美形の訪問
「こんにちは、少しお話するお時間ありますか?いまキャンペーンのプレゼントをお配りしてますので、受け取ってもらうだけでも」
私は、インターフォンの通話終了ボタンに指をかけ、しばし迷っていた。
カメラ画面に映るその営業マンは、月9のドラマに登場するリーマンより輝いて見えた。
は…?美形すぎるんだが?
私は何か試されているんだろうか。
神さま、これはどう対処するのが正確ですか?
私は、根負けして開錠した。
イケメンをむげに帰す勇気が、どうしてももてなかった。
「ちょっとなら…すぐに外出の予定がありますので」
しつこくセールスしてきたら、家を出てやればいい。
「失礼します」
営業マンは、スマートな立ち振る舞いで部屋に入ってきた。
おいおいおい……
玄関までのつもりだったのに、あまりに華麗に侵入されて声をかける暇もなかった。
営業マンは、料理教室で使っている部屋のダイニングテーブルに座らせた。
へえ、とか、素敵なお部屋ですね、とか言いながら席につく。
早速、商談が始まった。
私は少し拍子抜けしながら、そうだな……生徒さん用にウォーターサーバーを置くのも悪くないな…とのせられはじめていた。
「これ、置いていただいたら、お水はぼくが交換しに参ります!」
「え……?」
「うちの会社、人手不足なんで、契約していただいたお客様へは、担当が最後までお世話させていただくことになってるんです。もちろん、解約はいつでも承りますので、気軽にぼくに言ってくださいね!」
ふむ…悪くないかも
ここで気持ちに余裕が生まれたのか、私は改めて目の前の男を見た。
髪はサッパリと切り揃えられ、ツーブロックなのにチャラい感じはしなかった。
眉がまっすぐでツヤがあり、すごく綺麗だ。
そして目が、美人のそれ……
なんていうかな、お母様がめちゃくちゃ美女なんじゃないだろうか。
化粧などで作られる目と違って、目尻にかけてが広い、天然の二重まぶた。
目頭がキュッと深くて、びっしり生えたまつ毛は下を向き、子犬のような愛くるしさだ。
それに輪郭が私より綺麗だ。
笑ったらえくぼができそう。
鼻が細く通っている。
口元が女の子みたいにぽってりしてピンク色だ。
びびびび………美青年………
私は、ハッと我に返った。
「お、親御さんはどこかの国の方ですか??」
「ああ、ハーフかどうかってことですか?そうですね、おじいちゃんが北欧なので、クォーターです」
美青年は、ニカっと笑った。
歯並びのいい白い歯が、ピンク色の唇に映えている。
予想通り、笑うとえくぼができた。
「日本の文化は難しいので、なかなか定職につけなくて……でもこの仕事は楽しいですよ!いい商品売ってくれたって、お客様にいつも感謝されてます!」
私は、気がつくと契約書にサインしていた。




