夏といえば旅行でしょ④
「で、ご飯どこに行くの?」
パーカー再びで、若干の暑さを感じつつも、さっきまで水の中に居たからかそこまでの不快感はない。
水着のショートパンツより長いから、ほとんどワンピース状態だけど、まぁ、気にしない。
2人に挟まれた状態でぶらぶら歩く。
なんか、視線感じまくりだけど、もうこれは気にしたら負けだよね。
チラリと伺う両隣にはタイプの違う水着姿のイケメンですよ。まぁ、見るよね。
こんな所に来てる女子グループなんて、肉食女子だらけだろうしね(←偏見)
それを抜きにしても、夏の暑さは人を積極的にさせるものなんだよ。
つまり、何が言いたいかと言うと……
「ね、私達女同士できてるんだけど〜〜」
「一緒に遊ばない?」
セクシー水着なお姉さん達が入れ食い状態で引っかかるわけですよ。
にしても、確かに2人とも年齢より大人びてるとはいえよくもここまで女の子が寄ってくるものだよね〜。
同世代から20代な大人女子まで。
まさに選り取り見取り。
わ〜〜、すご〜い。
何がすごいって、間にいるはずの私が丸っと無視なところで、ね。
いやぁ、確かに視界の端にしか引っかからないような身長差ではあるけどね?
2人の間に陣取ってる人間を華麗にスルーってのは、流石に問題あるんじゃない?
「妹いるんで」
ひっジョーに面倒臭そうに悠理がつぶやいて伸ばされるてから逃げた。
綺麗に整えられた爪はキラキラとコーティングされて非常によく刺さりそうだ。
その言葉で、ようやく女の子達の視線が私に向けられた。けど、非常に不快。
なんで見ず知らずの人間に、眉顰められなきゃいけないのか。
「妹さん、かぁ。大人と遊んでもつまんないよね?親の所にいこ?」
可愛く小首を傾げながら、邪魔者を排除にかかってくるけど、それ、悪手だから。
「親、いません」
首を傾げながら、少し寂しそうに言ってみる。
「遠くにいます。会えないの」
さぁて、どういうリアクションくるかな?と、思ってたら相手は予想外におバカだった。
表情読む能力がないのか、興味がないから気づかないのか。
「えー、お母さん、家に置いて来たの?じゃぁ、誰と来たの?」
親置いてきぼりとか、まじ酷くない?」
「てか、お兄ちゃんについて来たとか、ブラコン?」
「てより、もしかして親に相手にされてないんじゃない?」
ケラケラ笑いながらディスってくる。
おおう。怒涛ですね。
だけど、両隣の気温がどんどん下がって来てるのに気付こう?
普通兄妹って親は同じだからね?親バカにしちゃダメでしょ。
一緒にお出かけするくらい仲良い兄妹だよ?
妹バカにされたら普通怒るでしょ?
「うるせーな。ケバいオバさんに興味ないんだよ」
「ブラコンシスコン大歓迎。近くで騒音と化粧の匂い撒き散らされるくらいならね」
絶対零度の視線と言葉に、さすがの肉食女子もなにか地雷を踏んだことには気づいたらしい。
てか、2人とも目つきがメッチャ怖いんですが。
「え〜〜、ひどくない?」
「ウチらそんなんじゃないし……」
ゴニョゴニョなんか言ってるけど、振り払った手に見向きもせず、何故だか私の手を(てか腕?)それぞれに捕まえて2人はスタスタと足を早めた。
てか、足、浮いてる。浮いてるから!
そのまま、半ば空中散歩状態で運ばれた先はプールサイドに設置された半オープンカフェのお店だった。
「悠理も琉唯君も眉間のシワすごいから。怖いから」
無言の空気に耐えられず、主張すれば、2人はお互いの顔を見合わせてから、ため息ついた。
「別に気にしてないよ〜?あまりの空気扱いと相手の空気の読めなさっぷりにむしろチョット面白かったし。アレってゆとりってやつ?」
のんびり口調で小首を傾げて見せたら、再びふか〜いため息の後「一緒にすんな」と悠理からデコピンされた。
痛くないけど、さ。
「気にしてないって分かってても、イヤな気分になるんです」
不意にフワリと背後から抱き上げられて、スリっと頭に頬ずりされた。
そういえば、琉唯くんが女の子に冷たい態度取るのって初めて見たかも。
基本、笑顔でソフト対応なのに。
「そ、だね。怒ってくれてありがとう」
私だって、家族が酷いこと言われたり無視されたりしたら嫌な気持ちになる、もんね。
そう考えたら、2人の態度がすごく嬉しいものに思えてきた。
まぁ、冷たい態度とられた女の子達は可哀想だけど、自分の浅はかな態度が引き起こした結果だし、これに懲りて少しは学習してくれると、いいな。
そんな事を考えてるうちに、店の中に入って、テーブルまでたどり着いてた。
「葵さん、どうしたんです?足でも痛めました?」
不思議そうな安達くんの声に我に返った時には、そっと椅子の上に降ろされた後だった。
おう、店の中、抱っこで横切っちゃったよ。
………子供だし、いいよね?推定10歳はもうアウト?
頭を抱えて赤面悶絶するも、琉唯くんはどこ吹く風でシラっとしている。
いいよね。王子キャラがハマる方は、こんなことしても違和感ないもんね。抱っこされてるのが私で、本当に申し訳ない。
「メニュー、いろいろあるよ?何食べたい?」
八つ当たりとわかっていても、恨みがましい目で見ていたら、スッとメニュー表を渡された。
写真がたくさんでカラフルでオシャレだね。
オシャレなカフェご飯から海の家チックなジャンクフードっぽいモノまで、意外と幅広いメニューに目を奪われる。
決して空腹に負けたわけじゃない。
中身は大人なんだから、さりげなく水に流しただけだもん!
しかし、これは迷う。
食べたいものが多すぎる。
ウンウン迷っていたら呆れ顔の悠理がサッサと店員さん呼んで頼んでしまった。
「あ、酷い!」
「何が。迷ってるの全部頼んでやったじゃん。適当につまめばイイだろ?後は食べるからさ」
肩をすくめてソッポを向く悠理がイケメンすぎて困る。異論は認めない。
飲み物は爽やかな柑橘系のソーダが運ばれてきた。
こちらも、実に私好みで美味しい。
「本当に仲良いですね」
安達くんが向かいでニコニコと笑っているのがなんだかしゃくに触ったので、こっそり机の下で足を蹴りつけておいた。
安達のくせに、生意気だ。
読んでくださり、ありがとうございます。
肉食女子(笑)撃沈の回でした。
いつもは、つれない悠理にさり気なくフォローしつつもやんわり逃げる琉唯君、って感じです。
今回は、まぁ。
琉唯君もちょっとイライラしてたもので(笑)
そして、安達君の影がうすいよ……。




