ビビビバビデ
ぼくは、ダッシュで家へ帰った。
大丈夫…バレてない。バレてない………
鏡を見ると、独身ひとり暮らしの冴えない男がいた。
彼女いない歴10年。
学生の時に文化祭シーズン限定で付き合った経験があるのみだ。
この魔法は誰にも知られちゃいけない。
ぼくだけが見つけた、世界の法則なんだ。
ぼくは、シャワーを浴びる前に布団で先生を思い出しながら悦楽に浸った。
この顔と体型では、どうしても経験できないことだった。
たとえ一度きりの経験だとしても、夢のように尊い一夜だった。
いや、未遂に終わったが。
ぼくは賢者モードになると、やっぱり女はイケメンに限るんだな、とクサクサしていた。
ただ、見た目が良くなった時の周りの反応の違いには、もはや妬みを通り越して畏敬の念すら覚えた。
美しい男は尊敬に値する存在だ。
生まれつきチートしやがって、と思っていたが、今回のことで美形の苦労もわかった。
美しいからこそ、言動に粗が出るとすごく目立つ。
尻もかけないし、食べ方ひとつとっても、音を立てず上品にやらなきゃならない。
常に緊張して過ごしていたからだろうか。
あらゆる体調不良も重なって、倒れてしまった。
ぼくは、救急車を呼ばれて病院にいる間に魔法が切れたら大変だと思い、必死に呼ばないでと訴えた。
先生は、そこを不審に思ってやしないだろうか。
それにぼくはまた、あの教室へ行ってもいいものだろうか………




