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放課後レンジャー  作者: kyo
第1章 だってそこにダンジョンがあったから

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18/65

第18話 撮影

 あ、スライムだ。

 わたしも小石を投げた。

 スライムは外側の袋が破れたようになり、液体を流し、そして水色の魔石を残す。



《愉快犯か? CGで合成とか?》

《スタンプ以外、映像は本物っぽいけど。後で録画したの検証してみる》

《結果、教えてもらえますか?》

《俺も》

《ラジャー》



「そろそろ撮影してみるか」

「そうだね」

 ついてきているドローンさんを見上げる。



《お、これで気づくな》

《話し聞かせてもらおう》

《だな》



「ドローンさん、撮影を開始してください」



《え?》

《話しかけてるよ》

《いや、操作だろ、操作》

《インカムもしてないで、なんで話して通じると思ってんだ?》



「あれ、健ちゃん動いてるけど、反応なし」


「変だな。なんか合図とかないのかよ。撮影始めると、ボタン枠部分が青く光るとかさ」


『撮影するとボタン枠が青く光る、仕様に変換します』


「健ちゃん、赤が青くなった! 撮影始まったみたい」


「さっきみたいにしゃべらねーな」


「そうだね」


「よし。健ちゃん、練習しよう、練習! こんにちは、優梨です。これから、新人レンジャーのわたしが、ダンジョンの探索をして、それを配信していきたいと思います。どうぞよろしくお願いします」




《よろしくー。もう見てるよ、アリス》

《……反応がない。ただのしかばねのようだ》

《笑えねぇ》

《すみませんでしたっ》




 わたしは健ちゃんを肘でつく。


「健太です。よろしくお願いします」


 健ちゃんがドローンさんに向かってペコリとする。




《クマタっていうんだね》

《……反応がない》




「で、どうしよっか」


「魔物倒すとこ撮るんだろ?」


「あ、そっか。じゃあ、進んでみましょう」





「いました! ドローンさん寄ってください。あの辺に岩に擬態しているスライムもどきがいます。それを、健ちゃん、小石ちょうだい」


「ほらよ」


「ありがと。この小石を投げて……」


 半透明のスライムもどきに小石を投げると命中。膜が破れたようになって、中の液体が広がっていく。


「命中させて、魔石が残りました。小さいけど、きれいです」


 わたしはドローンさんに魔石を見せつけるようにする。


「なー、これ、どこも面白くなくない?」


「えー、それ言っちゃう? ……勉強しないとだね。配信って、ただ映像撮って編集すれば形になるのかと思ってた。けど、全然違った。何すればいいのかわからない!」




《いや、十分、面白いよ》

《マジで声でもメッセージでも届いてないみたいだな》

《っていうか、このダンジョン知りたい》

《うん、半透明のスライムも、小石でスライム倒せちゃうのも、スライムごときの魔石が高エネルギー体のわけも知りたい》

《インカムしてないのに、ドローンと通じてるのがわからん》

《もうひとりいるんじゃね?》

《それか! そうだよ、誰かが内緒で撮ってるんだろ》

《ライブ配信を?》




「とりあえず、撮れてるか見てみようか」


「さすがに、早くね? スライムもどき1匹じゃん、って、優梨!」


 健ちゃんに手を引っ張られる。


「一角ウサギだ」


 え?

 中型犬くらいの大きさで、確かに耳が長くてその耳の間にツノはあるけれど、ウサギってよりもっと筋骨たくましいんですけど。


「なんで、この道で出んだよ」


 っていうか、一度しか来てないもんね。それでスライムもどきしかいないと思ってしまった、わたしたちがどうかしていたんだ。




《これが一角ウサギ? なんでこんな育ってんだよ?》

《こいつら、武器、小石だけだぞ》

《逃げろ!》

《無理だ》




 健ちゃんが向かってきた一角ウサギを蹴り上げた。

 ウサギはキラキラと光を振りまいて消え、地面に何かを落とした。




《クマちゃん何者? キックボクサーかよ?》

《一角ウサギ変異種を一発で仕留めたぞ》




「あ、ドロップ」




《なにぃーー?》

《一角ウサギがドロップ? 変異種はドロップするってこと?》

《そんなの聞いたことないけど》

《入ります。ん? コメントナシ? 発言ナシのチャンネル?》

《いや、配信に気づいてないか、第三者による盗撮配信っぽい》

《え? じゃあ通報した方がいいんじゃないっすか?》

《決定的ではないんだよ。配信する気はあるみたいだし。でも、それより、ダンジョンと配信者が凄すぎで》




「健ちゃん、ツノみたいのがドロップしたよ」


「一角ウサギで、ドロップ、ツノってありきたりだな」



《そりゃ、小説の中だけだ。一角系の魔物のツノは、強いのを一撃で倒した時しかドロップしないから、高いぞ》

《嘘でしょ、一角ウサギが落としたんですか? え、あれ、魔石?》

《それだけじゃないよ、よく見て》




 おお、掌サイズの魔石だ。


「これも売れるかな?」


「一角ウサギが出るところに、潜れるようになってからだな」


「あ、また助けてもらっちゃった、健ちゃん、ありがと」


「ここでも、武器は持ってこないとだな」


「だね」




《え、インカムつけてない?》

《な、謎だらけだろ?》




「戻って、撮れてるか、見てみよっか」


「そうだな」


「ドローンさん、終了です。降りてきて」


『撮影、配信を終了します。課題、おしゃべり。RJK23-478の言語に統一。言語理解、進捗27%』


 ドローンはゆっくりと健ちゃんの手の中に降りてきた。


「とりあえず、安全なとこに出るか」


「そうだね」


 道を引き返し、ロープを使って地上に出る。

 板で穴を塞いだ。


「あ」


「なんだよ?」


「おかき、落としてきちゃった」


「……戻るか?」


 ロープも解いてしまっちゃったし。


「残りちょっとだったし。次回入った時に、回収しよう」


「もったいねーな」


「もう一袋残ってるし。部屋で撮影したの見ながら食べよう」


「そうするか」


 健ちゃんが伸びをした。

 わたしも大きく伸びをする。

 ダンジョンの中は、天井が低いわけでもないのに、何かが窮屈な気がする。




 また麦茶とおかきを食べながら、電源の落ちたドローンのボタンを長押しする。

 枠が赤く光っているのに、ドローンさんはうんともすんとも言わなかった。

 こ、壊れた?

 でも光ってるんだから……。


「ドローンさん、撮影したのを映してください」


 ふよんとドローンが浮かびあがる。

 カチカチカチカチと独特な音を鳴らして、壁に映像を映し出した。






「アリス!」


 健ちゃんの声がして、わたし?と健ちゃん?を映し出した。


「なに、どうしたの?」


 壁に映し出されたわたしっぽい子は、健ちゃんっぽい子に駆け寄った。


「わかんね。急に動き始めた」


 ダンジョンの中だね、覚えのある会話だけど……。

 健ちゃんだけど、健ちゃんじゃない。顔が絶対的に違う。わたしもだ。

 でも、顔をすげ替えている違和感はなかった。

 ただわたしたちは自分たちだと知っているから、微妙な気持ちになる。


「えー、ダンジョンでテンションあがったのかな?」


「機械がか?」


 黙々と二人で歩いている。広い空間に着くと、健ちゃんがわたしを振り返った。


「最初はやっぱ、抱負からか?」


「抱負?」


「ほら、ダンジョンに潜る目的とか」


 映し出されたわたしが悩んでいる。


「どうした、アリス?」


 アリスって配信中のわたしの名前みたい。身バレしないように変換されるって説明あったけど、わたしは〝アリス〟なようだ。

 健ちゃんは何なんだろう?


「なんかさー、もそもそとは違う何かが聞こえるんだけど」


 ふたりとも耳を何度も触っている。


「アリスもか、俺も」


「クマちゃんも?」


 クマちゃん! わたしは爆笑した。

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