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雑貨屋の主人は錬金術師  作者: 村中 順
さらば我が友
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第123話 レオナとムサンビ

「不味いな、骸骨の一部が、アーデルへの街道に向かっている」

と王は少し大きな声で話してきた。


「陛下、マリオリ殿それにケイ殿、直ぐに敵の追撃を。ここは拙者が引き受けます」

と俺は王に具申した。


「レオナ、手筈通りに。行くぞ」

と王は二人を伴って急いだ。


「レオナ殿、ご無事で、アーデルで逢いましょう」

とマリオリも声をかけてくれた。


 俺は、

「さー、骸骨ども。レオナが相手だ」

と叫んで、三人を守りながら、城壁を降りた。


 梯子をつたって、城壁を登ってきた骸骨兵が、私に斬りかかってきた。


 その剣を槍で受け、クルッと回して、槍先を骸骨兵の眉間に突き刺した。


 細い階段を降りながら、次々と迫ってくる骸骨兵の剣を避け、槍を突き刺す。


 突き刺された骸骨兵の眉間は、大きく溶けて再生不可能な穴が空いていた。


 俺は、王達が兵の一部を率いて、アーデルの砦に行くのを背中で見送った。そして、徐に骸骨兵達の前に立ちはだかった。


「ここは、通さないぞ」

と槍を扱きながら呟いた。


「皆の者、エルメルシアの兵達よ。今ここで、しばらく凌ぐ。これまでの調練の成果を見せてくれ」

と兵達を励ました。


 すると、兵達も、


オー


と言う雄叫びで返してくれた。


 日々、私は言うに及ばず、ケイ殿、アーノルド殿、シェリー殿、レン老師の武術の達人から厳しい調練を課せられ、耐え抜いた生え抜きのヘンリー直属の兵達である。それが、対魔最強の武器と言われるシン王国の剣を持ち、鎧を着ているのだから、そこらの魔族に負けるわけがない。


 それに、


「ヒトゾクガゴトキガ」

と混じっていたゴブリンロードが城壁から降りた時、足から煙が出始め、溶け始めていた。


 地上は、聖水が撒かれている。


「ぎゃー」

とゴブリンロードはひっくり返り、今度は全身で聖水を浴びて、のたうち回りながら絶命した。


 それでも骸骨兵は止まることなく、攻撃を仕掛けてきた。ガラガラと音を立てて、骨に戻ったその上を次々と踏み越えて迫ってきた。


 ここまで、到達した骸骨兵をエルメルシアの精鋭部隊は、難なく斬り伏せていく。私も槍で、数体づつ突き刺し、再起不能にしていった。


 そこへ、フワリと、ムサンビと言う魔族が降りてきた。そして精鋭部隊を数名切り飛ばした。見ると血は出ていないが明らかに絶命している。


’あの大鎌は、生命だけを奪うのか’

とレオナは思った。


 敵の大将がやって来て、骸骨どもも勢いづいた。


 持ちこたえている兵達に大鎌が何処からともなく、振り下ろされ絶命していく。


「おい、魔族、俺が相手だ」

と俺は声を張り上げた。


’顔が見えない不気味な男。まるで黒いローブだけが漂っているようだ。ワイトに似ているが、魔法は使わないようだ’


 そして、足元を見ると僅かに浮いている。


「そうさ、俺は宙に浮いているから、聖水の影響はない」

とくぐもった声で語りかけてきた。


 そして、

「お前、名は?」

と聞いてきた。


「レオナ・クライム」

と私は答えた。


「お前は、お前の王に信頼されていると思うか?」

とそいつは変な問いを発した。


 こうしている間も、周りでは精鋭部隊と骸骨兵が戦っている。


「信頼されているかだと。そんな言葉は関係ないな。拙者は王を信頼している。それで十分」

と俺は答えた。


「………」


そいつは、表情は全くわからないが、何故か狼狽えていた。


   ◇ ◇ ◇


 ムサンビは狼狽えた。


’信頼されているどうかなど不要だと? 信頼していれば十分とはどう言う事だ? 信頼を得ていると感じるからこそ、この身を張って死地に赴くのではないか?’


「どう言う事だ?」

と言いながら、大鎌を振った。


 それをレオナは間一髪で避けた。


「ほう、俺の一撃を躱すとは、褒めてやる」

とムサンビは声をあげた。


 ムサンビは、大鎌の歯の根元を右手で持ち、大鎌全体を短く持ち替えた。


 レオナは、人属の攻撃とは思えない素早さで、槍を突き刺した。


カン

―――鎌の刃で槍が交差する―――


 ムサンビは鎌の柄で避けたのち、鎌の形状を生かし、その鎌の先をレオナの首に持っていった。


’これで引けば、お前は終わりだ’

とムサンビは思った。


 レオナの槍は信じられないシナリを発揮して、回転し、鎌を跳ね上げ、何とか躱した。


’ほう、またしても避けたか’

とムサンビは思いながら、続けて、鎌を下から切り上げ、横に払い、上から切り下げた。


   ◇ ◇ ◇


’早い。あの大鎌を振っているとは思えない早さだ’

レオナは鎌を避けるので、精一杯だった。


「お前は、あのデーモン王から、信頼されているのか? お前はあいつを信頼しているのか?」

とレオナは、躱しながらも、ムサンビに声をかけてみた。


 ムサンビは一瞬、躊躇した。


’俺は………’


「埒もないことを。人属を狩る。それが魔族だ」

とムサンビは、自分の考えを、あえて否定するかのように答えた。


 さらに数度、渡りあう。


 レオナはそろそろ、頃合いかと感じ、

「やれ、流せ」

と大声を出した。


 ドードードー

―――水が放流された音―――


 すると足元にまた、聖水が流れ始めた。仲間の骨の上に居た骸骨兵は、増水した水で、ガラガラと骨に戻っていく。


「こやつ」

とムサンビは怒りに任せて、さらに激しくレオナにしかけた。


’俺も焼きが回ったか’

とレオナは感じた。


 その時、周りの兵達がムサンビに聖水の入った瓶を投げ始めた。


 一つを空中で割った時、水がローブに掛かり、一部が煙を出して消えていった。


「おのれ!」

とムサンビは、瓶を投げた兵士の元にクルクルと回りながら移動して絶命させた。 


その回転は止まらずに次々と精鋭部隊を絶命させていく。


「ハハハハ」

とくぐもった笑いがこだましている。


 部下が次々と倒れていく。レオナは喉の奥が熱くなり、


「やめろー、やめろー」

と声を出して、槍を突き出し突進していった。


ガシッ

―――槍が鎌とぶつかる音―――


とまたしても、止められた。


しかし、疾風の如く、槍を突き出した。

槍の穂先は、ムサンビのローブをかすめ、消していった。


 ムサンビは防戦一方になった。


’早く、早く、早く突きだせ’

レオナは、そう言い聞かせて、敵の動きを封じながら突き出した。


そして、一瞬の隙をみた。


’あの顔へ、一撃入れる’

と槍を目一杯突き出した。


 しかし、鎌がレオナの首の後ろに当てられていた。


 ブチッ


とレオナは音がしたように感じた。


 体が思うように動かない。


 槍が動かない。


 しかし、奴の顔の一部から煙が出ている。


’チッ、ちょっと外したか’

と思ったが、見ているものが、ムサンビが、斜めになる。


 さっきの音は、俺の魂と体の繋がりを切った音なのか……


   ◇ ◇ ◇


 走馬灯、そうか、これがそうなのか

 両親の顔、子供の頃、若い頃の調練


 そこから、なぜか、場面がいきなり飛ぶ、陛下の笑顔が

「君は私の唯一の親友なのだ」

とゆっくりと語った。


 最初に会ったのは、町の酒場だ。俺が出奔して、自暴自棄気味に呑んだくれて、なんか同じように、しけた顔して隣の席に座っていたのが、今の陛下だ。

 その顔を見たとき、まるで自分を見ているようで、意味もなく腹が立って、喧嘩を吹っ掛けた。

 陛下も思うところがあったのだろう。俺の喧嘩を買って、二人で殴り合った。

 いつの間にか、何故か笑い合い、肩を叩きあっていた。


「似た者同士だな。この近くに住んでいる。どうだ、一緒に来ないか? 近くに空き家があるぞ」

と丘の上の村の家を紹介してくれた。


 最初は良く分からない男だなと思ったが、カラカラと笑う姿を見ているうちに、こいつは信用にたる人物だと心の中で確信した。

 

 そして、エルメルシア城でのあの出来事で、王と分かった。

そのとき、臣下の礼をとり、騎士にしてもらった。


 そして、

「でも、君は友人でいてくれ」

と頼まれた。


’ああ、陛下、あの酒場での喧嘩から、拙者の人生は彩り豊かなものになりました’


 それから、今の仲間たちと会った。俺が井の中の蛙と思い知らされたが、若い仲間たちといるのが楽しかった。


 若い友との手合わせ、

 シェリー殿には、最初から敵わなかった。

 アーノルド殿にも、いつの間にか敵わなくなった。


 ケイ殿との手合わせ。

 初めは、勝っていた。でも今では敵わない。


 でも何故か嬉しい。

 

 マリオリは、俺より年上だ。

 ちょっと、よく分からない事を言うことがあったが、良き同僚だった。


 そしてジェームズ様には、何度も驚かされた。魔法もさることながら、あのアルカディアからの退避のおり、再会した時は別人かと思った。数日の内に男として大きく成長したように感じた。


 みんな、どうか陛下を助けてほしい。


 我が息子よ。お前を方々に紹介出来なかったなぁ。もっと腕を上げてからと言い聞かせて結局果たせなかった。でも、お前なら、きっとあの方々のお目に止まると信じている。精進するのだぞ………


  ………


 ああ、青空だ。雲、一つない青空だ。


 俺は、陛下が、あの雲の無い初夏の青空のように、カラカラと笑う姿が好きだ。

 

 だから、陛下を頼む。


 意識は ……… 消えた ………


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