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雑貨屋の主人は錬金術師  作者: 村中 順
リリス
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第128話 ファル王の崩御

「報告します。陸側の街道は全て魔族、魔物に埋め尽くされています。海外沿いの街道ならば、まだ大丈夫かと思われます」

と昨日放った斥候の一人が、命辛々持ってきた情報だ。


 私はそれを父上に報告するために天幕の方にいった。


 父上、現ファル国王はローデシアでの魔族の反撃で、正規軍二十万を失い沈痛の中にいた。もう気力は失せて、今日明日が危ない。


「父上、海岸沿いの街道からファルには入りましょう。お気を確かにお持ちください。我らがファルに入れば、魔族を迎え撃ち、今度は我らが反撃することができるでしょう」

と励ました。しかし、反応も鈍く、目を閉じたまま、微かに頷くだけだ。


「誰か、兵達をまとめよ。街道沿いへ移動する」

と天幕の外に控える近衛に命じた。


 もう少しで魔族を一掃し、ローデシアをファルの領土にできると思った。しかし突然、気味の悪い城がローデシア城の跡に現れた。


 そして、あの声が頭の中に響いてきたのだ。


 デーモン王の復活。


 これで、兵達はパニック状態になり、魔族、魔物たちに蹂躙された。

 残ったのは、私達親子と近衛の数十人、途中、兵達を拾い、なんとか百人程度になった。


「ううぅ………」

父上が口をパクパクして何かを言おうとしている。


「どうなされました? お気を確かに。陛下!」

と私は父上の手を握った。既に駄目だろうと思う気持ちを心の片隅に隠しながら。


「……ファルを……頼む……お前を王にする……」

と最後の生命を振り絞り、父上は消え入るような声で語りかけてきた。


 そして崩御された。


 聖霊師がいないので、荼毘にふした。匂いを辿って、魔物が来る為、早々に兵達とともにそこを後にして海沿いの街道を目指した。


 第三十五代ファル国王の最後にしては、寂しすぎるものであった。


   ◇ ◇ ◇


―――何台もの檻車には、人属が詰め込まれ、下の方は押されて肉塊になっている。時折そこから出されて、聖素抜きの液体に放り込まれたり、新しく捕まった人属が放り込まれていた。その中央付近に舞台ほどの大きさの台の上に大きな椅子が据えられた人力車がある。何十人もの人属がそれを引っ張り、ゴブリンロードたちの鞭によって衣服はちぎれて何も着ていない―――


「ガハハハ、アレがファル王都か。ロッパ最古の王国の首都。まあ、そこそこ、でかいから、家畜も沢山いるだろう」

とデーモン王は人力車の椅子から眺めて言った。


「全軍、全力であの王都を攻撃しろ。魔除けの結界などに怯むな。長距離魔法を当て続け、魔法障壁を破壊せよ。良いか、これから、あの王都の略奪を許す。好きなだけ、犯し、殺し、そして食え」

と俺は全軍に告げた。


 さらに残った将軍に向かって、

「お前たち、俺がいない間の体たらくをあの王都攻略で挽回できるかどうかだな。また見っともない事をしたなら、死んでもらう」

と睨みつけた。


 将軍たちは、すっ飛んで行き、それぞれの眷属を使って攻撃を仕掛け始めた。それを確認して、天幕の方に向かった。


’王都は堅そうだ。そう簡単には落ちないだろう。奴らにやらせておいて、アイツの様子を見てみることするか’

と考えながら、天幕の中に入った。


 音無しの魔法を使い、外に音が漏れないようにし、呪文を唱え、点ほどの地獄門を開き、その向こう側を観察した。


   ◇ ◇ ◇


 あのレオナとか言う奴の槍は、物理攻撃が効かないはずの俺の顔に傷を負わせた。それで顔の半分が消え去った。


 しかし俺が驚いたのは、彼奴には未練が残っていないと言う事だ。


 奴の骸を操ろうと、語りかけるが、返答がない。奴だけではない。エルメルシア兵と思われる兵たち全員が無言だ。いや、昇天したと言える。


「一体、あのエルメルシアの王は、どう言う奴なのだ」

と興味が湧いて、思わず呟いた。


『拙者は王を信頼している。それで十分』と奴は抜かした。なぜ、こんなことが言えるのだ?


 骸骨兵たちに、こんな事を問うても回答はない。俺一人だけが悶々とした。


 気を取り直して、集まった骸骨兵とゴブリンどもを見ると大分減った。


「少し、兵を増やすとするか」

とまた呟いた。横にいるホブゴブリンが怪訝な顔でこちらを見てきたがほっといた。


 このアーデルの砦までの道もしっかりと清められている。相当な聖霊師がいるようだ。しかし、地中深く、古代の地層までは届いてはおるまい。古代の魔族の骸を呼び出そう。


 ムサンビは、ゴブリン数匹を殺して、血で穢した後、手をついて語りかけた。


ゴゴゴゴゴ

―――大地の奥深くから湧き上がる地鳴り―――


ゴゴゴゴゴ、ドッ

―――大地が盛り上がり山のようになったあと、その土が辺りに飛び散った―――


 俺の目の前に、いつも見るキュプロスより、さらに大柄で牙が大きい骸が数十体現れた。


「なかなか、上出来だ。さあ、行くぞ」

とムサンビは号令をかけて、アーデルの砦に向かった。


―――その上空には、黒い点がある事を知らずに―――

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