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反逆無双の重力使い~『無能』と呼ばれて蔑まれた少年は、封じられた力を取り戻して『反逆者』へと至る~  作者: 久遠
二章・力を手にした反逆者は復讐を開始する

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反逆者は学舎へと向かい、その道中で幼馴染みと遭遇する

 


 ギルドでの換金を終えたシェイドは、道中で二三買い物をしながら家路を進む。



 今の今まで、極貧、とまでは行かないまでも、ソレに準ずるであろう程度には余裕の無い生活を余儀無くされて来た為に、これまでは欲していても眺める事しか出来なかったモノを何点か、懐に入って来た資金に飽かせて購入してみた、と言う訳だ。



 流石に、そんな事ばかりしていては早晩使い果たしてしまうだろう事は明白なのだが、だからと言って節約する、と言う思考にならない程度には、彼の懷は現在とても温かくなっていた。




「…………いや、しかし。まさか、アレを売り捌くだけで、ここまでの額になるとはな……。

 金貨で二百枚って言ったら、中古で糞狭いだろうが家も買えなくは無い額だぞ……?しかもコレ、一番高額になる魔石は売らずに取って置いてあるにも関わらず、だぞ?一緒に売ったらどんな値が付いてたんだよ……?

 ……あ、でも、あそこの入学金とかもコレくらいはしたっけか。そんな覚えが在る気がするわ」




 背後で店員が発する機嫌良さそうな声に見送られながら、そう独り溢すシェイド。


 これまで、扱った事は皆無、とは言わないまでも、それでも長くは無い人生でも数度しか無い程の出来事に、呆れたような興奮した様な感情の変化が僅ながらに滲み出していた。



 そう言う処は、新しい玩具を手にした子供の様でもあり、年相応な振る舞いにも見えるが、本人としては『これまで出来なかったことをやっているだけ』と言った風にしか考えていないので、あまりそう言った実感は無いかも知れないが。



 そうして通りを進みつつ、買ったモノを『道具袋(アイテムバッグ)』にしまい込んだり、歩きながら使い方を覚えるべく弄り回していると、中間とは言え目的地であった自宅へと到着する。



 既に売却を予定しているとは言え、まだ当分の間の拠点にはする予定である為に『帰宅』と表現するのは間違ってはいないだろう、と下らない事を考えつつ玄関をくぐり自室である二階を目指す。



 その途中に、一応確認の為にリビングの方を覗いてみたが、当然の様に元妹(カテジナ)の姿はそこには無く、無人の状態となっていた。



 シェイドとしてはそちらの方が都合が良かった為に、特に詮索する事も無く自室へと戻り、普段使っている鞄を手に取ると、時刻を刻む魔道具へとチラリと視線を送って時間を確認し、そろそろ家を出ていた方が良い、との判断から一階に降りて玄関から外へと出て行く。



 多少早いながらも、まぁ、別にもう誰かと約束している訳でも無いのだし、と思いながら玄関を潜ると、そこには普段と変わらずに外にて彼のことを待っていた、と思われる影が二つ。




「…………あっ……シ、シェイド……」



「…………こんにちは、シェイド君。

 ふふっ。昨日のアレからたった一日しか経っていないのに、随分と大きくなったみたいですね……?」




 ……当然の様に、そこに居たのは彼の幼馴染み……であったイザベラとナタリアの二人。



 片や、普段は高圧的な態度を崩す事はせず、自らの言いたいことだけを一方的に捲し立てて来るばかりであったハズなのに、何故な今日は大人しくしているイザベラ。


 片や、こちらはこちらで普段通りの態度を取っていると見せつつ、普段であれば『弟』か『頼りない年下』としてしか接して来なかったハズなのに、何故か『男』や『異性』に対して向ける様な視線を投げ掛けて来ているナタリア。



 以前と同じく、ここに居るのが当然、と言わんばかりの態度でありながら、普段のそれとは異なる様子に眉を潜めるシェイドであったが、その次の瞬間には




「…………まぁ、俺には関係無いか……」




 との呟きを溢して関心を打ち切る。



 特に感慨を向ける事もせず、僅かな呟きを溢しただけで自分達かは関心を外した彼の姿に動揺する二人であったが、シェイドが玄関に鍵を掛けて自分達の方へと歩き出した事で気を取り直す。




「…………そ、その……昨日の事なんだけど……それに、これまでの事だとか……色々、話したくて……」



「私も、昨日の詳しい話を聞きたいのだけど、良いかしら?

 流石に、シェイド君が理由も無くあんな事をするとは思っていないけど、それでも一方的に決め付ける事は出来なくて……」



「………………どうでも良いけど、邪魔。

 さっさと、そこ退け」



「「………………え……?」」




 そうして彼へと言葉を投げ掛けるが、彼から返って来たのは、二人が予想し待ち望んでいた、優しく『分かった、話を聞いてあげるよ』と言う肯定の言葉でも、落ち着いた『そうだね。詳しく説明しようか』と言う承諾の言葉でも無く、冷たく、よそよそしく、他人行儀で拒絶的な、『邪魔だ』と言う言葉のみであった。



 あまりにも、自分達の予想を大きく外れたその言動に、ショックの余り言葉を失って固まってしまうイザベラとナタリア。


 そんな二人の様子に、一体どんな都合の良い展開を妄想していたのやら、と呆れの感情を隠そうともせずに蔑みの視線を向けるシェイドであったが、何時までも二人が再起動する様子を見せ無かった為に、溜め息を一つ吐いてから通路を塞ぐ形で立ち尽くしていた二人の身体を押し退けると、そのまま二人を放置して一人スタスタと歩き始めてしまう。



 シェイドからすれば、既に関係性の断絶を突き付けた相手であったし、何よりこれまで受けてきた扱いからしてもう行動を共にしたいとはとても思えない相手でも在った為に当然の扱いであった。


 ……のだが、どうやら二人からすればそうでは無かったらしく、彼が暫く道を進んでから気を取り戻したのか、慌てて追い掛けて来たらしい気配が迫ると同時に再び声を掛けられる。




「……ちょ、ちょっと!さっきの何よ!?

 どうでも良い、ってどう言う事よ!?

 良いから、さっさと止まって話を聞きなさいよ!?」



「待って!私の話を聞いて!

 何も、私はシェイド君が一方的にあんな事をした、だなんて思ってはいません!でも、彼と同じ貴族家として、疑いを掛けられているシェイド君から詳しい話を聞かないとならないの!

 だから、お願い!悪いようにはしないから、ちゃんと協力して!?」




 先程とは異なり、普段の通りに不愉快で高圧的な雰囲気で一方的に言葉を投げ付けて来るイザベラと、何故か必死そうな雰囲気を漂わせながらも、言外に『どうせお前がやらかしたんだろう?』と言う既に結論有りきで問い詰める、と言う予定が透けて見えている様であった。




 …………昔は、二人ともこうじゃ無かったんだがなぁ……




 胸中にて、郷愁ともつかない切なさと痛みと寂寥感を味わいながらそう呟いたシェイドは、微かに残されていた幼馴染みとしての親愛の情を己の内側にて焼き捨てると、往来のど真ん中にて突如として立ち止まり、背後へと振り返る。



 するとそこには、何故か焦りを滲ませて必死そうな形相を浮かべていたイザベラと、自らが口にした事がどう受け取られるのかを悟ったのか顔色を青ざめさせているナタリアの両名の姿が在った。


 そんな二人に対してシェイドは、引導を渡すつもりで再び口を開く。




「まずは、イザベラ。

 テメェ、今更何抜かしてやがるんだ?あ?

 昨日の事?そんなもん、今更わざわざ説明してやらなきゃならない事柄も、説明されなきゃならない事も無いハズだが?

 それに、今までの事?色々話したい?それこそ、今更だ。

 テメェが散々やらかしてくれやがったお陰で、俺がどれだけ迷惑して、どれだけ被害を被ったか、本当に理解してやがるのか?あぁ?」



「…………ねぇ、待って……待ってよ……なんで……なんで、呼んでくれないの……?

 なんで、前みたいに、ベラって、呼んでくれないの……?

 それに……コレだけ言ってる、のに……なんで、ワタシの言う事、聞いてくれない、の……?ワタシ、本当に、アナタに言いたい事が……っ!」



「……あ?テメェ、昨日も今日も、俺の話聞いてやがったのか?

 テメェとは、もうそう言う関係じゃ無くなったからに決まってんだろうがよ。そんな事も、一々説明されなきゃ理解出来やしねぇのか?あぁ?」



「………………そん、な……ウソ……なんで……」




 全くもって自らの言葉に耳を傾ける姿勢を見せないシェイドの姿に、心的にも大きな断絶が存在している事を漸く悟るイザベラ。


 大きすぎる程に大きなその断絶をどうにかしない限り、自らの声はもう彼に届く事は無いのだ、と言う事実を直視してしまい、自らの行いとその難易度に対して絶望してその場に立ち尽くしてしまう。




「次に、アンタだよ、ナタリア。

 アンタ、どうせ俺の事なんざ信じちゃいねぇんだろ?取り敢えず、今回の件の責任を押し付けられる先をどうにか作り出したかったから、都合良く関与していた俺に押し付ければそれで良い、とか思ってたんだろう?

 なら、そんな思惑を持っていやがるアンタと話す事なんて、俺には欠片も無いなんて事は、嫌でも分からないのか?

 …………まぁ、分からないから、こうしていやがるんだろうけど、な……」



「…………そん、な……私は、君を守りたいから、話を聞かせて欲しいだけ、なのに……」



「……あ?守る?この期に及んで、守る、だと?

 ……ハッ!何を言うかと思えば『守る』ぅ?テメェが、一度でも、俺の事を、守った試しが、今の今まで、在ったのかよ?

 ギルドでも、学校でも、街中でも、そこのイザベラからでも!テメェは!一度でも!俺の事を守った事が在ったかよ!!」



「…………っ!」




 激昂に任せてのシェイドからの言葉の奔流に、顔を青くしながら言葉を失うナタリア。


 自らの言葉選びを誤ったのだ、と言う事を悟るも、同時に事態は既に手遅れに近いのだ、と言う事も察知してしまう。



 それでも、とどうにか言い募ろうとするナタリアと、その姿勢に触発されたのか、どうにか気を取り直して誤解を解こうとするイザベラ。



 …………しかし、既に関係性は終わっている、と認識していたシェイドからすれば、二人の姿勢は不自然さを隠せないモノであった為に、最悪の形で勘違いされ、彼の中でとある結論が叩き出されてしまう。





「……だから!私は貴方を守りたいだけなの!お願い、信じて!」



「ワタシも、ワタシもアナタに言いたい事が在るの!だから、だから!だから、お願い!ワタシの話を聞いて!!」




「…………ははぁん、成る程成る程。そう言う事か。

 お前ら、早速あの野郎にでも抱かれたか?随分と手早い事だな?」




「「………………は……?」」




「どうせ、アレだろう?

 俺の事を上手く言いくるめたら、もう一度抱いてやる、とか言われてるんだろう?そうでも無いと、男として見た事も無い、と公言して憚らなかったお前らが、俺相手にそこまで必死になるハズも無いモノな?

 悪いが、そのお遊びはここまでだ。俺は、もう、お前らに、関わるつもりは、無い。

 あの糞野郎に伝えておけよ。次、下らねぇ事仕掛けて来やがったら、今度こそ確実に殺す、ってよ」



「……ま、まって……!?」



「そんな、誤解よ……!?」




 結論を出してその場を後にするシェイドと、その背中を必死に引き留めようとする二人。


 しかし、三人の関係性に入ってしまったひび割れは、これまでの不満、と言う楔によって確実に大きく広げられてしまい、最早修復は難しい程に大きな割れ目が出来てしまっていたのであった……。




展開が強引で話を聞いてない?


細かい事は良いんだよぉ!?

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― 新着の感想 ―
いいねいいね!蠱毒のツボは煮えてゆく!
[一言] 先生マジでサイコーだよ 読んでて感情のジェットコースターだよ
[一言] ホント主人公の言うとおりだよな。これまで一度も主人公の事を庇おうとも助けようともしなかったのに今になって「守る」なんて言われても信用なんか出来るわけがないじゃん。結局コイツら幼馴染2人も主人…
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