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反逆無双の重力使い~『無能』と呼ばれて蔑まれた少年は、封じられた力を取り戻して『反逆者』へと至る~  作者: 久遠
六章・反逆者はその名を『英雄』へと高める

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偽善者は反逆者の今を知る

 



 ━━━レオルクスにてスタンピードが発生したが、ソレはとある『英雄』の働きによって瞬く間に鎮圧された!━━━




 その報せは、とある時点を境として、レオルクスから周辺国へと発信され、あっという間に諸国へと伝播して行った。



 遥か昔に封じられた、とされていた魔族の復活が噂され、実害として魔物が活発的になっている最中に放たれたその情報は、人々にとっては友好的に、『希望の光』として受け入れられて驚異的な速度にて国々を渡り、広く廣く知れ渡って行った。



 そうして伝播して行った国の中に、レオルクスから遠く離れた『対魔族』と言う意味合いでは渦中真っ只中と言えるであろう状態であるアルカンシェル王国も混じっていた。


 彼の国は現在、勇者パーティーを効率的に運用(実質的には無茶振りによるゴリ押しだが)する事により、どうにか国内に於ける変異種や上位種と言った強力な魔物の駆除を完了させる事に成功し、そろそろ外部であり事の原因である魔王への攻撃を開始しようか、と言った状態に在ったのだが、その情報を受けて国内に激震が走る事となってしまったのだ。



 …………何せ、彼が出奔する決定的な出来事となった武闘大会での事は広く国民に対して知れ渡っており、当然彼の事についても大なり小なり程度の差は在れども、知らない者は居ない、と言う状態に在った。


 そこで、わざわざ異界から呼び出した『勇者』や、その仲間達であっても対応するのに苦慮している強大な魔物を、単体では無く群れであっても苦もなく蹴散らして見せた、と言う実績を得ただけでなく、更に(他国とは言え)国からその功績に対するお墨付きすらも得られている、と言う話であったのだ。



 …………なれば、誰もが思う事なのでは無いだろうか?思ってしまう事なのでは無いだろうか?




『彼を追い出す様な事態にしてしまったのは間違いだったのでは無いだろうか?

 彼が出て行く様に仕向けてしまったのが間違いだったのでは無いだろうか?

 そうでなれば、我々は今もこうして魔物の、魔族の驚異に怯えて暮らさずとも良かったのでは無いだろうか?』




 そんな不満が、自ずと民衆の内に湧き起こりつつ在ったのだ。



 …………とは言え、一部とは言えあの時闘技場に居て実際に彼の事を目の当たりにした事の在る者からすれば、そんな事は夢物語に過ぎないし、何より今もアルカンシェルに残っていたとしても、『無辜の民』を無償で善意から守ってくれるヒーローである、とはとてもでは無いが思う事が出来ずにいたりもするのだが、ソレはまた別のお話、と言うヤツである。



 そうして民衆の間に広まる不満とはまた別に、伝播した情報は自ずと支配者階級たる貴族家と王族とにも伝わる事となった。


 そして、一部の貴族家と王族を除いた大半が



『かつてこの国で『英雄』と呼ばれた者の血族であるのならば、この国難に馳せ参じて協力しないとは何事か!?』



 と理不尽な憤りを見せる最中、一人の青年は彼が『英雄』と呼ばれつつ在る、と聞いて一人拳を震わせていた。




「…………そんな、バカな……!?

 なんで、なんで勇者である俺じゃあ無く、あの『モブ』でしか無いアイツが『英雄』だなんて呼ばれる事態になっていやがるんだよ……!?」




 伝えられた情報により、憤りと悔しさとで顔面を赤く染め上げつつ、固く握り締めた拳を震わせているのは、自身でも口にしていた通りにこのアルカンシェル王国によって『勇者』として召喚された存在でもあるシモニワであった。



 彼は、勇者パーティーとして参加している他のメンバー達とは異なり、基本的に王城にて自らに与えられた部屋から動く事は無い。


 精々、城の内部を移動したり、大きく動いたとしても極希に城下町へと赴く程度に過ぎない。



 故に、強大な魔物の驚異を鎮める事には成功したものの、相変わらず東奔西走する羽目になっている他のメンバー達とは異なり、アルカンシェル王国の王城へと報せが届いた時には真っ先にソレを知る事が出来ていた、と言う訳なのだ。


 …………魔族に敗北した事が半ばトラウマとなり、引きこもり気味になっていた事が仇となったと言うのは、何とも皮肉な話であるが。



 怒りと憤りによって震える指にて、もたらされた報せが纏められた紙片を手に取るシモニワ。


 そして、そこに記された、確認されている限りの彼の功績へと目を通して行く。




「…………魔物の暴走『スタンピード』をほぼ単独での鎮圧、凶悪な稀人の撃破、未踏破だった『迷宮』の完全踏破に、国家間を繋ぐ街道を封鎖していた凶悪な盗賊団の殲滅。ソレに加え、人類には不可能とされていた第九階位の汎用魔術を単独で行使して見せた、だと……!?

 ……ど、どう言う事だ!?それらは、本来ならアイツみたいな『モブ』じゃあなくて、『主人公』たる俺の手柄になって然るべき名声なんじゃ無いのかよ!?」




 激情のままに吠えながら、手にしていた紙片をバラバラに引き裂くと、自身のみが在る部屋の中へとばら蒔いて行く。


 その様子は、まるっきり駄々を捏ねる子供のソレであり、日頃から使用人等に対しては『勇者なのだから』と上からの目線で(本人は丁寧に平等に接していると思っているが)尊大に振る舞い、本来であれば上位者であるハズの貴族家の者に対してもまるで同等の立場である、と言わんばかりの振る舞いを見せている者と同一人物だとは、とても思えない程に稚拙なモノとなっていた。



 しかし、シモニワ本人にはそんな事を気にするだけの余裕が無いらしく、まるで鬼の様な形相にて自ら振り撒いた紙片を荒々しい足取りにて踏み荒らし、髪を振り乱しながら部屋の中をウロウロと歩き回って行く。


 そして、自らの『スキル』によって生み出した片刃の長剣、彼の元居た世界に於いては『日本刀』と呼ばれていた武具を縦横無尽に振り回し、家具と言わず床や壁であっても構う事無く手当たり次第に切り裂いて、怒りのままに破壊し始める。



 暫しの間、そうして大暴れを続けて行くシモニワ。


 物音に驚いて使用人が駆け付けたりもしたが、咄嗟に行ったノックに怒鳴り返された事と、彼自身の普段の振る舞いに加え、パーティーメンバーばかりを外へと向かわせて自身は王城から動かない事(本人や上層部は『先の件の様に王城を奇襲されてしまう可能性が在るのでソレに備える為』と言っているが……)から、結局『大事無し』と判断され、部屋の中を覗く事すらせずに放置される事となってしまう。



 そうして、少し前までは豪奢な家具に囲まれていた住みやすい環境であった部屋の残骸の中心にて、幾本も転がる折れた得物の柄を握り締めたまま、声と表情から憎悪と憤怒を滴らせながら一人呟きを溢す。




「…………おのれ、シェイドめ……!

 俺の『ヒロイン』を未だに手放さないだけでなく、俺の為に用意されていたハズの『イベント』まで勝手に横取りしてくれやがって……!

 この世界の有象無象、ただの『モブ』の癖しやがって、俺の成り上がりを邪魔してくれた罪は重いぞ……!

 必ず、必ず俺が、この手で罰を与えてやる……!必ず、必ずだ……!!」




 …………そうして、残骸のみが残された部屋の中央にて振り上げた拳を振り下ろし、最後に床を大きく破壊すると、足取りも荒く部屋を後にするのであった……。




 そして、これを機として、残り少なくなった被害報告の在った地に対して積極的に出動し、魔物との戦いに参加し始め、パーティーメンバーから不審な視線を受ける事となるのだが、ソレはまた別のお話……。




はい、と言う訳で今回の主役はシモニワ君でした~!


予定通りに次回に第二部の人物紹介を挟んでから第三部に進む事になります



予定としては、彼の内面のアレコレやら周囲からの評価の変化やらを中心に描き、最終部(予定)である第四部に繋げる形とする感じです


終わるのが何時になるのかは不明ですが、そこまでお付き合い頂ければ幸いですm(_ _)m

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― 新着の感想 ―
凶悪な稀人を撃破 フラグたちましたねえ
[一言] 「彼を追い出す様な事態にしてしまったのは間違いだったのでは無いだろうか?彼が出て行く様に仕向けてしまったのが間違いだったのでは無いだろうか?そうでなれば、我々は今もこうして魔物の、魔族の驚異…
[良い点] 主人公の活躍により、勇者()が引き籠りから脱却出来たましたね!(ハナホジ) [気になる点] そのまま一生引き籠ってれば良かったのに(小声 [一言] 勇者()パイセンの、更なるご活躍を御祈念…
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