第四話 事件と江口と屋上と
登場人物
【第3課資料保存室】
●山崎正一 (ヤマザキ)
主人公。謹慎3ヶ月の処分をくらい、県警のゴミ箱、第三課へ飛ばされる。
●江口さん
資料保存室最年長。
●樋口ルリ(ルリ)
生意気な資料保存室最年少
【捜査一課】
●原田
ヤマザキが最も信頼する同期
●茂山
エリートが集まる一課のエース
第3課配属4日目
今日も変わらず沈黙の中で過ごしていくのか……と思いきや
「ガチャ」
江口さんが数独をやめて立ち上がった
「じゃあ、僕はちょっと出かけてくるから」
そう言って江口さんは出て行った。
残されたのは俺とルリ
「……江口さん、どこに行ったの?」
気になったので、ルリに聞いてみた。
「…………多分屋上」
ルリは面倒臭そうに応える
「屋上?何しに?」
「仕事しに」
驚いた、仕事が回ってきてたのか、いやそれにしてもおかしいだろ、なんで仕事するのに屋上に?もっと詳しく聞きたかったが、ルリはもう話しかけてくんなと無言のオーラを出していたのでやめた。
気になる…………!一体江口さんに回ってきた仕事ってなんだろう?ハラダの話ではココには一切の仕事が回されないんじゃなかったのか?
「…………ガチャ」
俺は立ち上がる、追ってみよう
………………………………………………………
ルリの言う通り、江口さんは屋上にいた。何やら地べたに座り込んで考えているようだ、そして何やら見覚えのあるファイルを見ている。なんだったっけ、あのファイルどっかで見た事あるだよな………
あ!昨日茂山が持ってきたファイルか
こんな所で何してんだろう?声を掛けて聞きたいのだけれど、江口さんのあの集中度合いを見たらできなくなった、何というか眼光がいつもよりも鋭い。
江口さんを見つめる事、約10分
いや、何やってんだ俺は、なんの進展もないし……もういいや、戻ろう。また別の機会に聞いてみるか
そう思い屋上へ通じるドアを開けようとした……
ようとしたんだけど……
あ か な い
え!?なんでだ?アレ、ごく自然にココに入ってきたけどたしか屋上って普段は立ち入り禁止で鍵がかかっているじゃなかったか?ガチャガチャガチャとドアノブを押したり引いたりするが、扉はうんともすんともならない
「誰かいるんですか?」
ああー!江口さんに見つかる!何してるのか見つめてたのかバレるー!
「あれ?ヤマザキ君じゃないですか」
「こ、こんにちは江口さん、」
「どうしてこんなトコに?」
どうしようどうしよう言うしかないか!?あなたの事をつけてたって、言うしかないか!?
「………自販機探してたら迷子になりまして………」
自分で言っといてなんだけどこの答えキショすぎるな……自分が嫌いになるわ……
「ソレは大変だ……!鍵閉まっているから、ココから降りれないでしょう、」
「はい……ソレで困っていて……」
「私が開けましょう」
江口さんはニッコリ笑った。…………本当に申し訳ないな…………
江口さんは何やら鍵の部分をいじってる、が、一瞬手を止めた
「ヤマザキくん、」
「はい、なんでしょう」
江口さんからの急な呼びかけに少し驚く
「何してたか気になりますか?」
「……………………………………はい」
うわーーーーー!!!!!
バレテターーーーーーーー!
俺の脳内で羞恥心とプライドが戦争始めてるのを知って知らずか江口さんは続ける
「教えてあげますよ、何してたか」
「………………よろしくお願いします……」
………………………………………………………
ここは鳥取県警本庁舎の屋上(立ち入りは厳禁)
そこに対面で、しかも地べたに座るいい歳した2人。
「ヤマザキ君も第3課がどんな場所かは知ってるよね?」
「はい……」
「特に資料保存室には仕事が一切回されない事も?」
「はい……ソレも聞いています」
江口さんは、そうかそうかと、うなづく
「実はね…………その前に今から言う事、資料保存室のメンバー以外には言わないって約束できる?」
「……はい」
なんだなんだ一体、そんなぬヤバい事なのか?
「そう、よかったヤマザキ君、信頼してるからね」
江口さんはニッコリ、そして持っていたファイルを俺に渡してくれた
「………………見ていいんですか?」
「うん」
ごくりと唾を飲みファイルをおそるおそる開く。なんだコレは……『被害者情報?』『事件現場の様子?』『DNA鑑定?』そして極めつきは…………『捜査一課管轄事件』!!??
「いや、これ捜査一課の事件資料じゃないですか!」
「そうそう」
いやいやいや、なんでニッコリしてんの江口さん、こんな事第3課じゃなくてもしたらヤバいでしょ!
「実は!私、江口は捜査一課から事件捜査に関する資料を横流ししてもらっているのです!」
です!じゃねぇよ!何この人ヤバい事ペラペラ喋っちゃってんの……ん?ていうか、アレ?このファイルって確か
「あの……このファイルって昨日茂山さんが持ってきたヤツですか?」
「うん、そうだね」
「…………てことは、横流ししてるのは茂山さん……って事ですか?」
「うん、そうだね」
唖然、捜査一家でもエース中のエースと崇められてるあの茂山が、こんな事に加担してるとは、
「えーと…………で、江口さんは資料を横流しせてもらって何をしてるんですか?」
「うーん、捜査協力かな?」
「というと?」
「一課じゃ捜査が行き詰まってしまった事件をね、こっちに流してもらって、捜査するんだよ」
どういう事だ?県警のエリート達が集まる一課総出でかかっても解決できなかった事件を江口さん1人で捜査するって事か?
「江口さん1人で捜査するんですか……?」
「うん」
「一課総出でも無理だった事件を?」
「うん」
いやいやいやや無理無理無理!エリート総出で無理だった事だぜ?ソレを一人で?
「そんな事できるわけが………………」
あ、思い出した、俺がまだ一課にいた頃の話だ、確か俺は聞いたことがある。『もし事件が解決出来なかったら茂山にまわせ』と、『あの人に解けない事件はないから』と。そう、茂山は一課における神みたいな存在だった、本当に解けない事件がない、回した事件はなんでも解決する。それだけじゃない、あの人が本当にすごいのは
『事件を全部一人で解いている』事なんだと
そう言われていた。その茂山が江口さんに資料を横流ししている………?まさかだが、茂山は自分に寄せられた事件を代わりに江口さんに解いてもらっている‥‥?
「大体わかったかな?」
江口さん…………あなた一体なんで第3課なんかにいるんですか?
俺は江口さんに質問した
「なんでこんな事を?」
「なんでって?」
「いや、だって事件を解決しても江口さんの功績は……上層部には報告されないんですよね?」
さすがに茂山に盗られてしまうんですよね、とは言えなかった
「そうだね。」
と江口さんは答える
「じゃあ一体なんのために事件を解くんですか?地域の安全に貢献したいから……とかですか?」
なんか喧嘩売ってるみたいかな?この質問、と後悔がよぎる
「うーん………………、暇だから、かな?」
暇だからって……数独やる動機と一緒ですか……
………………………………………………………
雨が降りそうだったので俺たちは屋上から退避する事にした。
「あ、そういえば鍵がかけられたままだった……」
屋上につながる扉のドアノブに手をかけて思い出した
「ああ、そうでしたね、私が開けましょう」
どうやって開けるんだろう、中から鍵かけられているはずなのに、というかここに来る時はなんで開いてたんだろう。たしかここはキチンとしたセキュリティロックがかかってるはずなのに……
「あ、その前に」
江口さんは何か思い出したように俺の方を向く
「ヤマザキ君、私が扉開けてる時は後向いててもらっていい?」
「え?どうしてですか?」
江口さんは、フッと笑う、何というかこの人は笑顔が似合ってるよな
「犯罪行為だからだよ」
エエ……
更新しました!2022.2.5




