少年は、森の中で逃げ惑う
取り敢えず書けたので始めてみました
…………え?別段待ってない……?
そんなー(´・ω・`)
「…………はぁっ、はぁっ、はぁっ、はあっ……!!」
自ら漏らしたハズの吐息が、周囲の森へと浸透せずに、やけに大きくなって自身の耳へと届いている気がする。
しかし、そんな事を一々気にしていられる程の余裕は『彼』の中には存在しておらず、己の内側から湧き起こり続けている恐怖によって度々背後を確認しながら、鬱蒼と繁った森の中を藪を掻き分け突き進んで行く。
背後から迫り来る死の脅威によって額から汗は止まらず、眼からは恐怖によって涙が途切れる事は一時も無い。
負傷した状態のままで走り続けている為に足が疲労と苦痛を訴えて震え、先に食らった肩の負傷は絶えず激痛と出血によって彼の意識を覚醒と混濁を繰り返す。
……が、敢えて立ち止まって傷の処置をしようとも、一息ついて状況を整理しようともするような考えは彼の脳裏には浮かんでくる事は無く、また彼にとっては背後から迫りつつある『絶対的な死』を前にしては立ち止まるなんてもっての他、立ち止まれば即座に死ぬ事になる!と言う強迫観念染みた心境になっている為に、止まる事が出来なくなってしまっているのだ。
平常時であれば、彼自身が持つ常人よりも数段高い回復能力を生かす為に何処かに隠れて、と言う選択を取ったかも知れないが、既に背後からはバキバキと木々を薙ぎ払いつつ『怪物』が彼を追い掛けてくる音が耳に届いてきてしまっている為に、そんな考えは瞬時に忘却の彼方へと押しやられ、新たに流れ出し始めた涙でにわかに視界が曇り始める。
……嗚呼、なんで、どうして……?
僕には、常人よりも多くの魔力が在るハズなのに……。
なんで、傷が治る速度が速くなる程度にしか役に立ってくれないの……?
どうして、ソレを戦う為の力に、『魔術』に換えて放つ事が出来ないの……?
ソレさえ出来たら、こんな状況にはなっていなかったハズなのに。こうやって一人惨めに逃げ惑う事にはなっていなかったハズなのに!こうやって、情けなく泣きながら追い掛けられるような事態にはならなかったハズなのに!?
そんな悲観的な考えが彼の脳裏を埋め尽くし、背後から迫る殺意と食欲と嗜虐心とが絶妙に混ぜられている気配が迫る中、まるで自ら居場所を告知する様に言葉を口にしてしまう。
「……なんで、どうして!?何も悪い事なんてしてないのに、なんで僕がこんな目に……!?」
それと合わせる形にて、彼の背後にて枝を踏み砕く破砕音と同時に、地面を強く踏みつけて跳躍したのであろう音が周囲の森の中へと響き渡って行くのであった。
…………そして、彼の内側から、彼自身にも聞き取れていないであろう、錆び付いて朽ち果てる寸前の鎖が軋みを挙げ、巻き付いた扉を開かせまいとしている断末魔の悲鳴が強くなっている事を、未だに誰も知る事は、無い……。
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……何故、彼は一人森の中を死の恐怖と戦いながら驚異から逃げ惑う羽目になってしまったのか。
ソレを説明する為には、少しばかり時間を巻き戻す必要が在る……。
6時位に続きを上げる予定なのでそちらにもお付き合いお願いしますm(_ _)m




