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俺の名前は、伊坂 宗治。とある組織のスパイをやっている…はずなんだが。
「はーい、転校生を紹介しますよー。はい、自己紹介してね。伊坂君」
促されて、俺は教壇に立った。
「伊坂 宗治です。仲良くして下さい」
高校に入学する事になった。
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一週間前 アフガニスタン
「先日の事件を知っているかね?」
俺は組織が持つ隠れ家の一つにいた。
俺を呼んだのは、上司のネイサン ワシントン。
俺が来た時、ネイサンは深刻そうな顔で椅子に座っていた。
「昨日?」
手近な椅子をネイサンの正面に移動させ、腰掛けながら聞く。
「そうだ。アフガニスタンにいた君には情報が行き届いていなかったんだな。
先日、情報が漏洩し、君を含む数人の詳細がテロ組織や国家諜報機関に渡ってしまった」
「んな…!?」
スパイにとって正体を知られるのは絶望的だ。
世界中の裏組織から命を狙われて、生き延びていられるのは、一重に正体がバレていないからだ。
「君が死んでいなくて良かった。我々はこれからこの事態の後始末をする必要がある」
そう言うと、ネイサンはトランクを手渡してきた。
「偽のI.Dと資金にパスポート、その他諸々だ」
「俺はこれからどうすれば?」
「日本に行って、護衛任務について貰う。
詳細についてはこの資料を」
渡された資料に目を通す。
そこには護衛任務の詳細が書いてあった。
「って! 何だこれ!? 一条路高校に入学て!」
「そのまんまの意味だ。そこに通っている鷹司 紫苑という女の子の護衛にあたってもらう」
「いや、俺25だぞ! 高校とか無理だろ!」
「髭を剃れ。本来なら君を保護下に置いておいて、ジッとさせるべきなのだろうが君程の男を腐らすのは勿体無い。護衛は日中のみで良い」
「了解…」
「そんな不満そうな顔をするな。3年もすれば復帰出来るようにする。それまでは休暇と思えばいい。以上だ」
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現在 日本
グルッと教室を見渡すと、好奇心に満ちた目でこちらを見たり、好き勝手に俺について話したりしている。
「というワケで、皆色々教えてあげてね!」
女性教師がそう言ってしめる。
俺はニコリと愛想笑いをした。
とにかく最悪だ。