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朝はやってくるんです。

おはようございます。

新しい朝が来た〜〜。


昨晩、散々凹んで泣いて、スッキリスッキリ。

涙は最高のデトックスだと思う。


スッキリ目も覚めたし、今日は子供達もお休みだし、いっちょ張り切ってパンケーキでも焼こうかな。


鼻歌とともにフルーツを切って材料を混ぜる。

昨日ゲットした足台の高さが絶妙で、作業がやりやすいね。


温めたフライパンに生地を流し込めばジュワーっと食欲をそそる音と共にフワリと甘い香りが立ち上る。

うん、この瞬間が1番好きかも。


と、匂いにつられたのか寝ぼけ眼の琉唯君が顔を出した。

そのままフラフラと歩いてきて、ふんわりと背後から抱きついてくる。

昔から、泊まった朝の恒例行事みたいになってるので、特に驚く事もなく受け入れる。

琉唯くんは甘えん坊さんで、昔からスキンシップが多いのだ。


「………良い匂い」

肩に顎を乗せてつぶやく声は寝起きの為か少し掠れて甘く響く。

体が小さくなったせいかいつもより包み込まれる感覚が強くて、なんだか少しどきりとした。


「すぐ焼けるから、顔洗っといで」

そんな自分の心の動きに内心首を傾げつつも、後ろ手に額をペチリと叩いた。

「はぁ〜い。あ、葵さん、おはよう」

素直な返事と共に朝の挨拶が返され、スルリとぬくもりが離れた、んだけど………。

今、耳に何かが触れたような?


「ま、気のせいでしょ」

クルリとパンケーキをひっくり返りながらつぶやいて、私はコーヒーを入れるようと足台から降りて、冷蔵庫に向かった。




「オォ、豪勢。休みの朝って感じ」

琉唯君に起こされてやってきた悠理が、テーブルの上に眼をやって歓声をあげる。

「具材はお好みでどうぞ。今日は特別にハーゲンダッツ様を乗せる事も許可してあげよう」

ワザと大仰に宣言すれば「やったっ!」と小さく呟きつつ、悠理がいそいそと冷蔵庫に向かう。


「で、母さん、今日は仕事したいから遊んであげられないけど、2人で仲良くね〜〜」

「幼稚園児かよ」

高級アイスに両手上げて喜んでるうちは、充分お子様だと思うんだが、あえてそこには口を出さない方向で。


「意地悪言う子にはこれあげないよ?」

ニヤリと笑って掲げるのは、今話題の映画の試写券。

「お母様、ありがとうございます。大好きです」

両手を前に出し、ははぁ〜〜と頭を下げる2人に笑って券を手渡す。


「安達君にもらったんだから、今度会った時にでもお礼言っといてね」

「「了解」」


会話だけ聞いてればいつもと変わらぬ朝の風景は、だけど少年の向かいに座るのがさらに幼い少女というだけで違和感バリバリになる。

けど、そこに関してはツッコミ不在につき、会話はサラサラと進んでいく。


「じゃ、昼は外で適当に食べるから気にしないで良いぜ。夕食も俺が適当に作るから、頑張れ」

「ありがと」

息子の激励に答えながら、メイプルシロップたっぷりのパンケーキを口に含む。


うん、我ながら良い出来!






ついでに夏服のバーゲンに行くと軍資金を強請られて、そう言えば、昨日やけに服が安くなってたなぁ、と思い出す。


最近の子はオシャレなんだよ。

親の買った服なんて、中学生にもなると着てくれないんだよ……。

男の子なんて、特に、買い物に付き合ってくれるのは自分の欲しいものがある時だけなんだよ。それすらも、ほとんど今回みたいに軍資金だけ徴収されるパターンが多いしね。

つまらない………。


いそいそと出かけて行く背中を見送りつつ、若干イジケてみる。

けど、まぁ、すぐ1人遊びに飽きた。

かつて自分も通って着た道だししょうがない。

仕事しよ〜〜と。


現在、差し迫った締め切りはないけど、1週間後くらいに短編が一本。今月末で映画のコラムが一本。

短編の方はもうほとんど終わって最終推敲ぐらいなんだけど、コラムがなぁ……。


テーマが決まっててそれを元に、オススメの映画を紹介するんだけど、今回は「秋の夜長をロマンチックに……」って。

恋愛物はあんまり見ないんでちょっと困る。

どうしようかなぁ………。

いっそ古典に走るか?


悩みながら、過去に観た映画の感想をまとめたデーターをみるとはなしに眺めてると、不意に玄関のインターホンが鳴った。

チラリと時計を眺めるといつの間にやら正午近い。


けど、なんの約束もないし、宅急便の予定もないし………なんかの勧誘かな?

放っておいて良いかな?めんどくさいし。


と、間髪入れずにスマホから着信音が鳴って、そのタイミングに驚いて体が跳ねる。

反射的に取ったスマホの画面には「橘京花(たちばなきょうか)」の表示があった。


「へ?なんでこのタイミング?」

それは琉唯の母親であり、10歳年上の友人でもある人の名前だった。

忙しく、不規則な生活をしている彼女との連絡はもっぱらメールであり、電話は非常に珍しい。


とりあえず、とってみると、開口一番「遅い」と怒られた。


「そこにいるのは分かってるんだ。サッサと扉を開けろ」

明らかな上から目線だが、反発する気にはなれない。

ここで下手に抵抗しても、後の面倒が増えるだけだと過去の経験から学習済みだ。

そもそも、彼女を招き入れることに抵抗は………。


(あ、この状況、なんて説明しよう?)


過ぎった戸惑いは、しかし、次の瞬間に囁かれた声に速攻で霧散した。


「…………蹴破るか?」

「開ける!開けるから、ちょっと待って!!」





読んでくださり、ありがとうございました。


新キャラ(笑)登場です。


そして、そろそろストックが底をついてまいりました。

これから始まるチキチキチキンレース。

連続投稿が止まった場合は「夜凪、死んだな」と生暖かく判断して下さい。

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