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懺悔

クーデターで城が混乱する中、病の床に伏す祖父の寝室に駆け込んだ。リナへ正式に王位が継承されたことへの気の緩みからか、ここ数日で急激に体調を悪化させていた。

『お祖父様も一緒に!』

『この体では無理じゃ。奴らの狙いはお前と石だ。逃げるんじゃ、外へ!』

『・・・外へ?』

直ぐには意味を掴みかねた。一部の兵士とダート侯爵による小規模な反乱だと思っていた。すぐに制圧されまた城へ帰って来られると。

『わしの最大の過ちじゃ。止めてくれ、どうか・・・頼むっ』

祖父が遺した最後の告白。当時研究所の所長をしていた友人が、罪深い行いに手を染めてゆくのを止められなかった懺悔だった。


リナの幼い頃、リヒトの祖父は鉱石を研究する研究所の所長を務めていた。二人にも優しかった。うるさい側近や家庭教師を巻いて研究所に逃げて来た二人を匿ってくれた。リヒトを呼んで一緒におやつをくれた。

最初は寂しさからだったと聞いた。


リヒトの祖父には娘がいた。若くして病で亡くなった。そのお腹には結婚したばかりの夫との間に赤ん坊がいたという。

友人としてときどき研究所を訪れていた。沈んだ様子が気の毒で、どんな言葉をかけていいのかわからなかったという。

ある日、いつものように研究室を訪れると、自分が受け継いだ石とよく似た色合いを持つ小さな結晶たちが、机の上に転がっていた。

『これ、どうするんだ?』

友人はちょっとほほ笑んだだけで何も言わなかった。


しばらくして、友人が赤ん坊を引き取ったと知った。目に入れても痛くないほどに可愛がっていた。知り合いから引き取ったとしか言わなかった。この狭い王国内で、誰の子供なのか一様に知れなかった。おかしな話だった。



祖父の話によれば、気になる点は他にもあった。研究所に登録されている研究員の数が年々増えていた。それ自体はおかしことではない。鉱石をもっと活用しようという機運を受けて貴族からの支援が増えていたので、人員が増えるのは当たり前のことだ。だが、ときどき研究所に顔を出せばこんな奴いたか?と思うような顔ぶれが古参研究員の顔をして在席していた。


またリナ自身が思い当たる点として、祖父は、最近勢力を伸ばし始めていたダート侯爵家にも疑問を持っている様子だった。古い家系の貴族だが、あんな男がいたかな?と。王宮の大図書室で古い本をめくっていたリナは、そこに彼瓜二つのの挿絵が描かれているのを見て驚愕した。長く続いている家系だ。似た特徴が出ることもあるだろう。だが何世代も前の人間に瓜二つということがあり得るのだろうか?その話を祖父にすると、黙って聞いていた。


祖父は、鉱石を不正利用し牛や羊を取引していたことが明るみに出た時点で確信したらしい。何らかの操作が行われている、と。どこから来たのかわからない赤ん坊、増えてゆく研究員、見覚えのない貴族の男。それらの手がかりから薄々はその全貌を推し量りつつも、だがどこまで、どこまで研究が進められているのか、具体的に分からなかった。既に当人が亡くなっていたからだ。

だがリヒトがいた。若くして所長の座に就いたリヒトは前所長である祖父の研究を必ず受け継いでいる。

自分ではどうしても断ち切れなかった断罪を、リナに託して祖父は亡くなった。



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