第45話 千年聖霊樹
聖霊師の成長促進の祈りで、腐肉草は見る見るうちに発芽し、葉が出てきて、魔素を出していく。その魔素は、風紋石の風で洞窟の外に出されていった。
動かなくなるまで、腐肉が魔素に変換されてきた頃、
“ど・う・か……この・身の・浄……化……を、こ……の……霊……樹……を……た・く・す”
と思念が入ってきた。
皆が顔を見合わせたので、全員に思念が伝わったのだろう。
双子の聖霊師がこちらを見てきたので、僕は頷いた。
聖霊師達は、浄化の陣を上書きして発動させた。さらに回復の陣も発動させて、消滅を促した。
アンデッドなど、魔素を生命エネルギーにしている魔物は、聖霊師の回復は消滅を示す。
「これまでの努め、ご苦労であった。よう守った」「守った」
と聖霊師たちは、ねぎらいの言葉をかけ、今度は祝福の祈りの歌を捧げた。
すると、土竜の強い思念が僕らに入ってきた。
すべての聖霊樹の花が咲き、辺りが白い小山のようになった春
強い日差しを避けて、動物たちが木陰に休む夏
聖素をたっぷりと含んだ、黄色い実をたわわに実らせた秋
寒い北風を避けて、常緑樹の葉の間に鳥たちが羽を休める冬
その楽しげな森の風景が一転し、
巨大な火球の落下と、度重なる火炎と魔素の嵐
そして、魔素が大量に含まれた、土砂の雨
聖霊樹が完全に埋まってしまわないよう
傷ついた土竜は最後の力を振るい、空間を作り出した
そして、力尽きた
“な……が……か……っ・た……”
土竜は、思念で伝えてきて、光とともに魂は消滅し、骨など特に硬い部分だけが残った。
「聖霊樹は枯れて、化石化したのを知らずに、ずっと守ってきたですね」
とシェリーが寂しく呟いた。
◇ ◇ ◇
僕たちは気を取り直して、光る柱に向かった。人が五十人輪になっても抱えきれない聖霊樹が何本もある。そしてどれも、化石化して葉は茂っていない。
僕は、落ちている手頃そうな枝を取った。それをシェリーに渡して、感じを聞いた。
シェリーは少し体を揺さぶるような仕草をして、最大限に気を発勁した。枝は爆発しなかったが、その先の地面に穴が空いた。
「凄いですね、気が通るのが解ります」
性質は、予想通りだが、硬さが予想を上回った。
硬く、そして粘りがある。ツルハシが全く歯が立たない。
魔法の類は、全く受け付けない。爆破も試みたけど、傷一つつかない。
錬金術の手法を総動員して、三日かかって、やっと切り出せた。
この間、僕とシェリーはカービンとの商談に望んだ。基本的に彼は、商売よりも名声を求めているらしく、それほど拘らなかった。いくらかの代金と彼の書物の販売をうちの店で扱うこと、僕の作る魔道具の格安入手が条件としてまとまった。
しかし、まだ、書物は一冊も執筆していないという、ちょっと疑問も残った。
最後に、ここの採掘権を示す看板と封印を行い、双子の聖霊師が聖素慈雨の祈りを発して、周辺の浄化を行なおうとした。
その時、
「これ、魔術師、聖素慈雨の祈りで浄化する故、魔素宝具をしっかりと片付けておけ。魔力が無くなっても知らぬぞ」「知らぬぞ」
と注意していた。
カービンは、よく知らないのか、杖を懐に入れるだけだったので雨に濡れてしまい、灯火一つも点けることができなくなった。
結局、僕たちの船で帰ることになった。




