帰らない夢
「ねぇ、アナタが思っている以上に・・・アナタを愛している人は、みているのよ。」
そう言った彼女の死因は、飛び降り自殺。
ご丁寧に、私の学校で。
きっとどこかにカメラでも仕込んでいたんだろう。私が窓の外を眺めている時に、落ちた。
目が、あったような気がした。
重い音がして、窓際の生徒が、止めればいいものを・・・窓から顔を出して、下をみた。
引きつった声だけを短く漏らし、椅子から転げ落ちた。
それから次々に起こる悲鳴。
慌ただしい中、終わったその日。
家に帰れば兄が心配そうに私を迎えた。
「・・・大丈夫か?」
「なにが?あぁ兄さんは時々、おかしなことを聞くよね。」
兄さんは知っていた。
学校で自殺した人が、私の知り合いであること。
そして私が、その自殺したという事実に、どのような感情を抱いているか・・・・・きっと兄は、私以上に私の事を解っていた。
「おまえ、 」
「先輩!」
はっとした。
目の前にまで迫っていた剣の切っ先をすんでで避ける。
あぁそうだ。今は実習中だった。
今、魔術で幻覚を見せられていた。
今思えば、私が少しずつ道から逸れていったきっかけになった光景。
「雪桜先輩でも、あんな簡単な術に嵌るんですね。」
「私には王子様みたいな才能はないからね。しかたがないよ。」
嫌味も何も知らないというふうににこりと笑って答えた。
だって私は“善い人”なんだから。
ほら、今渡しに攻撃を仕掛けた人も、とてもやり辛そうでしょう?
だって私は、この学校ではほとんどと言っていい程妬まれることも、恨まれることも、憎まれることもないような、そんな“善人”であるのだから。
「終わりましたね。」
気がつけば、いつの間にか役の二人が地面に伏していた。
王子の手には薔薇と百合を掛けあわせたような花をモチーフにしたガラス細工。
これを多く集めたペアの勝ち。ちなみに、一人一つ持っている。
舞台は学校の裏にある鬱蒼とした森。学校の裏庭にしては広すぎだと思う。
そんな森のなか、ペアで散らばって魔法あり刃物ありでガラス細工を奪い合う。
なんとも物騒な実習だ。
1・3年合同というのだから、1年生には不利だろう。
1年生は理不尽に思うかもしれないが、実はコレ、親睦を深めるためのものでもあるそうだ。いつかしら先生方が言っていた。
はっきり言っていらないと思う。
「始まってからだいぶ経ちますし、一休みしませんか?」
「あぁそうだね、もう昼だから。」
丸一日使うのも、話せる時間が増えるだろうという事らしいのだが、今回ばかりは本当にいらないと思う。




