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放課後レンジャー  作者: kyo
第1章 だってそこにダンジョンがあったから

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第15話 古いドローン

 彼はヒカルチャンネルのヒカル君と言った。

 わたしたちもレンジャー名の優梨と健太だと挨拶をした。名前そのままなんだけど。


「配信って誰でもできるの?」


 じゃあ遠慮なくと尋ねると、ヒカル君の顔が引きつった。


「そっから?」


 ヒカル君は驚いている。


「ああ、ごめん、俺がなんでも聞いてって言っておいてそれはないよね。わりと基本的なことだったから、驚いちゃって」


「ご、ごめんね、何も知らなくて」


 わたしは謝った。


「いや。ええと、器具さえあって、チャンネル登録すれば誰でもできるよ。メーアドは持ってないとかな。でも持ってなくても、それは作ればいいだけだし。録画するドローンと同期するアプリを買えば誰でもできるよ」


「器具ってドローンのことなのか?」


「うん。配信用のドローンはちょっと高いけど、いいものを買った方がいい。ダンジョンの中飛び回るのは過酷だから。

 アプリはピンからキリまでで、自分で設定して行くのが嫌じゃなければ最低限のものが付いているパックのを買えばいい。その方が安いしね。なんとかなると思う」


「優梨、お前、レンジャー配信するつもりなのか?」


「ん? それもいいかなって思う。だって見てもらえると、お金が入るんでしょ?」


 それは聞いたことがある。


「あ。いっぱいの人に見てもらえたら、だよ。お金が入るくらいたくさんの人に見てもらうのは、大変なことなんだぞ」


「そうなんだ……」


 やっぱりそう甘いものではないか。


「……優梨、理解してないだろ?」


 ヒカル君にチラリと見られる。


「そういうのって、やっていくうちにわかったりするかなって」


 えへへと笑って見せると、ヒカル君は真面目な顔になった。


「最初から理解してる方が、いいに決まってるだろ?」


 ……それからヒカル君による、配信のガチな講座が始まってしまった。

 わたしも健ちゃんも遠い目になっていたが、お構いなしに講釈は続き、そのおかげで配信について多少詳しくなった。

 すごい教えてもらっちゃったんで、飲み物でも奢ろうかと思ったんだけど、それは配信で儲けた時でいいと男前のことを言って帰っていった。こちらの装備が整ったら、一緒にダンジョンに入ろうとも誘われ、楽しみが増えた。




 わたしたちはヒカル君の教えてくれた、初心者にも優しいお店に行くことにした。横丁から一本裏に入った道ぞいにあるそうだ。

 良心的な値段なのに、質の良いものを取り揃えているという。

 オーナーは引退したレンジャーで、初期のレンジャーたちが使っていたものとかも置いているんだって。


 健ちゃんがお店をみつけた。わたしだけだったら、たどり着けなかったかも。

 安い! さっきのお店で見たハンマーと同じようなものに見えるのに、こちらは13000円だ。健ちゃんは指先が空いているタイプのグローブを買うことにしたみたいだ。わたしたち百均の軍手だったからね。


 目移りする! 武器や防具ももちろんなんだけど、ライトだったり、テントだったり、1、2階じゃ絶対必要ではないものが、やたらめったらカッコよく見えて欲しくなってしまって困った。

 そしてはたと目を留める。


「健ちゃん、ドローンだ!」


「ほんとだ。近くで見ると、結構でかいな」


「ハハハ、最新のものは小さいぞ。これは10年は前のものだからな」


 お店の人が後ろに立っていてびっくりした。

 全然気配なかったよ。

 10年前か、動くのかな? 少しだけ失礼なことを思いながらよく見る。

 新品同様に見えるけど。


「今作られているのは軽量化もされているが、技術的にはもうそう変わっていない。前のものの方が強度はあるかもしれねーぐらいだ。コンパクトじゃねーけどな」


 配信ドローンだったら、撮影のためずっと動き回ることが重要で、コンパクトでなくてもあまり関係ないのでは? あ、狭いところに入れないってことか。

 でも、ゴルフボールほど小さくはないけど、両手で持てるぐらいの大きさだ。


「ひとつ難点はな、最新アプリに対応しとらんってことだ」


「それじゃあ、使えないってことですか?」


「元々こいつはソフト……アプリが入っているから、こいつだけ、単体で動かせるんだが……。ひとつ前のバージョンまでなら、今時のアプリを入れることもできるし、使える。os15.8までだな、16になると動作確認できとらん」


 ヒカル君が最新は確か16.8と言ってたね。ひとつ前までのアプリで使えるなら十分なような。10年前のものがそこまでついていけることの方がすごい気がする。っていうか、元々アプリ込みって便利。


「os16からは簡易なものだが、ドローンだけで動画編集することもできるらしい。普通の配信者は専用の動画編集ソフトを買って、パソコンでやるそうだ。それを面倒に思う人に向けて、最低限の配信動画になる編集ができるよう機能をつけたらしい。映像をぶった切って繋げる、モザイクをかけるなんてことができるそうだ。

 昔はなんでもパックになっていたから、これはアプリを買わなくても元々ドローンに仕込まれている。もちろんアプリを入れることもできるけどな。でも初心者には、こういった揃っててこれだけで一通りのことはできるパックの方がわかりやすいんじゃないかな」


 へーーーー。

 ヒカル君の講座を受けておいてよかった。じゃなかったらちんぷんかんぷんだったよ。


「配信ドローンは中古でも15万からだな。これは古いけど、初心者にうってつけのものだぞ。そうだな、武器や他の物を買うなら、これは1万にしてやっても良い。その代わり、返品は受けつけねーけどな」


 カッカッカと景気よく笑った。


 結局わたしたちは、それらを買ってしまった。

 よく吟味した結果だ。

 健ちゃんが見ていたグローブを2人分。わたしも欲しくなってしまったのだ。

 ハンマーを持たせてもらったら、良さげな感じだったので、武器としてハンマーも。それから初心者用パックとして売られていたディーバッグ。その中にダンジョンに入る時に便利なものが詰め込まれたディーバッグだった。それと、ドローン。

 おじさんは、靴は靴屋で丈夫ないいものを選ぶように助言をくれた。

 わたしたちはお礼を言って、外に出た。


 駐輪場でヘルメットを被り、バイセーに乗せてもらう。


「いい買い物ができたね、ヒカル君に感謝だ!」


「金、使いすぎたんじゃねーか?」


「ハハハ、そうだね。明日の秋葉原ダンジョンでいっぱい稼がなきゃ」


「おい、優梨」


「ん?」


「お前、二人乗りしてて、後ろで寝るなよ?」


「え」


 なんでわかったんだろう。

 健ちゃんはバイセーを止めた。


「手が緩んだぞ」


 お腹に回したわたしの手をギュッと引っ張って、しっかり捕まってろと言った。

 思い切り健ちゃんの背中に張り付いてしまい、恥ずかしくなったが「うん」とだけ答えた。


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