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反逆無双の重力使い~『無能』と呼ばれて蔑まれた少年は、封じられた力を取り戻して『反逆者』へと至る~  作者: 久遠
一章・虐げられた少年は反逆者へと至る

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少年は耐え抜き、運命の場へと赴く

 


 結局、シェイドはどうにか無事……とは言い難いものの、大事には至る事は無かった。


 昼間とは言えそれなりの量の酒を呑んでいたカスグソが息切れを起こすと同時に、酒精が強く回り始めて彼への興味を失ったからだ。



 そうしてカスグソが離れた隙を突き、職員から嫌そうな顔をされながらどうにか手続きを終え、痛む身体を引き摺りながらどうにか帰宅する事に成功した、と言うのが現在までの流れだ。



 しかし、どうにか大事に至る前に帰還できたから、と言って彼の状態が良くなるハズも無く、また当然の様に同じく昼には学校を終えているハズのカテジナの姿も家には無かった為に、取り敢えず怪我の手当てを済ませてしまうシェイド。



 と言っても、魔力を巡らせる事で治癒能力を高める事が出来る彼にとって、手当てする、と言う程の事をする必要性は無い。


 精々が、未だに塞がっていない傷口からの出血を拭ったりだとか、軽く消毒をする程度の事しかやることは無い。何せ、放置していても勝手に塞がるのだから、包帯もガーゼも何も必要とはしないのだから。



 とは言え、流石にそれらも何の代償も無しに癒している、と言う事も無い為に、彼は腹を擦りながら保管庫の方へと移動し、朝に油紙を被せて残してあった分と、その他に幾つかの手早く口に出来るモノを手にしてリビングへと移動し、まるで貪る様にしてそれらを口にし始める。



 ……そう、彼の回復能力は、直接回復系統の魔術を行使する事を除けば、彼と同等の魔力量を誇る魔術師と比較してもソレを凌駕する程のモノを持っているのだが、その代償として使用すると彼の身体から『体力』の他にも、日々生きて行く上で欠かせなかったり、身体を作り上げるのに必要不可欠な『活力』とでも呼ぶべきモノを奪う事となってしまうのだ。


 こうして食事する事でそれは補う事は可能であるが、あまり頻繁に行使する事は生来の食が太くは無い彼にとっては中々に辛い事となるのは間違いないだろう。



 彼が何時まで経っても肉が着かず、体格が華奢なままである原因の一つとして、やはり日々受ける数多の攻撃と、ソレを癒そうとする事のサイクルが関係していないと見るのは、流石に無理が在ると言える。



 ……が、そんな事は今の彼には存在せず、ただひたすらに腹を満たして足りなくなった栄養を補充する為に手を動かして行くシェイド。



 普段であれば、まだ日も高い故に、こう言う昼時で学校が終わる時には、少しでも生活の足しにする為に、近辺の狩り場へと赴いて弱くて数が出る様な魔物を狩る事を日課としているシェイドであったが、既に学校とギルドにて心身共に虐げられる事で疲労の極致に至ってしまっていた為に、テーブルの上にカテジナへと宛てた、今日の夕食は作れない事、疲れたから先に寝る事、等を書いたメモを残すると、既に重たくなってしまっている足を引き摺って階段を登り、簡単に明日の課外授業の準備を済ませてからベッドへと倒れ込むと、ボロボロにされてしまった服を繕う処か寝間着に着替える事すらせずに、そのまま眠りに落ちてしまうのであった……。





 ******





 翌朝、無事に目を覚ましたシェイドは、日課をこなす為に普段と同じく木刀を手に……する事無く、父であるクライドが駆け出しの頃に使っていたモノであり、本人から彼へと譲り受けた形見の品で、普段彼が冒険者として活動する時に使用しているモノでもある長剣を手にして裏庭へと赴く。



 そして、一通り普段と同じ様に素振りから型の確認を済ませると、井戸の水を被って汗を流すと共に、身体の調子を一通り確認して行く。




「…………ほっ、良かった。

 取り敢えず、治ってるみたいだ……」




 昨日受けた暴行が後を引いておらず、怪我で授業に出られませんでした、なんて事で重要な単位を落とす事にはならなかった事に安堵の溜め息を漏らすと同時に胸を撫で下ろす。



 流石に、入学時に支払った入学金は両親からの遺産を持つ彼にとっても膨大なモノであり、かつ後見人たるラヴィレスからそれ以外の面での支援をあまり多く受けられていない彼からすれば、どうにかしてガイフィールド学校を卒業して良い条件でパーティーへと加入する事が必要条件だと言えるだろう。


 もちろん、そうやって一流のパーティーに勧誘される事で、彼に劣悪な環境を強いている周囲を見返してやりたい、と言う思いが心の底まで覗いたとしても欠片も存在して無い、とは流石に言えないだろうが。



 そうして自らの調子を確認したシェイドは、何時もの通りの時間になった事を太陽の位置で確認すると、身体を拭ってから家へと入り朝食を用意して行く。



 ついつい普段の通りに二人分用意しようとして、昨日のカテジナからの物言いと、現在時刻との兼ね合いとを考え、更に今日は恐らくは昼に帰って来る事は出来ないだろう、と判断して、罪悪感と普段の動作との違和感に苛まれながらも、自らの分のみを作り上げ、手早く口にして腹に納め、流れで食器の後片付けも済ませてしまう。



 恐らくはそろそろ起き出して来ているであろう妹に対して、今度は先に出ている事を記したメモを残し、普段から使っている装備一式を纏ってから家を出ると、課外授業の集合場所へと出発する。



 普段の授業であれば、一旦学校に集合してから現地に、と言う事も多いのだが、今回の様な完全に学校の敷地外であり、かつ冒険者として依頼を受けた場合に実際に行う必要が在るであろう行程としての『移動』が含まれている場合、指定された現地にて集合する事になるのだ。


 今回、学校側から指定されている集合場所は、王都であるカートゥを出て少し進んだ近隣の森であり、ここの支部に所属して活動する冒険者にとっては最初に経験する事になる、魔物が生息する場所として有名(?)であり、彼が冒険者として活動する時にも訪れる場所でもある。



 とは言え、授業として学生を入らせる様な場所であり、かつ王都であるカートゥの近隣であると言う事から、内部は定期的に魔物の掃討が行われていると言う事もあり、大した魔物とは遭遇する事は無いだろう。


 流石に人手の入らない森の奥地にまで踏み入れば話は別だろうが、彼らが課外授業にて入る様な浅い部分では雑魚魔物の代名詞である角兎(角の生えた野兎。大きさは変わらないが多少気性が荒くなっている為に襲い掛かってくる)やゴブリン(子供程度の大きさの緑色の肌をした小鬼。余程油断していない限りは武装していれば簡単に倒せる)程度しか出現しないし、変異種や上位種は滅多な事では出現しないので、万が一の事も起こる事は無い、と言われている。



 ……まぁ、そう言う場所だから、と油断して入って行き、結果怪我をしたり命を落としたり、と言った事例が皆無では無い為に、油断は出来ないのだけれど。



 そんな事を思い返しながらカートゥの門を潜って歩いていると、目的地である森へと到着する。


 一応、何処からでも入れはするが、王都の住民や冒険者達が踏み入る際に良く使用する事で踏み固められ、些か獣道染みてはいるものの結果的に道となっている場所の入り口が集合場所として指定されていたので、そちらへと足を向けて行く。



 流石に、未だ集合時刻として指定された時間では無かった為に、人の集まりは疎らではあったが、既に到着していたらしい幼馴染み二人の姿を発見したシェイドはそちらへと向かって足を進めて行く。




「おはよう、二人とも」



「あら、おはようございます。シェイド君」



「……おはよう」



「二人もこの課外授業に参加していたんだ?

 僕、知らなかったよ」



「えぇ、そうなりますね。

 と言っても、私は既に去年の授業で単位を得ているので、本来ならば不参加でも良かったのですけどね?」



「……えぇ!?じゃあ、なんで?」



「……ふふふっ!それは、もちろん。

 シェイド君の格好良い処を見たかったからですよ?

 ……まぁ、素直になれない誰かさんがシェイド君を心配して、って理由も、無くは無いですけど、ね……?」



「……ちょっと!?あんまり適当な事を、勝手に言い触らさないでよ!?

 アナタも、勘違いしないで欲しいんだけど!?」



「……あら?でも、単位の為に魔物は倒さなきゃならない自分に代わって、シェイド君が危なくなったら守って上げて欲しい、と私に言って来たのは誰だったかしら~?」



「……は、はぁ!?ワタシが、何時、そんな事を、言ったのよ!?

 大体、ワタシがこいつ程度にそんな心配するハズが無いじゃないの!?

 あんまり適当な事言わないで貰えないかしら!?」



「……ははっ、そうだよリア姉さん。

 昔の縁で一緒に居てくれてるだけの彼女が、僕の事なんて心配するハズが無いの位は僕にだって分かるからね?

 本人もこうして否定してるんだから、あんまりそうやってからかって上げない方が良いと思うよ?」




 本心からそう信じている、と言った様子の彼の言葉に、思わず固まる二人。



 片や、自身の言葉が彼には一切通じていない、と言う事に衝撃を受けて。


 片や、これまでの行動や言葉が『そのまま』の形で彼に受け止められている、と言う事を悟ってしまって。



 咄嗟に、それは違う!?と説明しようとする二人であったが、既に参加する予定の生徒達の殆んどが集合し、引率の教師までもが到着していた事により、普段は優等生として通っている二人は会話を続ける事が出来ずにモヤモヤとしたモノを抱えたままの状態にて、教師が口にしている説明を聞き流す事となってしまう。




 ……どうせ、始まれば自由に合流出来るのだし、その時に誤解を解けば大丈夫だよね……?




 そう、自らに言い聞かせたイザベラとナタリアの二人は、引率の教師に促されるままに森へと足を踏み入れ、今日も自らをアピールするべく積極的に話し掛けて来ているクラウン生徒会長をあしらつつ、偶々見掛けたカテジナと合流して会話しながら、魔物を狩って行く。



 ……どうせ、また何時でも話し合える。


 彼と自分達とならば、簡単に解り合える……。



 そんな、()()()()()()()()()()()()()()()、この時ちゃんと話し合っておけば良かった、と近い未来に後悔する事になるとも知らずに……。




主人公覚醒まで、後僅か……



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