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第42話 調査

 俺たちの調査は、不調に終わった。


 魔獣の死骸の報告場所をいくつか巡回したが、特に不審な点は発見できなかった。

 全身血まみれで高笑いを上げていたっていう奇妙な少女についても、手がかりはゼロだ。


「参ったなぁ。さすがにこれじゃ、モニカさんに報告できない」

「調査期日まではまだ時間があるんでしょ。もう少し粘ってみるかい?」


 ティーエの指摘どおり、調査期限として十日ほど見てもらっている。

 今日何も見つけられなかったからといって、まだ諦める段階ではない。


「ですが、あまりにも手がかりがなさ過ぎですわ。いったんネサルドの街に戻って、実際に魔獣の死骸を見たという冒険者様に、お話を伺ってみるのはいかがでしょう」

「闇雲に周辺をうろついていても、無駄かもしれないな。よし、エディタの意見を採用しようか」


 ティーエもうなずいたので、俺たちはいったんネサルドに戻ることにした。




 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆




 ネサルドへの帰路、俺たちは街道を横一列に並んで歩いていた。


「しっかし、冒険者ランクを上げるのも、手間ってもんだよなぁ」

「冒険者を護るための制度でもありますし、致し方ありませんわ。わたくしたちが、異端過ぎるのです」


 俺の愚痴に、エディタは苦笑する。


 確かに、駆け出しが背伸びをして困難な依頼を受けて、そのまま帰らぬ人になりましたーって事態が増えても困るしなぁ。

 駆け出しのくせにベテラン並の力を持っている俺たちが、常識から外れているっていうのは間違いない。


 三人であれやこれやと話をしながら、緊張感なく街道を歩く。

 今日の仕事はもう終わったと、俺たちは完全に油断していた。

 そこに――。


「アァァァァァァッッッ!!!!」


 甲高い女の声が、周囲に響き渡った。


 俺たちは立ち止まり、耳を澄ませる。


「な、なんだ?」

「女の人の……それも、若い女の人の叫び声っぽいね」

「もしかして、旅人が魔獣にでも襲われているのでしょうか?」


 サッと脳裏に浮かぶのは、先日遭遇したネサルドの領主ヨゼフを助けた場面。


「若い女ってことは、案外、例の調査対象の少女だったりして」


 ティーエがドキリとするような指摘をする。


「いやぁ、あり得ないだろう。偶然にしてはできすぎてるぞ」

「今は議論している時ではありませんわ! 急ぎ、助けに向かいましょう!」


 俺たちはうなずき合うと、声の聞こえてきた街道脇の森の中に向かった。


 魔獣なり盗賊なりに襲われているのであれば、一刻を争う。

 女性の無事を祈りつつ、俺はひた走った。




 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆




 獣道を抜けようかというところで、チラリと人影が見えた。

 俺たちは用心のため、いったん立ち止まる。まずは状況を確認しないといけない。


「うげっ……。こいつはマズいぞ」


 エディタとティーエが先行しないよう、慌てて手で制止した。


「どうしたの、お兄ちゃん」

「当たりを引いちまったようだ。どうやら、調査案件がらみだ」


 俺は念のため剣を鞘から抜き、身構える。


「どういう意味です――」


 エディタも眼前の状況を見るや、ハッと手で口を覆った。


「あの魔獣、噂に挙がっていた死骸と同種のヤツだよな?」

「っぽいねぇ。特徴を見る限り、レッドクロコダイル……炎を吐くワニかな」


 おそらくは、ティーエの指摘どおりの魔獣だ。

 真っ赤な巨大ワニなんて、俺は他に知らない。


 中級冒険者だと、よほど入念に準備をしなければ勝ち目のない、なかなかの難敵だ。

 上級でも、かなり危険な相手……。


「調査がらみなら、急いでなんとかしなければいけませんわね。それに、どうやら女の子が襲われているようですわ」


 エディタの言うとおり、レッドクロコダイルの正面には小さな人影が見える。

 遠目からだと、ティーエよりも少し年上くらいの女の子に思えるが。


「マズいな。他に人影は……ないか。もしかして、他は全員食われちまったか?」

「わからないねぇ。ただ、さすがに無策で突っ込むわけにはいかないよ。返り討ちに遭ったら大変だ」

「ですが、急ぎませんと、あの女の子が……」


 エディタはソワソワしながら杖を握りしめる。


「ティーエの言うとおり、下手に突っ込んでもちょっと厳しい。かといって、このままあの子を見捨てるって選択肢もないよな」


 しっかり準備をすれば、決して負けるような相手じゃない。

 すぐさま俺はエディタと相談し、戦闘方針を決める。


「とにかく、まずは少女の身の安全の確保が最優先だ。レッドクロコダイルとまともに戦うのは、それからだな」

「わかりましたわ。少女は、ティーエにお任せする形でいいのですか?」

「任せてよ! 身体能力だけなら、お兄ちゃんにも負けないつもりだしね。あの女の子を抱きかかえたら、すぐに安全な場所まで下がるよ」


 ティーエは薄い胸をグッと張った。


「よし、じゃあいくぞ! エディタ、支援を頼む!」

「わかりました!」


 一連の準備を終えた俺たちは、いざ、少女とレッドクロコダイルが対峙する現場へと踏み込んだ。


 しかし――。

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