第13話 聖霊師
僕は、僕とアーノルドが体験した悲劇の日の嫌な思い出を振り払うように、エレーナに話しかけた。
「僕は、ジェームズ・ダベンポート、こっちは、アーノルド・カバレッジ」
「エレーナちゃんは、王女様なのかい?」
「うん。お父様はミソルバの王様」
「じゃから、何で我等を無視するのじゃ」「じゃ」
二人の聖霊師は、僕を杖で小突きながら言った。
横目で見ていたアーノルドが
「何だい、この子供ばばぁは?」
すると、聖霊師たちは怒って、
「子供ばばぁとは失礼な奴じゃ。お主ら、我等の外見で、見くびっておろう。言っておくが、我等はお主らより、ずっと年上じゃぞ」「じゃぞ」
「なら、ばばあにはちげぇねぇ」
「狼属の末裔よ、そなた年寄りを敬うという気持ちはないのか?」「ないのか」
「まあ、まあ、アーノルド謝れ」
「わりぃいな。これでいいか?」
とアーノルドは僕に向かって言っている。
しょうがないので僕がフォローに入る。
「許してやってください。口は悪いですが、心はいい奴なんです」
「それは判っておる。そんなに純粋で膨大な聖素を持ち合わせておる人属は珍しい。しかし粗忽者であるから王にはなれんな。王の守護者としては一流じゃろうて」「じゃろうて」
「何、誰が粗忽者だと」
…………
などと、妙な会話が続いているところにシェリーがコロン車、二台を連れてやってきた。シェリーは近ずいてきて、
「こちらは?」
と僕に聞いてきた。
そこで、エレーナの方から紹介した。
シェリーは優雅に膝を折り挨拶し、そして聖霊師にむきなおり、
「森の妖精様にお目にかかれて、恐悦至極に存じます。ジェームズ・ダベンポートの従者シェリーで御座います」
と、また優雅に膝を折って挨拶した。
「おーこれは、よく出来ておる。錬金術師、其方が作ったのか? いや創造したのか?」「素晴らしい」
僕は頷くと、
「聖素の運用が実に素晴らしいの。武術の使い手と見た。狼の粗忽者と良い勝負じゃろ。それにお前を強く思う者の意思が入っておるな」「おるな」
聖霊師たちは、聖素を運用することに長けた魔法使いなのだが、この二人には、体内を巡る聖素が見えているようだ。
とりあえず、王都にお送りすることを申し出て、僕たちのコロン車に乗ってもらった。
「ところで、王女さまと聖霊師の皆さまは、何故ここに?」
聞いたところでは、なぜかミソルバ王国周辺の魔物たちが活発になり、村や街を襲うようになった。そこで、魔物対策として聖霊師、錬金術師、騎士、冒険者などが雇われ対応していた。
ところが、先週、こともあろうか王都が襲われたため、エレーナ王妃を一時的に砦の方にお移していた。そして何とか撃退し、王都の危険がさったので、帰るところで魔物の襲撃にあった。途中、騎士たちは全滅し、魔法通信で王都に救援を要請しているときに僕たちが来たと言うことだった。王都も街も魔物避け結界を張っていたが効果がなかったということだ。
「お主、魔物避け結界が効かない原因を知っておろう?」「おろう」
「ええ、魔寄せの呪いです」
「そうか、やはりな。丘の上におった奴か。気づいても我等には効果的な攻撃手段がない。魔術を使ってない魔術師には、精々、森の精霊の力を借りて、木を生やす程度じゃて、はははは。ところで、ダベンポートと言うのは、エルメルシアのか?」「のか」
「そうです。僕は次男です」
「答え難いことを聞いて悪かった。ニコラスの出来すぎた弟子とは、お前か。なるほど、その賢者の石では出来すぎているな」「いるな」
僕の賢者の石は、魔法使いでも見え難いところに置いてある。それを見破ると言うのは凄い人達だ。
「オクタエダル先生をご存知なのですか?」
「ふむ。古い友人じゃ」「じゃ」
―――聖霊師とは、聖素を運用する魔法使いである。植物や動物、森や大地の聖素を少しづつわけてもらい、それを集めて、回復、癒し、再生を行うことができる。また、植物の生命エネルギーを活発にし、成長を促進することもできる。
魔素と聖素は触れ合うと消滅するため、魔素が生命エネルギーである魔物には聖霊師の回復はダメージを与える。なお、魔術師は魔素を運用するが、人属であるため聖素も必要である。そのため魔術師はそれらが相殺しないように魔素を杖などの物に封じて使うのが普通である。聖霊師が、魔術師を回復するとき、魔術道具を十分に離していないために一時的に魔力が消えてしまう事故がしばしばおこる。―――




