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おどり御張行の事其弐
津島(現在の愛知県津島市)では、堀田道空の邸の庭でひと踊りして、左京は清洲に帰りました。
(早く帰って、樹里様の膝枕!)
ニヤニヤしながら馬を走らせる左京は、端から見ると変質者です。
「うるさい!」
正解を言ったはずの地の文に切れる左京です。
そのお礼という事で、津島の五つの村の年寄達が清洲にやって来て、踊りの返礼をしました。
これもまた、素晴らしかったのは言うまでもありません。
左京は年寄達を近くに呼び寄せて、
「ひょうきんだ」
「似合っているぞ」
お互いに非常に打ち解けて、左京は一人一人に言葉をかけ、団扇で扇いでやったり、お茶を振る舞ったりしました。
年寄達はたいそうありがたく思い、炎天下であったのにその苦労も吹き飛び、皆涙を流して帰って行きました。
「そうなんですか」
樹里は笑顔全開で彼らをねぎらいました。
そんな事があってからしばらくして、熱田から一里(約三・九キロメートル)東にある鳴海城に動きがありました。




