降った先に見えたもの
ーひどい雨だ。
今朝から降り続いてるこの雨は、仕事が終わった夜になってもまだ止む気配はない。
「はぁ…最近雨多いなぁ」
9月に入ったばかりの外はまだ蒸し暑く、肌が汗でベタベタする。こうも連日では仕事柄移動が多いユウにとって気分が下がるのだ。念のため明日の天気予報を確認するがまたも傘表示をみて一人ため息をこぼす。
「明日で金曜かぁ〜。今週もあと1日…だけど疲れたなぁ」
明日は特に忙しく、1週間の中で最も移動が多い日だ。
基本予定は変わらないが、一応スケジュールを確認しておく。
「えっと…まずは午前9時に大宮でしょ〜、そのあと新宿行って、お昼挟んだら午後から汐留…からのまた新宿…。毎週毎週あっちこっちに…ほんと、自分を褒めてあげたい…」
ふうっと息を吐いてスマホを閉じる。腕時計が時刻21時57分を指していた。
「え、もうこんな時間!?はぁ…ならいっそ、どこかで少し飲んで行こうかなぁ」
キョロキョロと辺りを見渡してみる。駅の周辺だからか居酒屋とカラオケが多い。今日初めてきたこの場所は、もうすぐ30になるアラサーにとっても未知の街だ。
「おしゃれで落ち着いてるバーとか…どっかにないかな…うーん」
もちろんそんなところ普段1人で入ったりしない。だが降り頻る雨への鬱憤を晴らすため、気分転換と癒しが欲しかった。
「…ん?」
傘を持ち上げて見上げると、気になる看板が目に入ってきた。
《BAR Miller》
「バー…ミラー…?」
英語は好きだがなぜミラー?と疑問を抱く。意味はあるのかな?なんて考えていながらもユウの足は確実にそのバーへ向かって行った。