keep
高いとこ。橋?の鉄骨みたいなとこに捕まってる、足場はあるがこんなものないも同然だ。
今は午前3時と少したったくらいか、真っ暗だ。こんな高いところに風と俺たちの立てる音以外ひとつも音はない。この、暗さと静かさが余計恐怖を誘う。
手汗がやばい、怖い、落ちそうだ
主君は僕のペースに合わせながらも、スタスタと少し前を進んでいく、沢山話しかけてくれてるし、とても表情が緩やかだ、
僕の少し後ろ、動いちゃダメだよ?って言われて動かない。黒い服を着た執事さん。こんなに風が強いのに、たった15センチもない鉄筋の上で直立してビクともしない、
それを見て主君はニヤニヤする、意地悪だなぁ、
「こいつは俺がしようとすることにすぐ手を出してくる。この前だって…」愚痴だろうか、絵に書いたようにムスッとした顔をしている、
正直僕はそれどころでは無い、今この状況、少しでも気をそらせば簡単に死んでしまえるこの状況のせいだ、
こんなに必死にしがみついているのだ、他の人の様子など、上手く観察する余裕などない
何故君たちが悠々としていられるのか、僕には理解出来そうもないよ
主君がちらっと僕の顔を見る、
「飽きた、もういいかな」突然そう言うと主君は鉄骨から手を離し、背中を下に向けた
月のような瞳が、月明かりに照らされる
狂気を感じてしまうほど綺麗だ
「××、はい喜んでは?」主君はニコニコしながら宙を落ちてく、
こんな強風でもよく聞こえる深いため息、
「はい喜んで」呆れたように、嬉しそうになのか、笑っている
こんなに細い鉄骨の上を、何故あんなに早く走るのか、
僕を追い越して主君がさっきまでいた場所に着くと、ぶわっと何か黒いものが宙に広がり、落ちていく主君を包み込む
カラカラ、とても楽しそうに笑っている。黒い何かに包まれて、戻ってきた主君はご満悦のようだ。お前もやるか?と誘う。全力で断る。
こいつはオオカミ男。俺の召使いだ。
気になることは山ほどある。
何故狼男が飛べるのか、何故目の前に狼男がいるのか。そもそも、今僕がいる、まるでハロウィンの世界のようなこの街は何処なのか。僕は何故こんな夜中に古城のような彼の家に招かれているのか。
僕は何故、
どうせなら出かけてきてみるといい。はなしをきいているかぎ