偽善者の落とし穴
とくに美人でも可愛くもないけれど、人気者。
優しい、気遣いのできる良い人。
それが表面上の私。
「おはよう、雪桜ちゃん」
「あぁおはよう霧絵ちゃん。」
前世、自殺する直前に一緒にいた依存者に似ているなと、初めて挨拶された時そう思った。
名前も同じ、顔も、性格も同じ。
あぁまさか追いかけてきたのだろうかと思ったけれど、すぐに頭を振った。
さすがにそんな偶然はないだろう、それではまるで運命のようだ。
あぁこんな人間と運命で繋がっているなんて、ぞっとする。
「そういえば、ついさっき噂の王子様を見たよ。噂通り素敵だね。」
「・・・今年から通うことになったっていう?」
「そうだよ。」
「へー、わたしも見てみたいなぁ。」
白々しい笑顔だ、嫉妬を覚えたことをかけらも隠しきれていない。
私が興味を持ったというだけで嫉妬するのか、そうか。
あぁ楽しい、見ていて実に愉快だ。
私の偽善に溺れて、私に依存した人間を見るのは、実に愉快なことだ。
いつか、正義の味方面をしたヤツに言われた。
『本人が救われているのならそれは偽善じゃないよ、それは本人にとって本物の善意になるの。』
あぁ馬鹿だな、と思った。救えない馬鹿だった。
私の言葉一つで、どれだけの人間が自ら命を手放すと言うんだろう。
そう言えてしまうほどの私の善意が、偽善でないわけがない。
もしこの私の行いが善意であるとするなら・・・
あぁそれはなんて、暴力的な善意なんだろう。




