第二十話 「巡り逢わせ」
「んじゃ、チーム分けを発表するぞ。Aチーム――国枝大樹、黒霧智也、七霧零」
チーム戦を行うにあたっての、組分けが先生から発表される。
思えば入学式の日に自己紹介が行われなかったために、智也はクラスメイトの名前のほとんどが初耳である。故に、名前と一致しない生徒の顔を見比べながら、難しい顔をしていた。
「とりあえず適当にチームで固まって座ってくれ」
その指示を受けて、人波が揺れ動く。
たしか自分は「国枝」と「七霧」とやらと同じチームだったな。と考えながら件の二人を探したが、如何せん見分けがつかない。
そうして思い悩んでいると、後ろから声がかかった。
「黒霧さんっスか?」
振り向いた先、目線より低い位置に頭があった。
あえてアシンメトリーに揃えられたその長髪は、智也と同じ黒色で、幼さを感じる童顔が相まってカッコイイよりカワイイ印象を受ける。あどけない笑顔と溌剌とした声も、それを助長させる一因だ。
そんな無邪気に笑う姿を見ていると、まるで自分が老けたようだと錯覚しそうになる。ともあれ、彼がメンバーの内の一人で相違ないだろう。
そう確信を得る智也と異なって、彼は困ったように頬を掻きながら一つ尋ねてきた。
「すんません、自分のチームって誰だか分かるっスか?」
「……ちなみに名前は?」
その質問を聞いて、智也は自分の解釈が誤っていたと悟った。どうやら彼も同じ状況らしい。
だがもしかしたら、智也の知っている生徒と同じチームの可能性はある。指折り数えられる程度でしかないが、文殊の知恵になるかもしれない。
「あ、申し遅れたっス。自分、七霧零って言います」
――コイツは、何を言っているのだろうか。
率直に、智也はそう思った。
呟きを口の中に留めて、額に手を当てながら情報を整理する。
七霧と言えば、同じAチームのメンバーだ。記憶に間違いはない。
その特徴的な喋り方も、これまで授業中に何度か聞いた覚えがある。その声と、眼前で首を捻っている者の声は完全に一致している。
「お前……Aチームのメンバーだろ? 他の二人の名前は?」
「それが、難しい話ばっかでよく分かんなかったっス」
「そういえば、さっき頭抱えて混乱してたな……。ちなみになんで俺の名前を?」
愚問だったと、智也はすぐに後悔した。
大方、魔力量の低さで悪目立ちしているのだから。
しかし七霧は苦い顔をする智也を見ると、きょとんとした表情を浮かべ、
「だって名前に同じ霧の字がついてるし、髪も同じ黒だから親近感が湧いてたっス!」
「それだけ?」
「それだけっスよ?」
今度は、呆気にとられた智也の黒瞳が点になるのを七霧が不思議そうに見つめてくる。
どうやら、智也の勝手な被害妄想だったらしい。彼の純真無垢な心には、少し救われた気がした。
「黒霧くんと七霧くん、かな? おれは国枝大樹」
と、片手を上げながら歩み寄ってきた黒髪の生徒が、そのまま右手を差し出してくる。
少々戸惑いながら智也も手を伸ばすと、握手を交わし、国枝は歯を見せて笑った。
その距離感の近さに気圧されつつも、一先ずはこれでメンバーが揃ったことになる。周りを見ると、他のチームも同じように集まったようだった。
「今から少し準備時間を設ける。その間にチーム内で作戦を立てたり、雑談したりして語り合ってくれ。いいか、これはコミュニケーションを深めるのが目的でもある。めんどくせーとか思わずちゃんとやれよー」
今まさにそう思っていた智也は苦虫を噛み潰したような顔になる。
先生の方をちらと見ると、一瞬目が合った気がしたが気のせいだと思い込んで、すぐに視線を逸らした。
「あぁ、ちなみに対戦方法だが月末と同じトーナメント形式でいくぞ」
「トーナメントって言っても、五チームしかないっスよね」
「でも、クラス対抗戦は四クラスだからもっと少なくならない?」
「じゃあ優勝も夢じゃないっスね!」
積極的に言葉を交わす二人についていけず、智也は少しばかり疎外感を抱いていた。
ここにきても、やはり硬く閉ざされた心の壁が障害となっているのだ。
「組み合わせはAチームとCチーム、BチームとDチームでいく。余ったEチームは一回戦免除とし、後者の勝った方と戦ってもらう」
「BとDだけは優勝するのに三回、それ以外は二回で済むってことか」
魔力量の少ない智也からすると、試合数が少ないのは僥倖に恵まれたといっていい。
おまけに件の二チームには、それぞれ実力のある久世や藤間が割り当てられている。或いはもしかすると、それも全て先生の計らいなのではないかと思ったが、眠そうに欠伸する姿を目にして、考え過ぎだと判断した。
「んじゃ、ぼちぼち作戦会議を始めてくれ」
頭をガシガシ搔きながら発せられた緩い掛け声で、各チームの打ち合わせが始まった。
✱✱✱✱✱✱✱
「閃いたっス!」
座談のさなか、突然七霧が声を上げた。
何事かと思い二人が顔を向けると、彼は嬉々とした表情で話し出す。
「自分ら三人とも黒髪っスから、チーム漆黒にしましょう。どうっスかこのチーム名!」
「え、どういうこと? ていうかチーム名って決めるの?」
彼が興奮している要因がいまいち理解できなかったのは国枝も同じようで、頭にはてなマークを浮かべながら智也を見つめてくる。
「いや……俺に聞かれても。ってか、どこかの誰かさんが付けそうなネーミングだな……」
食堂で邂逅した変人の姿を思い出し、思わず苦笑を浮かべる。申し訳ないが智也としては、そのチーム名は却下である。
「それで、作戦会議しろってことだけど……どうする?」
「どうするっス?」
「……え、俺?」
国枝が七霧へ、七霧が智也へと視線を向けて、智也は背後を見たが誰もいない。
自分を指差す智也に二人が揃って首肯して、再び苦笑が漏れた。
「先に、このチーム戦においての二人の気持ちを聞いておきたいんだけどさ」
「うん」
「その……二人は勝ちに拘るタイプなのか?」
そもそもの取り組む姿勢が違った場合、チームとして機能させるのは難しい。一人だけやる気に満ちていても上手く纏まらないからだ。
ましてや、今日初めて言葉を交わした二人は初対面同然。相手のことなんて何一つ分からない。そんな距離感で、うまく連携できるとは智也には思えなかった。
「そりゃやるからには勝ちたいっスよ! ね?」
「正直あんまり自信はないけど、初めて組んだチームだし、二人の足を引っ張らないように頑張りたいとは思ってるよ」
満面の笑みを浮かべた七霧と、握り拳を作って気合いを入れる国枝。
どうやら、全員の志は同じようだ。
「もちろん俺も勝ちたい。勝負事で負けるのは一番嫌いなんだ。でも、その為には二人の力が必要になる」
智也の真剣な眼差しに、二人が首を縦に振って相槌する。
その気はなかったのに、いつの間にか智也はチームの中心となって作戦を立てていた。
「――まず、戦いにおいて最も重要なのは情報だ。相手の情報があるのとないのとでは大きな違いが生まれる。二人はCチームについて何か知ってることはあるか?」
「ん~他の人のことはよく分かんないっス」
「あ、そういえば。魔力測定のときに水世さんと同じ班だったんだけど、確か彼女の魔力量はB判定だったよ。あの久世くんには劣るだろうけど、手強そうだよね」
こんなのでいいのかな。と自信無さげに語る国枝だが、それは十二分に有益な情報だった。
「それが分かっただけでもすげー有難いよ。ちなみに二人の魔力量は?」
「自分はCっス!」
「おれはDだよ」
Zランクの智也からすればCランクでも十分凄いが、相手はそれの更に上をいく。根競べをしたら、確実にこちらが負けるだろう。
だが勝負はそれだけでは決まらない。幸い智也は、国枝がくれた情報のおかげで一つ考察を立てることができた。
「勝敗の決め方は覚えてるか?」
「相手のリーダーを倒せば勝ちってやつかな?」
何のことか分かっていない七霧は一先ず置いて、智也は国枝に相槌を打つ。
「この手のゲームじゃ一番強いものをリーダーにするパターンが多い。今回は国枝の情報でいくと、Bチームで一番魔力量の多い水世? がそれに当たるだろう」
「確かに彼女のランクは一番高いけど、でも神童くんも一応Cランクだったよね? 彼の可能性はないのかな?」
「あいつにリーダーを任せられると思うか?」
その問いに二人は口を噤んだ。つまりは、そういうことである。
「つまり水世さんがリーダーってことっスか?」
「確定ではないけどその可能性が高いだろうな。万が一違ったとしても、チームの一番手を落とせば勝機は格段と上がる。それに少ない戦力で勝つためには、リーダーを絞れず三人相手にするより、一人を集中して狙うべきだと思う」
「なるほど……黒霧さん賢いっスね!」
関心したように手を叩く七霧。まさかここまで褒められるとは思っていなかったので、智也は少々気恥ずかしくなった。
「でも、それは彼女に勝てればの話だよね? その策は何かあるの?」
そう。問題は水世からどうやって有効打を取るかにある。そう言って、智也は五指で床に触れた。
「そこで重要なポイントが、相手の適性だ。第五属性の優劣がはっきりしている以上、相手が使うであろう魔法が分かれば優位に立ち回れる」
まぁそれは、有利属性をこちらが扱えればの話になるのだが。と付け加えて、素知らぬ顔で話を続ける。
「風の噂で、紫月の適性が水属性だと聞いたことがある。あと、それ以外はあまり使えないらしい。――神童に関しては、アレが本気なのかどうか俺にも分からないけど、多分気にしなくて大丈夫だろう」
水世の適性も分かれば、かなり優位に試合を運べるのだが……と期待を込めた眼差しで国枝を見やるが、彼は申し訳なさそうにかぶりを振った。
七霧の方も、同様に困り顔を浮かべている。
「自分のことで手一杯だったから、水世さんの適性まではちょっと分からないかな……あ、でも授業とかで見る限り、水属性は得意そうだったよ!」
「なるほど、水属性か。そういや二人の適性は?」
「おれは土属性……水とはちょっと相性が悪いね」
水属性に対して有利なのは風と電属性で、不利なのが火と土属性だ。
智也の中で一番まともに扱えそうなのも火属性なので、チーム相性的には最悪となる。
「七霧は?」
何故か黙り込んでいる七霧の顔を覗き込むと、何かを考えるように難しい顔をしていた。
「自分電属性なんスけど、相性悪いっスよね?」
「さっきの説明聞いてなかったのか?」
「聞いてたっスよ。風は電に強くて、電は火に強いんスよね?」
「七霧くん、それ全部逆だよ……」
属性の相性についての補足を、先生はチーム戦の前に説明してくれていた。どうやら七霧はそれを間違って覚えているらしい。
一先ずそれはあとで説明し直すとして、まさか希少な電属性への適性持ちだと思わなかった智也。
「でも、これで勝機は見えたよね?」
同意を求める国枝に首肯し、智也は頭の中で戦略を練り上げる。
チームの要となるのは間違いなく七霧だ。しかし土属性との相性が悪い電属性の魔法は、岩壁によって簡単に防がれてしまうだろう。
いくら魔力量があるとはいえ、むやみやたらに撃っていても壁は通らない。それを、どうやって決めるかが肝になってくる。
「少し考えがあるんだけど、聞いてくれるか?」
「勿論っスよ!」
「おれも黒霧くんの指示に従うよ!」
そうして、二人から向けられる熱い眼差しに心地よさを覚えながら、智也は丁寧に話を進めていった。
✱✱✱✱✱✱✱
「よーし、そろそろ始めんぞー」
「――作戦は以上だ。やれるとこまで頑張ってみよう」
その掛け声を聞いて、各チームが作戦会議を終える。
「何かの縁だから」
「目指すは優勝っスね!」
先生の元へ集まろうとしたところで、国枝が歯を見せて笑いながら拳を突き出してきた。
少々照れ臭かったが、七霧に続いて智也もそこに拳を合わせる。
それから二人は笑みを交わすと、その眩い笑顔を智也に向けてきて、思わず硬く結ばれていたその口元が、僅かに緩んだのを実感した。
裏表のない真っ直ぐな二人なら、少しは心を開いてもいいのかもしれない――なんて、前を走る二人の背に、智也はそう思った。
「一試合目はAチーム対Cチームだ。それ以外は端に寄って観戦しておけ」
とのことで、観戦者の九人が移動したのを確認して、智也たちは体育館の中央へと並べさせられた。
「まさか智也くんと戦うことになるなんてね。お互い頑張ろな~」
向かい側に並ぶ相手チームの一人――紫月から声をかけられるが、智也は相変わらずの無愛想。
ついでに神童も何か言っていたような気がしたが、おそらくそんな気がしただけだと処理した。
「おい、せめて聞けよ!」
「んじゃ、第一回戦――始め!」
初めての試合に初めてのチーム戦、選抜入りや魔法の消滅など、色んな思いや不安を抱きながら、智也の初陣の幕が上がった。
「「Reve11【火弾】」」
試合開始の合図を受けてすぐ、三人は同時詠唱を行う。先生がやって見せたものをそれぞれで分担した形だ。
狙うは水世ただ一人。呼吸を合わせて放った三つの火球が、一直線に飛んでいく。
それを防ぐようにして、紫月と神童が両脇から前に出た。
「「Reve12【水風船】」」
火には水を、水には電を、か。
智也たちの火球を掻き消すように、二人が水泡を飛ばす。
しかし、神童のそれは見る見るうちに膨らんでいき、体が見えなくなるまでの大きさに達した瞬間――まるで風船が割れるかのような音と共に破裂。後には倒れた神童の姿だけが残った。
「勝手に自滅したっスよ、あの人」
「やっぱあいつに関しては警戒する必要なかったな……」
この場合、神童は脱落扱いになるのだろうか。先生が動かないところおそらくセーフなのだろうが、ほぼ無力化できたと考えていいだろう。
その間、紫月が張り巡らせた水泡によって、火球が消化されていた。
水泡を飛ばすのではなく、あえて散らすことによって火を通さない水の弾幕を作り上げたのだ。
「隔壁を使わずあえて水風船で壁を作ったのか。一点しか守れない前者に比べて、後者なら広範囲を守ることができる……」
敵ながら天晴だと感心する反面、相手もそれなりに策を練ってきていることを体感し、なお緊張が増す。
「――だが、こっちも負けてない」
「Reve16【半月切り】!」
視線の先、七霧が悪戯な笑みを浮かべて言霊を唱えた。
突き出した手のひらから、半月型の斬撃が具現化する。
「いっけぇぇぇぇ!!」
「っ……! Espoir13【隔壁】!」
勢いよく飛び出した斬撃が、宙に浮く水泡を次々と切り裂いていく。
水の弾幕じゃ防げないと悟った紫月がすぐさま身を屈めて防御魔法を展開させるも、硬いはずの岩壁が容易く両断される。
「きゃっ!」
ソレがぶつかる寸前、水世に突き飛ばされて床に倒れた紫月。少々乱暴ではあったが、辛うじて斬撃からは逃れられたようだ。
「ちょっとやりすぎたっス?」
「でも怪我はしないって降魔先生が言ってたし、みんな理解した上で戦ってるからね」
やや心配気味な七霧を国枝がフォローして、その隣にいたはずの智也は、どさくさに紛れて姿を消していた。
紫月が少し離れたことにより水世の守りは手薄になっており、せいぜいあるのは足元で寝転んでいる神童くらい。その隙を狙って、神童側から水世の背後へと智也は回り込んでいた。
紫月の張った水の弾幕で火球が消化され、その際に生じた煙を隠れ蓑として。
「……頼むから消えてくれるなよ」
イメージトレーニングは何度も行った。
大丈夫、必ずできる。そう自分に言い聞かせて、水世がこちらに気付く前に決めにいく。
「Reve11【火弾】……!!」
智也の右手に生まれた火球が、的目掛けて飛んでいく。
それを気付かせないための猫騙しとして、七霧にもう一度斬撃を飛ばしてもらう。
幸い意識はあちらに向いたままだ。このままならいける――そう確信した。
別に相手を倒せなくても構わない。勝利条件は、有効打を一発入れることなのだから。
それくらいなら智也にだって不可能ではないのだ。
そう、考えていた。
「――Espoir15【水膜】」
刹那。燃える球体も半月型の斬撃も、水世を包み込む薄水色の膜を前に霧散して消え失せる。
そのとき初めて、智也は水世の存在を認識した。
攻撃を仕掛けたときも、試合前に整列したときも、もっと言えば入学式のときから意識を向けていなかった。
――いや、視界には入っていたはずだが、あまりに無関心で記憶に残らなかったのだ。
だから智也はこんなにも大きな特徴に気付かなかった。
白い制服の上に羽織ったクリーム色のカーディガン。まだ肌寒い季節でもないのに、水世だけがそうした厚着をしている。
それだけじゃない、首元には季節外れなマフラーまで巻いているのだ。見ているこちらが汗を流しそうである。
「……」
水世が一息つくと、身を包んでいた膜が小さな水滴となって消えていく。
その吐いた息が白く見えたのは、ただの錯覚か、或いは既成概念に捉われて見た幻視だろうか。
前述の真冬じみた格好もさることながら、雪のように白く美しい頭髪が、まさにその先入観を助長させている。まるで、水世の周囲だけが別世界かのような空気がそこに在った。
――誤算だった。
「まさか相性の有利な十六番まで防がれるとは……」
水属性を得意としていたという情報を基に、自分と七霧が別々の属性で攻撃を仕掛ければ、どちらかは通せるのではないかという判断を智也は下していた。
さきほど紫月に仕掛けたように、風属性の魔法は水や土属性の魔法では防げない。その対処に集中すれば、背後から迫る智也の奇襲を躱せない――そのはずだった。
水世は、二人の攻撃を完璧に凌いでいた。
それは授業で教わったものではなかったが、昨晩『魔導書』を読んだ際に目にしていた魔法の一つである。
七霧や国枝の反応を見るところ、おそらく『訓練校』とやらで全員が習う初歩の魔法なのだろう。
よそ事を考えるのもほどほどに、その七霧へと水世越しにアイコンタクトを送る。
――もう一度だ。その意図を察した七霧が首肯して、
「Reve16【半月切り】!」
「Reve11【火弾】」
「何度やっても無駄よ」
またしても、身を包む薄水色の膜によって智也たちの攻撃は防がれる。
見た目以上に耐久力があるのか、或いはそれだけの魔力を水世が注いでいるのか。
思わぬ障壁に四苦八苦させられる中、守りを固めていた水世が、ついに反撃に転じた。
「Reve12【水風船/雨燕】」
瞬間、水世の手のひらから放たれたそれは、まるで風船ロケットのように勢いよく飛び出し、背後にいた智也の意表を突く。
「黒霧さん!」
まさか想像もしなかった。
七霧と対峙していた水世が、後ろも見ずに攻撃してくるなんて。
これで同じ新入生なのかと、智也は周りのレベルの高さに絶句して、為す術もなく直撃を受ける。
「悪いけど、アンタみたいな生ぬるい環境で育った魔法使いとはレベルが違うのよ」




