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反逆無双の重力使い~『無能』と呼ばれて蔑まれた少年は、封じられた力を取り戻して『反逆者』へと至る~  作者: 久遠
九章・『反逆者』は『監視者』との関係性を改める

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反逆者は監視者との約束を果たす

と言う訳で、皆さんお待ちかねの砂糖マシマシな進展回の始まりです


ブラックコーヒーの準備はよろしいでしょうかね?(既に指先が砂糖と化しつつある作者)

 


 シェイドとサタニシスの二人がアルベリヒにて初めて大きな街である『ブルムンド』と遭遇し、ソコで依頼を受けて『竜』を討伐し、その結果として大金を手にしながら最後の最後で衝撃的な情報を与えられる事となってしまった翌日。



 未だに『朝』と呼んで差し支えは無いであろう時間帯であったが、彼の姿は既に冒険者ギルドの程近くの場所へと移動していた。



 …………別段、彼が偶々その周辺にて宿を取っていた、と言う訳でも、これから勤勉な冒険者として活動に専念しようとしている、と言う訳では無い。


 ソレは、彼が普段使っている装備品の類いを身に付ける事もせず、辛うじて護身用と思わしき短剣を腰に差しているだけであり、靴さえも普段履いていた頑丈さ一徹なモノから街歩き用の洒落たモノを使っている事からも、容易に想像する事が出来るだろう。



 そんな、普段の様相とは大分異なった状態にて彼が手持ち無沙汰な状態にて佇んでいるのか、と言えば答えは至極簡単な事。


 彼の相棒であり、かつ魔族側から送り込まれた監視者でもあるサタニシスとの約束を果たす為、である。



 彼女と彼は、昨日の依頼をこなす直前にとある約束を交わしていた。


 ソレは、依頼がキチンと終わったのであれば、その後で良ければ一緒に出掛けよう、と言う約束であったのだ。



  …………とは言え、前日とは言えあんな報せを受け取ったのであれば、普通はそんな約束なんて放り出すか、もしくは後日に回す、と予定をずらした上で、取るモノも取らずに急いで生国へと駆け付け、その危機を救わんとするモノでは無いのか?と思われたかも知れない。



 何せ、魔族との全面戦争か、もしくはその前哨戦へと突入しようとしているのだ。


 本来ならば即座に帰還できる手段と、確実に戦況を左右できるだけの実力を持っているのだから、我が儘を言わずに戻って戦線へと加わるのが妥当、と言うモノだと言えるだろう。



 …………しかし、彼はその選択をしなかった。


 それどころか、彼としては最初からその選択肢その物を排除して思考していたのだ。



 何故なら、彼としては生国に対してあまり良い感情を抱いてはいないからだ。


 いや、寧ろ正確に表現するのであれば『嫌悪している』と言える程だ。



 何せ、彼がそれまでの人生の殆どを虐げられ、罵声を浴びながら辛酸を舐める羽目になる原因である国是を掲げ、ソレを良しとしてきた国であるのだ。


 …………なれば、彼自身がこうして力を取り戻して好き勝手出来る様になったとしても、それらの苦痛に満ちた記憶が薄れるハズも無く、同様にその心証が良くなる、なんて事が在るハズも無い。



 故に、彼としてはこのまま攻め滅ぼされてしまうのであれば、さっさと滅んでしまえば良い、と言う位には思っているし割り切ってもいる。


 現に、冒険者ギルドを経由して指名依頼が入り、至急帰国して戦線へと加われ、と言う報せが来ている様子であったが、そんなモノは知った事か!と完全に無視を決め込んでいる程だ。



 これで、彼が参戦しない事に焦れてギルドの上層部に働きかけて彼に圧力を掛ける、みたいな事でもアルカンシェル王国がし始めれば、ソレを理由としてサタニシスを通じて魔族側から参戦し、かつての祖国を蹂躙する事に躊躇いは感じてはいないが、流石にそうはならないだろうな、とも何処かで思っていたりもしている。


 …………とは言え、一応彼としても情が残る相手が全く居ない、と言う事でも無い為に、可能性として『参戦する』と言う事態が有り得ない、とは断言出来ないのが悲しい処ではあったりもするのだが。



 そうこうして、一人で待ち合わせ場所にて佇んでいると、彼の背後からここ最近ではすっかり馴染みとなった気配と、覚えの在るリズムで石畳を叩いて奏でられる足音が聞こえて来た。



 意外かも知れないが、人は例え靴が代わろうと歩いている地面が変わろうと、大体同じ様なリズムを刻んで地面を歩いている。


 その為に、ある程度慣れ親しんだ間柄であり、それなりに行動を共にした相手であれば、足音の大きさとそのリズムで『その相手なのか』を判別する事が可能なのだ。



 …………まぁ、とは言え、ソレをしようとすれば、普段からしてその『特定の相手』の歩くリズムだとか、聞こえてくる足音の大きさから諸々の重量だとかを意識する、と言う若干変態的か、もしくは『その相手を信頼していない』とも取れる心理による行動を取る必要性に駆られる羽目になるので、あまりお薦めは出来ないだろうが。


 なお、因みに彼の場合は出会いが出会いであった為に、後者の色合いが強かった、と言うのはここだけの話であり、彼の名誉の為に明言しておく。




「…………おはよう、シェイド君!

 ごめんね?待たせちゃったみたいで」



「……いや、待ったって言ってもそこまでじゃ、無い……か、ら…………?」




 一応は分かってはいながらも、それでも声を掛けられるなり肩を叩かれるなり何なりとするまでは、と思っていた彼の耳を、聞きなれた彼女の声が叩く。


 ソレが、わざわざ同じ宿を取っておきながら、それでも『そうした方がらしくない?』と言う要望に従って行っていた待ち合わせ相手のモノである、と言う事を気配と合わせて確認したシェイドが返事を口にしながら振り返ったのだが、その先に佇んでいた彼女の姿を目の当たりにして思わず言葉を失う事となってしまう。



 …………そう、声に釣られる形で振り返ったその先に立っていたのは、普段とは大幅に装いを変えて可憐に変身を遂げたサタニシスその人であったからだ。



 こう言ってはアレだが、普段からして彼女は比較的露出の大きな服装を好んで選んでいた。


 流石に旅路の間や依頼に赴く時は別で、長袖で頑丈な布地のモノを着用しており基本的に手足は覆われていたのだが、そうでない時はタンクトップやホットパンツを良く選んでいて、上着を羽織っていたとしても肌色の面積は比較的大きかった、と言えるだろう。



 だが、今回の装いは、ソコから大きく外れていた。



 …………確かに、肌の露出の面積、と言う意味合いでは、普段とあまり違いは無いのかも知れない。


 裾の長いワンピースに鍔の広い帽子と言う出で立ちである為に、足元は完全に覆われているが、普段はあまり晒される事の無い胸元から肩回りに掛けてや、珍しく髪を纏めている為に覗いているうなじ等、と言った部分で考えるのであれば、ほぼ同等だ、と言えていた。



 しかし、普段のソレとは服装が異なるからか、いつも見せている活発な様子は鳴りを潜めて清楚な感じに、良くも悪くも明け透けであった態度は恥じらいと共に乙女心を前面へと押し出して来た影響か『お淑やか』と言っても過言では無いであろう様子を醸し出していた。



 おまけに、普段の装いでは比較的地味目な原色モノばかりを選んでいたサタニシスが、何処ぞのお嬢様が着る様な真っ白でシミ一つ無い様な清純さを全開にした様なモノを着て、柔らかな微笑みを浮かべながら立っていたのだ。


 流石のシェイドも、ソコに込められた意味合いや想いを否定する程に冷血漢であった訳でも無く、またそれらの真意を見抜けない程に鈍感では無かった。



 …………そして、ソレは彼女が抱いてくれているであろう想いが、自らの抱いているソレと同質なモノであるのだろう、と言う予想と確信を、彼に抱かせるには十二分な証拠である、と言えるだろう。



 そうして、言葉も無く彼女の事を見詰めるのみしか出来ていなかったシェイドに対してサタニシスは、普段の天真爛漫な様子から態度を一変させ、僅かに頬を赤らめつつ後ろ手に組んだ手をモジモジとさせながら、彼へと向けて問い掛ける。




「…………その、どう、かな?

 普段はあんまりこう言うの着ないんだけど、どんな形であれ今日はシェイド君とのお出掛けなんだからちょっと気合いを入れて見たんだけど、変じゃない……かな?」




 そう、まるで今にも



『変な格好してるな?

 全然似合って無いけど?』



 と罵倒される事を予想しつつも、そうはなって欲しくは無い、と言わんばかりに不安に揺れている瞳を向けられたシェイドは、思わず




「え!?

 あ、いや、不安にさせたのなら、済まない。

 ただ、その…………す、凄く似合っていて、とても……綺麗だったから、その……見惚れてて、言葉が出て来なくって……」




 と、慌ててつっかえつっかえになりながら、どうにか彼女へと向けて言葉を返して行く。



 …………これまでの人生で、異性と親しくなる、だなんて場面を彼は経験して来なかった。


 幼馴染み達は確かに『親しい異性』ではあったものの、彼が関係の進展を期待してアプローチを掛けようとした時には既に関係性は拗れ始めていたし、他の異性に関しては彼が周囲にどの様に扱われていたのか、を考えれば自ずと答えは出て来る事になる、出て来てしまう事になるのは、言わずとも理解して貰えるだろう。



 それ故に、女慣れしているが為に考える事も無く流れる様に向けられる世辞や誉め言葉では無く、辿々しいが為に彼が本心から発しているのだ、と言う事が察せられる言葉を受けたサタニシスは、それまでの不安に曇らせていた表情を一気に開花させると、満面の笑みを浮かべて彼や周囲の男連中を魅了しながら手を繋ぎ、引っ張る様にして駆け出して行く。




「……よしっ!じゃあ、早速行こうよ!

 まだ一日は始まったばかりだけど、それでも時間は有限なんだから、ね!

 君とこうして過ごせる貴重な一日を、無駄にしないで楽しみ尽くさないと、勿体無いんだから!」



「…………あぁ、そうだ。

 確かに、今日を確り楽しまないとな」




 そう言葉を返し、自らの意思にて彼女の手をシェイドが握り返す。


 ソレを受け、一瞬だけサタニシスは驚いた様な表情を浮かべるものの、その次の瞬間には嬉しくて仕方無い、と言わんばかりの笑みを浮かべながら彼の手を引き、その場から二人で揃って駆け出して行くのであった……。




…………さて、これより『最後の休養』が始まり、後に残るは『終わりの激闘』のみとなる


果たして、物語の結末は如何に?

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― 新着の感想 ―
[一言] 国には帰還しないでほしいなぁ。あれだけ毛嫌いしてたのに今になって助けたら興醒めですしね。
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