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摂津国御陣の事其肆拾弐
咲が下手人を追いかけていると、
「そこまでだ、月一族。我らの邪魔をするなら容赦はせぬ」
星一族の陶が現れました。咲は身構えて、
「先日、紅を助けてくれたのは礼を言うが、此度は如何なる事だ?」
陶はフッと笑い、
「我らは公方の命で動いている。不服があれば、公方に申せ」
「義昭公が其方等の?」
咲が眉をひそめます。陶はそれには答えずに、
「好きなように考えればよい」
スッと姿を消しました。
(星一族、何を企む? 公方が黒幕ではないのか?)
咲は左京の陣に戻りました。
「勘十郎が毒を持っていた」
勘十郎の持ち物を調べていた藍が言いました。
「では、勘十郎は上様を毒殺しようとしていたのか?」
咲が驚くと、藍は、
「それをなさずに陣を出たため、殺められたのだろう」
咲は黒幕を気取る阿呆公方に怒りを覚えました。
「誰が阿呆だ!」
どこかで切れる足利義昭です。
咲と藍は事の次第を元猿に伝えました。
「前々世の話をするな!」
地の文に切れる左京です。




