
ぼくの顧客は、ほぼ年配の女性だ。
ぼくはおばちゃん受けがいいので、いつも話の途中で向こうから契約してくれた。
「んな、いつもババア頼みだもんな、お前は」
パワハラ高木は、企画書をヒラヒラさせながら言った。
僕は、顧客リストを作る手を止めた。
学生時代のことを思い出す。
ぼくは、いわゆる陰キャに分類された。
だから、友達も陰気なやつだった。
そいつは女叩きが酷く、何かあればすぐ女のせいにした。
特に年配女性には手厳しく、やっぱりババアだ、ババアはダメだとばかり、愉快そうに中傷する。
ぼくは、我慢ならなかった。
その日だって、席を譲ったおばあさんから、ニッコリとありがとうを言われたばかりだった。
ぼくは、そいつに向かって言った。
「お前さ、ババアに産んでもらって、ババアの乳吸って、ババアにケツ拭いてもらって、まだ何か文句あんの?ババアがレジしてるスーパー二度と利用すんなよ」
そいつは、ぼくがそんな風に凄むことにビックリして、それ以来話しかけてこなかった。
ぼくはボッチになったがせいせいした。
その後も、そいつはまだババアを連呼していたし、影響されたやつらもババア、ババアと女を見下すようになった。
ぼくは、そうならなくて良かった。
ぼくにとって女性、特に年配の女性は、いつもこんな僕を救ってくれる菩薩さまだった。
「高木さん、お客様をババア呼ばわりしないでください。ぼくにとっては、菩薩さまなんですから」
変なことを言っている自覚はあった。
だがぼくは、こいつに分からせたいという気持ちを抑えきれなかった。




