夏といえば旅行でしょ〜終幕
さて、夏は行ってしまったのです……。
「………泣きたい」
「はいはい。悲しい悲しい」
つぶやけば、適当な返事が返ってきた。
「旅行の3分の2が、旅行じゃなかった」
「しょうがないだろ〜〜。母さんが知恵熱出したんだから」
それでもめげずに再びつぶやいてみれば、呆れた声が戻ってくる。
息子が冷たい。
泣いていいかな、切実に。
緊急依頼が舞い込んだあの日。
少しでも早くあげようと、徹夜でパソコンに向かった。せっかく遊びにきたのに、ホテルに缶詰とかゴメンだったし。
徹夜でお仕事は、まぁ、よくある事、だったし。
栄養剤飲んで、仮眠の2時間も取れば大丈夫。
な、はずだった。
少なくとも、私も周囲もそんな風に思ってた。
の、だけど。
今までと、決定的に違うことがあったことを私達はみんなして失念してたんだよね。
チョット考えれば分かることだったのに。
子供が徹夜しちゃダメでしょ。
しかも、ボンヤリテレビ見てたとかではなく、真剣に脳みそフル稼働で。
そりゃあ、オーバーヒートして熱ぐらい出るってもんで。
朝9時くらいに原稿仕上げて入稿し、仮眠から目が覚めたら40度近い熱が出てましたよ、っと。
いくら子供の体が熱に強いとはいっても、流石にアレはあかんヤツだったわ。
しかも、下手に頭の中身は大人なもんだから、体温計見た途端に本格的にぶっ倒れましたよ。
病は気からとは、よくいったもんだよね〜。
アハハハハハハハハ。
目を回した私に慌てた安達くんがホテルのコンシェルジュに泣きつき、そのまま近くの病院へと担ぎ込まれ点滴。
過労と睡眠不足との診断の元、そのまま1日入院して様子観測の憂き目にあい、次の日には微熱まで落ち着いたものの勿論観光など許されるはずもなく。
泣く泣くお家に帰りました、とさ。
仲良くなったサラサちゃん達からはメールがきて、すっごい心配されたし。
なぜかその中で何やら「家の事情」→「私の虚弱体質」説に移行してた不思議。
別に会話誘導とかしてないのに?
どうしてそうなった?
どうも、ようやく体調良くなって帰ってこれたのに嬉しくてはしゃぎ過ぎたせいで熱が出た〜〜みたいに終幕してたよ?
首かしげてたら、悠理達が「それなら学校休みまくってても問題ないし、その方向で」って適当に煽ってくれちゃったし。
あはは。
健康優良児だったんだけどなぁ、私。
で、現在。
お家のベッドでゴロンゴロンしてます。
まだ微熱あるしね。
熱下がってすぐに車での数時間の移動がダメだったのか、またぶり返しちゃったんだよね〜〜。
と、いっても、風邪とかじゃないので、そこまで辛くはない。
高熱の影響で身体がだるいけど。
「息子が冷たい〜〜」
とりあえず、枕に顔を埋めて泣き真似をしてみれば、ふっかぁ〜〜いため息が落ちてきた。
「……母さん?」
おや、何やら涼しい空気が吹いてきたぞ?
クーラー効きすぎかな?
「大人しく寝てような?」
「はい、ごめんなさい」
食い気味でいいお返事して布団をかぶる。
あの低い声はまずい。
本気で怒り出す5秒前ってヤツですよ、奥さん。
「もう海は無理かもだけど、またどこかに行けばいいだろ?今度は、無茶振りされてもちゃんと断れよ?」
呆れた声に戻った悠理は、温くなった氷嚢を持って出ていった。
できる息子で母さんは嬉しいよ。
「予定変更されて、怒ってもいいのに」
ポツリと溢れたつぶやきは1人の部屋に響いて消えた。
どうしたって1馬力じゃ、そんなに贅沢させてあげることは出来なくって、あんなホテルに旅行なんて、早々いけるものではない。
それこそ、こんな風にラッキーな出来事でもない限り。
楽しみに周辺の観光地を調べてたのだって知ってるんだよ。
みんなで楽しめそうな場所をこっそりピックアップしてたのに。
病院に着いてきたから、大丈夫だから遊びに行くように促しても、頑として動こうとしなかった。
「大人しく寝てるから」「単なる知恵熱だから」
いくら言葉を重ねても、悠理はベッドの横の椅子から動こうとしなくって、困り顔の琉唯君が私に諦めるように説得してきたくらいだ。
「あ〜〜、もう!やめやめ!湿っぽく考えたってしょうがない!」
本格的に落ち込みかけて、首を大きく横に振る。
「終わったことは戻らない!落ち込む暇があったら、ネタの1つも考えて1発当てて豪遊狙おう!」
あえて声に出して自分を鼓舞するのは昔からの癖で。
ただ考えてるより、声に出して耳で聞くことで、少し客観的になれる気がするんだよね。
「よし!頑張るぞ!」
いそいそとサイドテーブルからノートと鉛筆を取り出した私が「大人しく寝とけっていったろ?!」と、息子から雷を落とされまで、あと3分。
読んでくださり、ありがとうございました。
いささか強引に終わらせてごめんなさい。
子供って、チョットしたことで熱出しますよね〜〜!………ね!?
誰ですか?作者が飽きたせいだろう、って呟いた人!
因みにこの後お見舞いとして編集長様より豪華フルーツ盛り合わせが届き小躍りします。
「無茶したのは本人の責任だけど、まぁ、旅行邪魔したのは事実だし」との事で、ポケットマネーでございます。編集長、男前〜!
そのうち子供化がバレて、いいネタができたな〜〜、と色々な無茶振りがかまされる予定です(笑




