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反逆無双の重力使い~『無能』と呼ばれて蔑まれた少年は、封じられた力を取り戻して『反逆者』へと至る~  作者: 久遠
十一章・反逆者は『龍』と対峙する

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反逆者は魔族の軍勢に割り込みを掛けられる

…………が、割り込まれる。

 


 …………戦意を昂らせたシェイドとミズガルドオルムが、双方共に一歩前へと踏み出し、両者の間に生まれていた距離を詰める。


 が、実の処としては、この行為にそこまで重大な意味がある、と言う訳では無い。



 本来ならば、互いが互いに間合いの中へと踏み入ったり、逆に相手の間合いに入らずに自らの間合いの中にのみ入れてしまおう、と言う駆け引きの為に必要であり、その上で必要不可欠な行為でもあるのだが、この二人(一人と一頭?)にとっては実は不要な行為でもある。



 何せ、元々の属性としては『闇』であるシェイドは当然の事としても、彼には未だに披露していないがミズガルドオルムの属性も『闇』である。


 これは、双方共に空間支配の権能を持つ『闇』属性の使い手である事を示すと同時に、互いが互いにその気になれば()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と言う事を示しているのだ。



 シェイドは目にしてはいないが、実際問題として先の戦いに於いて彼我の距離を無視した攻撃を小手調べとして繰り出してシモニワを下しているし、シェイドも今まで実際に行ってはいないもののその気になれば出来ない事では無い。


 寧ろ、ソレが有効打となりうる、と判断した場合に於いて、ソレを一切の容赦無く行う事になるのは目に見えているだろう。



 故に、互いの実力を把握している訳でも、属性を把握している訳でも無い(ミズガルドオルム側はズィーマの身体を張った調査(物理)によって一応は把握しているが)為に、敢えて一方的にリスクのみを増やす事になる『距離を詰める』と言う行為をする必要性は無いのだが、そこはこの二名の性分である


『強者との戦いは楽しむべき』


 と言う戦闘狂染みた考えに従う行動であり、互いにそこに『理』は存在していないのだ。



 そんな、神の視座から全てを見通せるモノがいたならば、まず間違い無く


『こいつらバカなんじゃないのか?』


 と突っ込みを入れるであろう戦闘が始まろうとしていた正にその時!



 突如としてシェイドとミズガルドオルムの両名が、同時に同じ方向へと視線を切ってしまう事となる。




「…………なぁ、あんた。

 コレ、あんたの仕込みか?

 だとしたら、随分と下らない事してくれてるみたいだな?てっきり、こう言う事はしない手合だと思ってたんだが……?」



『…………たわけ。

 折角、儂も未だに見た事も無い強者(つわもの)との闘争が愉しめるか、と期待しておったのだぞ?

 ソレを、不粋な手出しにて水を差させるハズが無かろうよ。アレは、欲を出しての独断専行、と言うヤツであろうな』




 双方の向けた視線の先には、遠目にも魔族のソレである、と言う事が窺える多種多様な軍勢が一つ。



 その『総数』と言う意味合いに於いては大した事は無さそうにも見受けられるが、その全てが身体の何処かに紫色を宿しており、かつ戦意を昂らせながら気焔を挙げている、と言えば決して無視して良い程度の勢力であるとも戦力であるとも言えないだろう。


 …………寧ろ、シェイドは承知してはいない事柄ではあるが、ミズガルドオルムが戦場全域をその吐息によって焼き払った後、壊滅状態へと追い込まれたアルカンシェル王国側の軍勢とは異なり、無事に残されていた魔族側の勢力が、これまでの間コレ幸いとばかりに攻めて来なかった方がおかしいとすら言えるのだから、仕方の無い事ではある。



 が、ソレはあくまでも『ミズガルドオルムが興味を示す様な相手が居なかった場合』かつ『本当に人間側の戦力が壊滅していた場合』に対して有効であっただろう手法である。


 今回の様に、そのどちらにも当てはまらない状況に於いて取ってしまう選択肢としては、寧ろ最悪手に近いモノだと言っても良いだろう。



 それ故に、と言う訳でも無いのだろうが、どうにか二人を止めれないだろうか、と表面上は平静を装いながらズィーマは思考する。


 流石に、表面上だけ見るのであれば、この場は進軍の絶好の機会であり、かつ何故か僅かに生き残ってしまっている人間側の戦力を根絶するまたとない好機である、と言う事は彼も理解しているし、今自身が目の当たりにしている事を遠くから察知しろ、と言うのも酷な話である、と言う事も理解しているつもりだ。



 しかし、だからと言って魔王陛下から預かりし同胞達の軍勢を、絶対の死地へと誘おうとしている指揮官(一応はズィーマやミズガルドオルムと同格の幹部級)の無茶振りによる全滅は避けなくてはならない、と言う結論に至ったズィーマは、どうにかしてソレ以上こちらに近付いては来るな、と試みようとするが、ソレに先んじる形にてシェイドがその身から魔力の迸りを解放してしまう。




「…………アレだけ敵意剥き出しでこっちに向かって突っ込んで来る、って事は、そう言う事だって認識しても構わないんだよな?

 なら、別段蹴散らしても構わないよな?向こうが先に手を出した様なモノなんだから、文句は受け付けないぞ?」



『儂は別段構わぬよ。

 極上の闘争が愉しめるかと期待していた矢先にこの水差し、些か不快で不愉快故な。

 後に支障が出ぬのであれば、存分に対応するが良いさ。それが出来ぬ程に、お主は弱卒ではあるまいし、よもやその程度で力尽きる程に虚弱でもあるまいよ?』



「はっ、当然。

 寧ろ、準備運動にもなるかどうか怪しい位だね」



『ふんっ、若造が抜かしおるわ』



「…………最早、止められはせぬ様子であるし、向こうも止まらぬ様子であるから諦めるが、一つだけ良いだろうか?」



「あん?」



「…………可能な限りで構わぬ故、出来る限り命だけは奪わない様にしては貰えないだろうか?

 無茶を言っているのは、重々承知している。が、貴殿に取って不可能な事でも無いであろう?」



「いや、まぁ、やって出来ない事は無いが、そこまでしてやらなきゃならない理由は何だ?

 お前さんをあの時生かして帰してやったのは、個人的に好感度が在ったから、って事は否定しないが、本命としては魔王とやらに『敵対する意思は無い』って伝えさせる目的が在ったからだぞ?

 そう言う目的の類いも無いのだから、出来る事でもしてやらなきゃならない理由にはならないんだが?」



「…………そうであっても、だ。

 未だ確たる事は某の口から告げる事は叶わぬが、ここで我らが同胞達を鏖殺する事は貴殿の不利益に()()()()とだけは告げさせて貰おう。

 故に、頼む。どうか、不可抗力以外での殺しは控える様に願いたい。どうか、どうか……」



「…………とか言ってるけど、あんたからはどうなんだ?

 殺っちまっても良いのか、それともそうじゃない方が良いのか。出来れば、ハッキリしておいて欲しいんだがね?」



『儂としては、どちらでも構わぬよ。

 儂が復讐したかった相手である忌み名の持ち主である『勇者』は、不本意ながら既に下しておるが故な。後は、ソレに止めを刺すがのみ、と言う処をお主が止めてくれておるのであろうよ?

 それに、この程度で易々と絶命に至る程度であるのならば、ソレまでであった、と言う事であろう。故に、儂としてはどちらでも構わぬ』



「ミズガルド翁!?」



『…………が、まぁ、一つだけ年寄りのお節介として告げておけば、鏖殺するのだけは止めておいた方が良かろうのぅ。

 その方が、心証としてはよろしくは無いハズであるが故な』



「…………はんっ、そうかい。

 あんたらが言ってる『機会』だとか『心証を損ねる』だとかは正直意味が分からんが、それでも忠告だけは受け入れてやらんでも無いさ。

 精々、死なない様に祈っておく事だな」




 二人からの言葉を鼻で嗤いながら、視線を迫り来る軍勢へと向けるシェイド。


 その周囲には、既にそちらから放たれていた魔法や、アルカンシェル王国側の勢力から奪取した弓矢の類いの飛び道具が放たれており、単独の相手である彼を目標としているには些か過剰に過ぎる程の火力が差し向けられていた。



 ソレは、何を以てして『そうしなくてはならない』『そうする事が最善である』と言う結論を出させる切っ掛けとなったのかは定かでは無い。


 ミズガルドオルムやズィーマと言った彼ら魔族の上級幹部と、特に苦しむ事も戸惑う事も無いままに普通の通りに言葉を交わしていた事から、それ相応以上の実力の持ち主である、と判断された可能性は否定出来ないが、大方彼の背後に(勇者シモニワ)位置する者達(とその仲間達)諸ともに面での攻撃を加えてしまい、どちらかは確実に、あわよくばどちらも倒してしまおうか、と言った狙いが大本となっての行動なのだろう。



 本来ならば、この上無い程に有用な作戦である、と言えただろう。


 …………尤も、ソレは『シェイドがシモニワ達の仲間である』『シェイドはシモニワ達の事を守らなくてはならない』と言う条件が大前提となっての事であり、一人を除いて『守らなくてはならない』とは認識していない為に、実の処としては盛大に勘違いをかましているだけであったりもするのはここだけの話。



 とは言え、そんな事情を欠片も知らない魔族達は、自分達を率いる幹部級魔族の指示の下に遠距離攻撃による弾幕を張りながら、その上で近接に特化しているのであろう魔族の部隊を進ませていた。


 恐らくは、同時に事態を進める事で圧力を掛けつつ、戦力の展開を終わらせてしまおうとしているのだろうが、たったの数名しか残っていない相手に対して『対軍勢』用の兵士の動かし方をする意味が分からず、思わずシェイドら苦笑いを溢しながら首を傾げることになってしまう。



 大方、幹部級となってもまだ日が浅く、こう言った場面の経験が無いために教科書通りにしか指示が出せないのか、それとも最初から大した相手でもない、と思い込んでいるのだろうが、ばか正直にソレに付き合ってやる程に暇をしていないし、そもそも相手方の事情を汲んでやらなければならない理由も彼には特に無い為に、取り敢えず纏めて潰すか、と自らの体内にて魔力を高め、それと同時に周囲へと魔法陣を展開して行くのであった……。




果たして、主人公が軍勢に対して打つ手とは?

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