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雑貨屋の主人は錬金術師  作者: 村中 順
若芽と落ち葉
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第97話 湖のほとりの工房

 ミソルバ国は、ローデシアに近い為、王と共に市民も、ここシン王国に避難してきた。その時、トムも避難して来たため、結果的に店は閉店状態である。そこで、ここシン王国で店を開こうと、メリルキンとトムを連れて王都内を物色した。


「いや、これはこれは、ジェームズ殿ではないですか」

と羽の生えた帽子に、丈の短い服に、ぶっとい足にタイツ姿の髭もじゃの男が手を振りながら近づいて来た。


「ミソルバの王様?」

と僕は一応驚いて見てせた。


「久しぶりじゃの、でも今は亡国の王なので、領土名は不要ですなハハハハハ」

と今の境遇など笑い飛ばした。


「こちらに避難されたのですね? で、あのう…… 」

と僕は、王が何で、こんな所を護衛も付けずに歩いているのかを遠回しに聞いて見た。


「いやいや、ここシン王国は、聖教徒であれば、こうして受け入れてくれるのはありがたい事じゃが、先立つ物まで厄介になるもの気が引ける。だから商売の種がないか見て回っておったのよ」

と商人気質の抜け目の無い、笑い顔で答えた。多分、気など全く引けてないと思う。


 そして、

「今、見つけたわい。商売の種を」

と僕を指差して話をして来た。


 王の商売とは、シン王国王とアルバ海運都市の出店資金を出資するので、その儲けの数割を納めないかと言うものだ。そして、さらに出店するときは増資すると言う。


「いや、貴殿のところのトム君の経営手腕と貴殿の発明品、ヒーナ殿の薬があれば、これは大きな利益を生むこと間違いない」

と王には似つかわしくない、揉み手しながら提案して来た。


’うーん、これは願っても無い申し出だ。組合費や家賃が高くて諦めたアルバでも出せるのは大きい’


”トム、見込めそうな利益と出店費用、それから王から借りるのに幾らが最適かを見積もってくれ”


”分かりました。ちょっとお待ちを”

トムは、商売と経営に特化したホモンクルスなので、この辺りの勘所はシェリーより優れている。


「少し検討させてください。では後日、トムをミソルバ国の大使館に行かせます」

「おお、毎度あり」

果たして、この人は王なのだろうか?


 さて、店は大通りに面した、一等地に借りれる見込みが立った。次に僕が欲しいのは錬金術の工房だ。ローデシアの盾の解析もしたいし、ケイさんのタガーを作ってあげたい。


「メリルキンさん、シン王国王都でどこか、工房を開けるような場所、知りませんか?」

と僕は両手を少し開きながら聞いて見た。


「ああ、それならば、お嬢様方にお聞きいただければと思います。多分、ジェームズ様になら、お許しいただけるかと思います」

とちょっと謎のことを言った。


   ◇ ◇ ◇


―――シン王国王都の湖の辺りに、少し大きな建物がある。表の玄関はレンガで作られた重厚な門に鉄の大きな扉があり、中から山のような、大きなものが出てくることを想像させる。そして中に入ると、シン王国の謁見の間を小さくした、全面ガラス張りの大空間が広がっている。精密な金属質の細いアーチが、美しい模様のように見え、ガラスを通して、夕日に赤く煌めく湖が見える。そして、湖に一番近い所に二脚の椅が湖に向かって置かれ、誰か二人がお茶を飲みながら、夕日を見つめ、寛いでいる姿が目に浮かんだ―――


「ジェームズ、ここは、若き日のオクタエダルが、シン王国に滞在していた時、自ら建て、使っていた工房じゃ」「じゃ」

と階段を下に降りながら、二人の聖霊師は言った。


「オクタエダルが旅に出た後は、メリルキンが時々来て、メンテナンスをしていたのじゃ」「いたのじゃ」

と続けて話をしてくれた。そして、二脚の椅子の前で二人は一度立ち止まり、片方の聖霊師だけが、左側の椅子に座った。多分ミリーさん。そして、右側の誰も座らない椅子には、かつて師匠が座っていたのだろう。


 ミリーさんは立ち上がり、

「この席は、ヒーナに譲るわい。そっちの椅子にはジェームズが座れ。勝手に旅に出ぬようにな」

とステレオでない聖霊師の声を聞いた。


   ◇ ◇ ◇


 師匠の工房の地下の書庫の入り口には


『儂の言葉を知る錬金術師のみ入室できる』

と看板が掲げられ、何か魔法が掛っていた。僕はなぜか、最後に聞いた最初の言葉を思い出した。


 頭上の賢者の石を顕現させて、

「我、錬金術師ジェームズ・ダベンポートが命ずる。次の言葉を照合せよ。混沌は、陰と陽に分かれ、陰陽から水、風、火、土が生じ、残りし陰と陽は聖と魔に分かれる」


すると、扉の隙間から光が漏れ、


カチ

と解錠された音がした。


 扉の向こうは羊皮紙や本が所狭しと積み上げられていた。


 その中にはシン王国の謁見の間の設計図があった。やはり師匠の作品だったようだ。それに、師匠が良く移動の時に使っていた、雲の薬の作り方の羊皮紙もあった。

 アルカディアの設計図もあったが、かなり難解なところがあり、読み解くには時間がかかりそうだ。


 それから、ローデシアの盾の構造、成分は、粗方判った。

 非常に硬いアダマンチウムを主成分に極少量の賢者の石が使われている。裏側に施された『印』に特徴があり、魔素を吸収して四大元素を逆性質に変換するらしく、直接魔法には強力な相殺能力を発揮することが判った。それから、アーノルドの重力波を跳ね返す理由は、錬金術の陣が描かれており、重力を制御できるようになっているためだ。僕のグラビティホールが効いたのは、たまたま、下からの陣だったからだろう。この盾を作った錬金術師は、かなりの力を持った人と思う。

 この盾の構造は、他にも応用出来そうだ。


 次にケイさんの武器だが、やはり使う人の様子を見たり、聴いたりしないと、どんな所を補ってあげるのが良いかか解らない。


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