第15話 手がかり
その部屋は、カーテンを掛けていて和らい光になっていた。ベットがあり、金髪のお下げで、ほっそりとした女の人が上体を起こして外を眺めている。
「ヒーナ?」
と僕は聞いた。
ヒーナは二歳年上の先輩の錬金術師で、薬作りには才能があった。
「ジェームズ? ジェームズなのね。わ、わたし賢者の石を取られた……」
と泣き出した。
賢者の石は、錬金術師を名乗るための必要条件だが、一生のうちに作れる回数はそれほど多くない。これは、最高の材料と、場所と、製作者の星回りと年齢が合致したときしか作れないためだ。年齢は、六歳、十二歳、十八歳、二十四歳……の六の倍数の年齢でしかうまく作れない。つまりヒーナは後一年、自分で賢者の石を作れないことになる。
また通常、以前作った石を核にして次の賢者の石を作るため、一人の錬金術師は一つの石しか持っていないことが多い。たまたま亡くなるか、引退する錬金術師のものを譲り受けるか、他人から奪う必要がある。
僕とシェリーは、ヒーナをなぐさめながら、双子の聖霊師に病気か、怪我なのか? と聞いた。
「怪我をしておったが、もう治っておる。我等が治した」「した」
ヒーナの話では、魔物退治のサポートの募集があったので、薬剤師としてやって来た。大きな怪我や命に関わるものは双子の聖霊師が直したが、自分は携帯用の回復薬を調合していたということ。
そして、双子の聖霊師がエレーナ王女を迎えに行く少し前に町の外れで、黒ずくめの男と虎種のイかれた女に襲われ賢者の石をとられてしまった。男は大地の槍を使い、女はスモールソードの相当な使い手で、抵抗虚しく傷を負わされた。聖霊師のお陰で軽傷で済んだらしい。
僕はヒーナの容体が、軽くて胸を撫で下ろし、襲った奴が大地の槍を使ったと聞いて、怒りに思わず言葉にならない声を出してしまった。
そして、
「ちょっとごめん。その槍は君に刺さった?」
「ええ、お腹のあたりに刺さったわ。思い出したくない」
「すごく申し訳ないだけど、真名模様を取らせてくれないかな。シェリーにとってもらうから、恥ずかしがらないで」
「あら、ジェームズ、私と貴方の仲じゃないの。別に見てもらって結構よ」
シェリーが横目で僕を見ているのは知らなかったことにしよう。
僕は真名模様を発見した時、密かにあの丘に行って真名模様の採取を行なった。奴は盛大に魔法を使っていた為、残っている可能性が高いと踏んだためだ。
そこでは三つの真名模様が採取できた。オクタエダルのものはアルカディアに戻って照合して判った。残り二つのうち、どちらかが母のもので、もう一つがあの時の男のものだろう。
そして今、ヒーナの傷から取った真名模様と、一つが合致した。オクタエダルの話では、もう一人錬金術師がいたらしい。ただオクタエダルの攻撃の反対性質しか与えていなかったらしく、真命模様は薄く殆ど残っていなかった。
ハッキリしたことは、あの男はまだ生きている。これまで、あの時の犯人たちは、叔父のギールに雇われていたと思っていたが、今回の錬金術師連続殺人の犯人でもある可能性が高い。
しかし疑問も残る。これまで犯人は慎重に魔法を使ってこなかったのに何故今回使ったのか? そして何故奴が賢者の石を集めるのか? あそこにいた錬金術師のためなのだろうか。




