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放課後レンジャー  作者: kyo
第1章 だってそこにダンジョンがあったから

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第16話 ドローンさん(前編)

「ねー、健ちゃん、早速使ってみようよ」


 家に着き、バイセーから降りて、わたしはすぐに誘ってみた。

 あ、でも学校からお姉ちゃんの大学、そして秋葉原への往復とわたしを乗せて移動してもらったんだっけ。わたしは後ろに乗せてもらっていただけだけど。


「あ、ごめん、疲れてるよね。今日も、本当にありがとう! また明日……」


「……着替えてから来る」


「……いいの?」


「どんなもんだか、興味はあるしな」


「じゃあ、おかき、揚げるから、ゆっくり目に来て」


 健ちゃんがニッと笑った。

 お餅で作る簡単おかき、健ちゃんの大好物なのだ。変わってないみたいなのでほっとする。




 家に入ってすぐに着替えた。

 そしておかきを作る。お餅を細かく切って揚げるだけだ。

 油を切って、ペーパーの上に乗せ塩を振る。胡椒を振るのと、だし醤油の3種類を作る。

 熱いけど、ジップロックに入れちゃう。おやつ、おやつ。

 今日〝おもちゃ〟を手に入れてしまった。

 できたら試し撮りまでしてみたい。

 わたしはその気持ちに突き動かされていた。




 ピンポーン。健ちゃんだ。

 急いで出ると、長Tにジーンズ姿の健ちゃんが「ちぃっす」と挨拶した。


「お前、鍵してなかったな? 鍵かける習慣つけろよ」


「あ、そうだった」


 居間へと健ちゃんを促す。

 健ちゃんはテーブルの上に出しておいたドローンを手に取っている。


「麦茶とコーヒーとオレンジとコーラ。何がいい?」


 備蓄スペースに、いくつかペットボトルを発見した。お姉ちゃんの好きな炭酸水はめちゃくちゃいっぱいあるけど、帰って来たときに必要だろうから、手を出さないようにしておく。


「冷たい麦茶」


「了解」


「ジップロック?」


 なんでおかきを入れてんだという顔をしている。


「おやつに持ち運べるのがいいかなと思って」


「持ち運ぶ? ……試し撮りまでする気か?」


「健ちゃんも見てみたいでしょ?」


 健ちゃんはノーコメントだ。




 冷水ポットに作り置きしておいた冷たい麦茶をコップに注ぎふたつ用意して、テーブルに運ぶ。お皿にキッチンペーパーを敷いて、ジップロックからおかきを出す。

「今日も、ありがとうございました」


 お皿を健ちゃんの前へと押し出した。


「サンキュー。いただきます。お、3種類ある」


「健ちゃん、どれも好きでしょ」


 ポリポリ小気味のいい音がする。

 わたしも手を伸ばして塩味のを食べた。

 まだあったかくて、ふふ、おいしい。


「で、新しくアプリ入れんのか? それとも中に入っているのでやってみるのか?」


「アプリ買うとなると携帯と連動させるんだよね? お父さんにバレると面倒だから、まずは中に入っているアプリの方でやってみようかと思ったんだ」


「これ、取説は?」


「入ってなかったよ」


「古いもので取説もなし、か。だから返品は受け付けないとか言ったんだな」


 健ちゃんが悔しがる。


「電源はこれだな。あれ、入んないぞ?」


「うっそぉ」


 わたしも隣に行って、電源と思われるカメラの横にあったボタンを押してみる。


「長押しとか?」


 健ちゃんが再びわたしからドローンを奪い、ボタンを長押しした。

 ボタンの枠が赤く光る。


「「おおーーー」」


 電源が入った。


【私はドローン1789538です。マスターにご挨拶申し上げます】


「「しゃべった!」」


【まず、マスターのお名前を教えてください】


 健ちゃんと顔を見合わせる。


「健太と優梨です」


【健太と優梨さまですね】


「様はいらないです」


【健太と優梨、ですね】


「ええと、健太です」


「優梨です」


 タ・タ・タ・ラ・タ 電子音?


【マスターは、健太、と、優梨、おふたりということでしょうか?】


「そう、そうです!」


 勢いこんで言った。


【認識しました】


 AI機能ってやつかな? 賢すぎる。10年前でもうこんなに賢かったんだね。


【次に、私を使う目的を教えてください】


 また健ちゃんと顔を合わせる。


「目的って、……ゆくゆくはダンジョンのレンジャー配信をしてみたいんですけど、今日は試しっていうか、どういうものなのか様子をみたいというか」


【ダンジョンのレンジャー配信の様子見、ですね?】


「あ、はい」


【私を政治的活動や犯罪目的で使用することは禁じられています】


「「………………………………」」


【ご理解いただけましたでしょうか?】


「「理解しました」」


 速攻で答える。そんなこと考えたことないと言いたくなったけど、とにかく何も余計なことを言わないのが一番スムーズな気がした。


【では、次に私をバージョンアップされますか?】


「バージョンアップとは?」


【私はos3.57で起動しています。ダウンロードをして、バージョンアップすることも可能です】


「バージョンアップは今しかできませんか?」


 タ・タ・タ・ラ・タ 迷うと出る音?


【〝今〟ではなく、思い立った時、いつでもご用命ください。では、今はos3.57で進めてよろしいですか?】


「「はい」」


【では次に、撮影の基本事項をパックにするか、ひとつずつ選んでいくかを決めてください】


「パックでいいよね?」


「いいんじゃねーか? 試しだし」


「パックでお願いします」


【どのパックにするか、アルファベットでお選びください。取扱説明書の15ページをご覧ください】


 わたしたちはハッと顔を見合わせる。

 やっぱり、説明書あるはずなんじゃん。

 健ちゃんが携帯を出して、片手で何か打ち込んでる。


「あ、この型番の説明書だけ出てこねー」


 あ、検索して説明書が見られないか調べたのか。


「どんなパックがあり、その中身を説明してもらうことってできますか?」


 タ・タ・タ・ラ・タ


【はい、可能です。パックには初心者向け、中級者向け、ベテラン向けにレベルが分かれ、いくつかずつあります】


「初心者向けで」


「おい」


「だって、わたしたち初心者だもん。他の聞いたってわからないよ」


 健ちゃんも、それはそうかと思ったみたいだ。


「初心者向けで」


 と言った。

 タ・タ・タ・ラ・タ


【初心者向けパック、承りました。初心者向けには、絶対身バレしたくないパック、キャラで勝負するんだもんパック、全てを見やがれパックがございます】


 作る人、捨て鉢になってない?


「身バレしたくないっていうと、どういうふうになるんですか?」


「絶対身バレしたくないパックですと、顔にモザイクをかけたり、スタンプを置いたりして顔を晒すのを防ぎます。名前は決められたものに変換されます。その他、身元を特定されそうなものは、徹底的に変換します」


 それは凄い。


「絶対身バレしたくないパックじゃない?」


「決めるのはやっ。他の聞かなくていいのかよ?」


「だって、どうせよくわからないし、お試しだもん」


 わたしは声をひそめて言った。

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