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放課後レンジャー  作者: kyo
第3章 異世界に来てみたら

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第57話 始まりの村⑧奇襲

 荷車にいっぱい野菜を積んで帰った。ダンジョンでドロップしたお肉もね。

 途中で倒した獣の肉も塩漬けにしておいたから、冬の間もなんとか暮らせそうだという。

 っていうか、村に帰ったら、みんなから祈られた。

 なんで祈るの??


 毎晩、村の外に畑荒らしの獣が来ていたようだ。

 だけど、ある位置から近寄ってこれないようだった。

 大人たちは入ってこないとは思っても、安心して眠れなかったみたいで、目の下にはクマを作っていた。

 そいつは毎晩来ていたという。それなら退治しておいた方がいいね。

 健ちゃんがそう切り出して、罠をはることにした。


 いくら退治するといっても、村の中には入らせない方がいい。

 だから、即席でコブのように村にくっつけて領地を広げてみた。

 獣よけの機械をいくつか増やし、村の領域を広くする。夜だけ、コブのようにつけた一部の獣よけを解除する。

 コブ領域の中に畑を見立てて作り、野菜の外側の捨てるところなどを撒いておく。それと落とし穴だ。


 村の子供たちには作った柵の上に紐を張って、揺らすと音がなるような仕掛けを作ってもらった。自衛は覚えてやっていった方がいい。それに怯えていたので、何かに夢中になるのはいいことと思えた。


 サバイバル本とか、野菜の作り方だったり、罠の仕掛け方とか、世の中にはいろんな本が出ていて、その知識を惜しみなく教えてくれている人たちがいた。それが大活躍だ。この世界になさそうなものでも作ることができるような知識の本も買っておいた。

 時々、アプリが使えなくなって、向こうの世界の物が手に入らなくなったらどうしようと思うことがある。こちらの世界も人が暮らしているから、基本困ったことにはならなそうだけど。食べ物が一番打撃を受けると思うんだよね。

 だから、調味料のストックはすごい。飲み物、炭酸とかもだけど。

 あ、こちらで手に入らなそうな炭酸! 調べていたら、松の葉があれば炭酸っぽいものを作れると書かれてあるのを読んで、松の木を見つけたら絶対に作ってみようと思っている。


 早めの夕食を取り仮眠した。

 夜までは村の人たちに見張りに立ってもらっている。念のため。

 ダレン君とアンちゃんが退治を一緒にしたいと言って……ものすごく迷ったけど、バーカードさんたちと相談してそれを許した。参加は不可。離れたところで見るのはオッケー。

 退治するところをみたい人も、村の中で隠れるようにして見るのはいいとした。この位置からは絶対出てきてはダメだとして。いざとなったらプペに退治してもらおうと思っているので許可したんだ。


 夜はさすがに冷える。

 ホッカイロをポケットに忍ばせた。

 なんだか嫌な予感がして、布団叩きを手に取った。


《暗い》

《忍んでるな》

《静かだ》


 握りしめていた布団叩きがふわりと浮き上がったように感じる。

 布団叩きが獲物を感じた。


「来る!」


 小さく告げる。

 大きめな牛のようなフォルムの影。そいつは用心深く、ゆっくりと寄ってきた。

 あれ、ここで耳が痛くなるのに、今はならなかった?と思ったかどうかはわからないが、のそりと柵を倒して一歩を踏み出す。

 大きいからだろう、魔物を倒していたバーカードさんたちも萎縮して見える。


《暗くてよく見えねー》

《照明あてて欲しい》

《なんだ、ありゃでけーな》

《どこ?》

《画面右上》

《あ、本当だ。さらに暗い。なんかいる?》


 ゆっくりと近づいてきて、土の上に捨てておいた、野菜の外側の部分を食み出した。

 あと2歩前に進めば、落とし穴にかかる。

 大きいとは聞いたけど、あそこまでとは思ってなかった。

 残念ながら体が全部落ちる、落とし穴ではない。

 けれど、片足でも突っ込んでくれれば目的は達成。体勢を崩した時がチャンスだ。


 野菜を食みながら前進し。

 ! 気づかれた。落とし穴を回避した。

 上に被せておいた木と布と枯れ葉のところに半足乗せたところで、違和感があったようだ。警戒するように首を振り、方向転換した。


 でも、今だ! わたしは布団叩きで切りつけた。同時に健ちゃんも反対側から蹴り上げていて、獣は体勢を崩す。


《ダブルで攻撃、やるねー》

《すげー、デカイの倒した!》


 その時、あらぬ方から悲鳴が聞こえた。

 村の門の方だ。バーカードさんたちに獣のことは任せ、わたしと健ちゃんは門の方へ走った。

 あのポニーテール!  仲間を増やして、村に襲撃を仕掛けた。最低!

 ポニーテールがわたしたちに気づく。そしてニヤリと笑う。


《お、さっきの悪役顔だ》

《凝ってんなー。さっきやっつけて逃げた悪党が、村を襲撃してきたって図?》

《だろうな。仲間を連れてきたな。数が半端ねー》

《これ、さすがにアリスとクマだけじゃやばくね?》


「お前たち二人は動くな!」


 獣を退治するのをここからなら見ていてもいいとし、人が集まっていたのが裏目に出た。丸腰の村人、お年寄りや子供たちはナイフを突きつけられて、怯えまくりだ。

 わたしは健ちゃんにアイコンタクトを取る。

 地面を少し見て、プペにやってもらう?と。

 健ちゃんは微かに首を横に振る。

 なんで?


「武器をおけ」


 睨み付けると、もっと大きな声で凄んだ。


 耳がジンジンするし、子供たちが目に涙を浮かべている。


「優梨、武器をおけ」


 わたしは健ちゃんをならって、地面に布団叩きを置いた。

 ポニーテールは健ちゃんの短剣を蹴ってから、健ちゃんを殴った。

 避けられただろうに、避けなかった。

 男は調子に乗って健ちゃんを殴り続ける。


《おい、クマ。のしちゃえ!》

《なんでやり返さないんだ?》

《敵が多いから?》

《人質いるから?》

《それでもプペもいるしアリスたちの方が強いだろ?》


「優梨、動くな!」


 男がこちらに意識を向けていなかったので、健ちゃんを助けようとしたのに、止められる。健ちゃんが言うから注意を引いちゃったじゃないか。


「嬢ちゃん、心配か? 簡単には死なせねーから安心しろ。さっきの礼をたっぷりしてからにしないとな」


 ポニーテールは、こちらが恥ずかしくなる悪役の中の悪役のようなゲスなことを言って、ニヤリと笑った。

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