表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

迷宮の作り方

作者: 只野 皐度

なお、あくまでも迷宮そのものの作り方であり、罠や魔物は各自で用意してください。


お手軽簡単迷宮の作り方


 まず生きのいい《迷宮蚯蚓》を手にいれましょう。

 地域や次元によっては《メイズ・メーカー》《ラビリンス・シード》なんて呼ばれてますが、それらは性質が多少違うだけで基本的にどれを用いてもかまいません。

 できる限り大きくて健康的で、そして生きが良いものを用意した方が失敗も少なく待ち時間が短くてすみます。

 どうしても待ちきれない場合には数を集めて、失敗する確率を引き下げることも大切です。

 

 さて、まだ小さな個体では防衛本能が充分に働かない《迷宮蚯蚓》は食べられてしまったり、爪や牙を研ぐのに使われ、時には踏み潰され、そのまま死に至ることもあります。

 そのため最低でも、そこらの獣と同程度の大きさになるまでは大切に育てましょう。

 そしてある程度の大きさまで育ちましたら、迷宮を作りたい土地に連れて行きましょう。すると、その場所を起点として土地を食い進み、やがて立派な迷宮へと成長いたしますが、その成長速度は土地の成分、そして魔力濃度、固体などによって左右されるため、あなたが住処とするまでにどれだけ時間がかかるか答えられませんが、ほんの50年ほどを見ていただきたいと思います。

 

 さて、《迷宮蚯蚓》が何を食べるのかですが、身体を構築する為の『素材』と生命活動を意地するための『魔力』からなります。

 取り込まれたが壁や床の素材の基礎となります。

 もちろんそのままではなく、『魔力』などを用いて多少の加工をする本能を持ち合わせています。

 

 しかし実際に育てた方なら分かるかと思いますが、幼体である《迷宮蚯蚓》の成長速度は非常に遅く、1年かけて倍程度になる個体に当たることもよくあります。

 定命な方々では待ちきれないということで、《迷宮蚯蚓》に魔力を供与してその成長を促進させる方も見受けられますが、あれはオススメいたしません。

 なぜなら無理な成長はその形を歪め、見た目にも強度にも悪影響を与えます。

 時には自我が強くなりすぎて、能動的な活動を始めてしまい、さらに体内での『魔力徴収』が強くなるため、快適に住めるような環境ではなくなります。

 これでは安心安全快適な住処とは言えません。

 だから成長が落ち着くまで、のんびりまったりと100年くらい待ちましょう。

 

 ある程度大きくなると第一構造限界によって、それ以上の成長は行われず、身体の修復や補強に回されてしまいます。

 これにより、内部で発生した爆発などで崩落する危険性が下がります。

 さらに、第一構造限界に達するまで成長をすれば、迷宮全てが崩壊するようなダメージを与えさえしなければ、10万年とも100万年とも言われる寿命まで死ぬことはないでしょう。

 

 とはいえ《迷宮蚯蚓》の寿命がどれだけなのかは分かっていませんが、とある《迷宮蚯蚓》は3万年前から今もなお活動をしています。

 

 《迷宮蚯蚓》は生物としての性質を持ちながら、非生物の性質も持ち合わせている半生物という見方が大半でしょう。

 《迷宮蚯蚓》はそもそも竜種の1つで、地に降り翼を失った《ワーム》の変異種なのですが、それをさらに『鉱山開発用』に品種改造された種のみ《迷宮蚯蚓》呼ぶとも言われています。

 

 その名残で、何かの要因で竜種としての自我を取り戻すと非常に厄介なことになります。

 なんせそこらの砂や石、土や木、やろうとすれば生物だって捕食し無尽蔵に自己修復をする山よりも大きな生物になるわけです。

 それも明確な臓器はないため、急所のようなものもないため、一般的にできる対処法は、物理的に破壊し尽くし、活動停止に追い込むことぐらい。

 破壊された断片の幾つかは《迷宮蚯蚓》として生きることになりますが、多量の魔力がなければただの蚯蚓みたいな物なので、すぐに捕食されてしまうでしょう。

 

 さて、ここで注意しなければならないのは第一構造限界に達するまで成長した《迷宮蚯蚓》はあなたの支配から逃れようとするでしょう。

 しかしこれは決して反意を抱いているのではなく、本能的に餌だと認識しているだけです。そこに食べ物があれば食べる、それはいたって当然の反応。

 そこで《迷宮蚯蚓》の飼い慣らし方として、本能で察せるだけの実力差を見せつけるか、定期的に魔力供与を行い、あなたが有用な餌であると教え込むことで、身の安全を確保できるでしょう。

 

 ちなみに、私が知る限りで、自ら《迷宮蚯蚓》に取り込まれることでその力を思いのままにしようとした方もいましたが、結果として生まれたのが今の《砂龍》です。あれに成りたいと思うのであれば止めはしませんが、それは面白くないでしょうし、それにより世界が滅びることを良しとしない者が介入を行うでしょう。

 

 その一方で幼体の《迷宮蚯蚓》を自ら取り込むことで身体を迷宮化しようとした実験もありましたが、そのなれの果てが、そして蚯蚓と勘違いして捕食した鳥獣が行き着く先が《漠獣》や《漠魚》と呼ばれるです。

 それらはやがて《砂龍》まで成長する可能性もありますが、そこまで成長する頃には魔力欠乏により絶命するか、はたまた《砂龍》に捕食され取り込まれることでしょう。

 

 そんな状態になってしまうのは《迷宮蚯蚓》は機能と呼ぶに近い本能だけを持っている半生物としての性質、そして元竜種としての強さからなるところが強いからであり、それらを抑え込み支配できるだけの存在ならば、一時的な存在強化に用いることもできるでしょう。

 最も、時間経過によってやがては存在が浸食され喰い散らかされ、やがては《迷宮蚯蚓》になるか、はたまたどちらでもない存在になるでしょう。

 

 しかしそんな《迷宮蚯蚓》ですが、うまく共生関係を築くことができれば、あなたの身の安全を確保する領土作りとしては簡易で確実な方法であることには代わりません。

 さぁ、安全で安心な住処をつくろう。

「その個体差が激しく、『可食』な固体が多い。食べるのであれば幼体が捕まえやすく調理しやすい」

──『珍食大全』──

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ