71/2152
蛇がえの事其肆
佐々成政の一族で、家臣の長老に井口太郎左衛門という者がおりました。
「その件については、某にお任せください。左京を見事討ち果たしてみせましょう」
太郎左衛門には策がありました。
「左京が城を見たいと言えば、まず間違いなくこの太郎左衛門に申しつけましょう。その時、城の周囲をご覧になってくださいと舟に乗せます。恐らく、左京は小姓を幾人かお供に付けて乗りましょうが、某は脇差を懐に隠し持ち、隙を見て左京に飛びかかって引き寄せて幾度も突き刺し、組みついたままで川へと飛び込みます。ご安心ください」
ところが、太郎左衛門が嬉々として述べた策は全く役に立ちませんでした。
左京は城に寄らずに帰ってしまったからです。
「無念でござる」
太郎左衛門は地団駄を踏んで悔しがりました。
悪運だけは猿の頃から強い左京でした。
「前々世の話を致すな!」
正室の樹里の膝枕で切れる左京です。
「そうなんですか」
樹里はそれにも関わらず笑顔全開です。




