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真実

事情を聞いてみれば、船内で二人がいなくなったことに気づいたのは割とすぐのことだったらしい。リナを見かけなかったというミレイの報告があり、頭も船長室にいないという。二人同時にいないとなると、キースはすぐに悟った。

・・・戻ったのだ。あの王国に。それしか考えられなかった。

しかも、あまりよくない事情だろうと察っせられた。相談する間さえない出立だったのだ。

すぐさま救助隊が結成された。王国までの道は分かっている。だが出発は数日待たねばならなかった。王国を行き来する定期船は、毎日運航しているわけではないからだ。


救助隊は以前と同じように深い山道を辿って発着場へ着き、船に乗り込んで王国へ向かった。深い霧の谷をゆったりと泳いでいく船は、前よりも遅く感じられた。

ヤキモキしながら谷を抜けるのを待ち、その先にある王国が見えたとき、前と何の変わりもないのどかな様子に焦る気持ちも少し和らいだ。


王城が近づくにつれ状況は一変した。王宮内の塔のひとつから煙が上がっていた。兵士も大勢詰めかけている。あれは、頭が好んで使うお手製の爆薬だと、ガイが指摘した。爆音と煙は派手だが破壊力には欠ける、要は目くらましなのだ。

レオひとりなら目くらましなど使う必要はない。さっさと逃げればいい。あれは、たぶん誰かを守っているのだろうと、皆が思った。

思った途端、皆が舵に取り付いた。だが舵は効かなかった。空回りするばかりで一向に進路を変える気配がなかった。

・・・あそこに、頭とリナがいる! 

白煙が上がるたびに一行の気持ちは焦燥に駆られた。

だが突然、何を思ったのか魚は急に進路を変え塔に突進し始めた。そして最上部の壁に突っ込んだのだ。海賊たちにとってはこれ幸いである。乗降口を開け縄梯子を投げ、お頭とリナを救出することに成功した。

「そうだったのか、助かった。ありがとう」

事情を聞いたリナは弱弱しく微笑んで感謝を告げた。

「でもたまげたぜ。さっきまで全然動かなかった船がいきなり塔に突っ込むんだからな」

「ああ、それは、私が呼んだんだ」

「嬢ちゃんが?」

「万能石に願ったんだ。追手が迫っていたから船着き場に行くよりも近くの塔に呼んだ方がいいと思って。でもどうやって乗り込むかまで考えていなかったから、助かったよ」

・・・だが、その石も今は侯爵の手に。一同に暗い沈黙が訪れた。

「・・・ああ、ありゃ偽モンだ」


”え?”


全員が首がもげそうな勢いで声の主を振り返った。

「ンなこともあろうかと作っておいて正解だったな」

ズボンのポケットをゴソゴソやり、鎖が千切れ周りの飾りだけになった石をリナに手渡す。海賊稼業の頭目なんてものをやっている手腕の一端を見た気がした。

リナは掌で受けると、暫しその石を見つめた。体の中に再び温かな火が灯ったような気がした。離れていたのは少しの間だけだったのに、長い間、側にいなかったような気がする。いつも身に着けていると、そう感じるようになるのだろうか。

レオはさらに驚きの発言を投下した。

「お前さ、ホントはこの石を動かなくさせる言葉とか知ってんじゃないの?」

一同が呆気に取られている中で、リナだけはまん丸に目を見開いていた。

「どうして・・・」

「たいていの物事にはそういう抜け穴みてえな姑息な技があるのが普通よ。」

「・・・知っている。知っているが、決して使ってはならないんだ。使えば、アナトリアが崩壊する。」

「そんなでけえ魔法なのか?」

「違う。違うんだ・・・。」

リナはここで、石の継承者のみに伝えられる真実を遂に言うことになった。

「万能石はこの世でただ一つ、これだけなんだ。」

手の平のそれを見つめる。さすがにレオも驚いた顔をしていた。

「じゃあ他のは全部偽モンだってえのか?だって・・・動いてるだろ?空飛んだりとかよ。」

今、正に乗っている船がそうである。

「あれは、子供石とか孫石とか呼ばれるものでこの石から力を授けて動いているんだ。この石が力を失えば、石を使って動いている全てのものが動きを止める。」

(そおりゃあ・・・アナトリアは崩壊するわなあ)



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