反逆者は自称『天才』から目を付けられる
すみません、予約時間間違えてましたorz
まだ隔日更新には移行しないのでご心配無く(^^)
「いやぁ、しかし大変な目に遭っちまう処だったな!
まぁ、例のガキはあんちゃんが、魔物の群れの方は姉ちゃんが蹴散らしてくれやがったからどうにかなったが、あんたらが居なかったらどうなってた事か、想像もしたくねぇよ!
本当に、あんたらが依頼を受けてくれて大助かりだったぜ!がははははははっ!!」
未だに街道の途中に在りながらも、もう既に事が終わったかの様な様子にて、声を出しながら大笑いするガウォルク。
少し前に片付いた事を回想しての発言に、近くで彼と同じ様に馬車を走らせていた隊商のメンバー達も、その言葉に応じる形で興奮した様に言葉を口に昇らせて行く。
本気で死ぬ処だったと言うのに、随分とアレな話題で盛り上がるんだなぁ……と言った感じに、ガウォルクが乗る先頭付近の馬車に呼ばれて乗り込んでいたシェイドとサタニシスが内心で思っていると、他のメンバー達と言葉を交わしていたガウォルクが再びシェイドへと水を差し向けて来る。
「しっかし、あのガキ一体何者だったんだ?
あんちゃんの話によれば、あいつがさっきの騒動を、全部一人で引き起こした、って事なんだろ?そんな事、本当に出来んのかい?」
「…………さぁ、どうなんだろうかね?
『天才』を自称していた以上、俺達も知らない何らかの方法で魔物を操る方法を確立させていた、って可能性も無くは無いだろうからな。
もっとも、勝手にアレコレ話してくれていた中に、『スキル』云々って単語も混じっていたみたいだから、もしかしたら稀人としての能力だった、って方が有り得そうなんでちと判定は微妙だが、ね……」
「しかも、『天才』だって自称するだけあって、矢鱈と自分の実力に自信満々だった、って話じゃ無かった?
確か、あの群れも一人でどうとでも出来る、みたいな事を言ってたんでしょ?実際問題、どうにか出来そうな感じだったの?」
「……そこも、何とも。
結局、俺が放った攻撃は、今の処直撃した訳でも無かったから本人の耐久性だとか、ソレを如何に捌けるか立ち回れるか、位しか判断出来なかったが、言う程大層な実力の持ち主、って感じでは無かったな。
俺の攻撃を回避出来ていたのだって、本人曰く『スキル』のお陰でどうにかなっていた、って事でしか無かったみたいだし、反撃を受けた事も一度もなかった訳だから、攻撃面に特化していた可能性も考慮すると……って感じだな」
「あぁ、評価出来る点をまだ見れていないから未だに『未評価』状態、って事?
でも、あの子には私もあんまり良い印象は無いかなぁ~。だって、顔を合わせるなりいきなりアレだよ?流石のお姉さんでも、アレは無いなぁ……うん、ナイナイ」
「…………まぁ、確かにアレはどうなのよ、と俺でも思うからなぁ……」
二人揃って遠くに視線を投げ掛けると、ほぼ同時に少し前に起こった事を回想して行く……。
******
シェイドから絶対零度の声色にて、生き残りたくば己の利を説いてみせよ、と死刑判決にも等しい宣告を受けた自称『天才』のソレは、フードによって素顔を隠された状態(口元は見えている)で在りながらも、滝の様に冷や汗を滴らせつつどうにかして生き延びる手が無いか、と周囲へと頻りに視線を泳がせていた。
その様子は端から見ても『不審者』の取る挙動その物であり、彼(声から推測して。恐らくは若い男性だと思われる)へと向けて『自らの利を示せ』と提案した本人であるシェイドからしてもあまり近付きたくは無い様な怪しさにまみれた挙動となってしまっていた。
その為か、そこはかと無く気持ち悪さを感じ取ったらしいサタニシスが、彼の背後に隠れる様な形で寄り添って来る。
元々、迫りつつあった魔物の群れを殲滅して見せた事により、彼に対して誉めてもらおう(ソレで良いのか?)と考えてこちらに寄って来ただけであり、特に他に何かしらの目的があった、と言う訳では無い。当然、目の前で泥にまみれていたソレの事を哀れに思ってシェイドの事を止めるために来た、と言う訳でも当然無い。
……が、藁にもすがる思いであったらしいソレは、自らの近くに寄って来たサタニシスによって勝機を見出だしたらしく、汗だくな状態のままで唯一覗いていた口元に粘っこい笑みを浮かべながら、彼女へと向けて手を伸ばしつつ口を開く。
「やぁ!君は、君こそは、唯一ボクの有用性に気が付いてくれた、只一人ボクの本当の才能を見抜いてくれた!唯一無二のボクの女神様なんだね!
さぁ、早くそんな野蛮な男の影から離れて、ボクの手を取ってくれ!そうすれば、ボクと君とで、この世界だって手にして見せる!
だから、さぁ!早く、ソイツみたいな野蛮人の近くなんて離れて、ボクの方に来てボクの手を取るんだ!」
「………………え?ごめん、無理」
ソレからの熱烈ではあるものの一方的で唐突なアプローチに対してソレを向けられたサタニシスは、その端正な顔をひきつらせつつ、嫌悪の色を僅かに滲ませながら必死にシェイドの身体を盾にした状態にて、バッサリとソレからの提案を切り捨てる。
すると、その反応が信じられないモノであったのか、驚愕の表情一色に染め上げながら『有り得ない』と言葉を溢して行く。
「…………あ、有り得ない、有り得ない!?
ウソだろう!?有り得ないだろう!?
ボクの、『煽動』も『魅了』も無造作にはね除けて、ボクの誘いを断るだなんて、有り得ないだろうが!?
しかも、ボクが主人公のハズの世界で、そのヒロインのハズの相手がボクの誘いを断る!?それこそ、有り得ないハズの事だろうがよ!?
一体、何処の誰だ!?ボクが主人公なハズのストーリーを、ここまで滅茶苦茶に改悪してくれやがったのは!?」
「…………ねぇ、シェイド君?流石のお姉さんも、アレの態度には気持ち悪さを通り越して、もう一息に殺して上げた方が良い気がしてきたんだけど……」
「………………まぁ、このまま捕まえても、どうせ詳細不明な手段を使っての魔物の煽動と支配を行って人命を著しく危険に晒した、って事で、色々と吐かされた上で死刑が確定なんだろう。
流石に、もう聞けそうな事も、聞いて有用そうな事も無さそうだし、そろそろ殺してやるのが慈悲ってモノかね?」
比較的近くに居てしまった事により、元々被っていたフードを更に目深に被り直したソレが、延々とブツブツと呟いて行く言葉を耳にしてしまった二人。
それまで感じていた嫌悪感を、一応は表に出さない様にしていた努力をかなぐり捨てて気持ち悪さを全開にしながら彼へと訴えるサタニシスへと、いい加減呆れを隠そうと言う努力を辞め、確実にバカを見るモノへと変わった視線にてソレを眺めながら告げたシェイドであったが、ソレの手に魔力が集中して行く事を察知した為に、咄嗟に彼女の事を抱き上げてその場から飛び退いて行く。
案の定、ソレの手によって放たれた魔術が地面へと着弾し、周囲へと土煙を巻き起こして行く。
ソレを目眩ましとしての襲撃を厭ったシェイドが、その場にて待機しながら周囲を警戒していると、巨大な狼の様な魔物に跨がった状態で土煙の中から飛び出して来たソレが、街道脇の森の側へと着地してから彼の方へと振り返り、それまで目深に下ろしていたフードを取り払うと、その下に隠していた稀人の証である黒髪を白日の元に顕にしながら、彼の事を指差して宣言して行く。
「…………お前、シェイドとか言ったな?ボクは、覚えたぞ!
ボクが主人公で、全てが上手く行くハズのボクの物語を邪魔して、ボクからヒロインまで奪って行ったお前だけは、ボクがこの手で裁いてやる!絶対に、絶対にだ!!」
そう、自らの名前も名乗る事無く一方的に言い残したソレは、自らが跨がっていた狼によって、彼が制止する声を掛けるよりも先に驚く程に素早くその場から逃走して見せたのであった……。
******
「………………うん、今になって思い返して見ても、やっぱり意味不明だったわ。あいつ」
「…………うん、私も。
あの魔物の群れをけしかけたのもそうだったみたいだし、台詞を思い出してみると、多分あの時私に向けて何かしらのチョッカイを掛けて来ていたみたいなんだよねぇ~まぁ、半分反射で抵抗してたみたいだけど。
それでいて、あの言動でしょう?逆恨みしています!って全力で主張しているみたいなモノじゃない?」
「あぁ、やっぱり?
俺としても、多分逆恨みからの忘れた頃に再度の強襲、ってヤツを仕掛けて来ると思うんだ。多分だけど」
「リーダーさんは、流石にもう無いハズ、って判断しちゃってるみたいだから、私達だけでも警戒を続けておいた方が良いかもね~」
その言葉の通りに、これからの旅程の全てに於いて、警戒を解く事をせずに過ごして行く二人。
幾ら大規模な『事』が起きた直後であり、元々そこまで大規模な街道でも無かったが為にリーダーであるガウォルクや、護衛の冒険者達の気も緩む最中であったとしても、二人は周囲に対する警戒を続けて行く。
…………その結果、数日の旅程を以てしてこの隊商はクロスロードを無事に踏破する事に成功し、目的地であったレオルクスへと無事に入って行く事に成功するのであった……。
些か急ですが、次回に閑話を入れて今章はここまで、と言う事にさせて頂きますm(_ _)m




