偽善者の憂いと哀愁
「あら、ごきげんよう雪桜さん。」
「あぁこんにちは、リリノーゼさん。」
あぁ出た、お嬢様代表。
栗色の髪をくるくるさせて、ふんわり笑う。深窓の令嬢といった風貌。
そんな見た目とは裏腹に、中々キツイ性格をしている。
貴族はどうとか、平民はどうとか、そういった区別をはっきりつける人間。
欲しいものは何でも手に入ると思っている、馬鹿な子。
「やっほー雪桜、今日も素敵な笑顔だね。」
そのすぐ横にいるのは、リリノーゼと同じ顔をした少年。
彼女の双子の弟のアルテローゼ。ただ彼はリリノーゼとは違い、髪は左に流し紺のリボンでまとめている。
彼が少し制服を着崩しているのも、彼女からしたら信じられない事態だろう。
彼も彼女同様、世界が狭い子どもだ。
二人揃って、私の依存者。
「アルテ、その口調をどうにかなさい。服装も、もう少し貴族らしくなさったらどうかしら。
あと雪桜さんはリリィと呼んでとお願いしたはずでしてよ?
あぁ・・・でも、それより雪桜。」
物憂げな表情が似合うのは、彼女の美貌ゆえか。
とりあえず、そんな表情をしていても考えていることは9割方くだらないことだ。
二人して、私を見つめてくる。二人共同じ、あまりにも見慣れた、依存しきった目だ。
「なぁに?」
優しく聞けば、酷く傷ついたような表情をした。
「今度の実習、僕らとは組まずに雪桜は殿下と組むんでしょう?」
「私達、不安ですの・・・殿下は魅力的ですわ。雪桜さんが取られてしまわないか・・・」
「ねぇ。」
馬鹿だなと思う。
あぁなんてことはない戯言だけれど、私は許しがたいフレーズがいくつかある。
誰にだってあるだろう、逆鱗や、地雷というものが。
「 ねぇ、取られてしまうって、なに?
私は、あなた達の物なんかじゃないんだよ。」
彼ら、私の信者や、依存者というものは、私のことをよく見ている。
最初は、騙されないよう慎重に。
偽善に騙された後は、嫌われないよう、殊更注意深くみている。
だからどういうことをしてはいけないのか、どういうことを言ったら怒らせるのかを、彼らはよぉく理解している。
「ぁ・・・っごめんなさい!」
「ご、めん。ごめんね雪桜、そういうつもりじゃ」
二人して血の気の引いた顔をしているのは、実に滑稽だ。
別にそこまで怒っているわけではない。少し、気に入らないというだけ。
いつもどおりの微笑を浮かべて、ひときわ優しく言う。
「ううん、いいの。次から気をつけてね?」
この程度の許しですら、神からの許しを得たと言わんばかりの表情になる・・・そんな君らが本当に大嫌いだ。
「大丈夫、私には皆がいるから・・・殿下を好きになることはないと思うの。」
顔に浮かぶ安堵と喜色。
あぁ結局、繰り返しか。
・・・・・・あぁけれどやはり、私を叱ってくれる兄さんはどこにもいない。
明けましておめでとうございます。
本当どうしようもないゲスな主人公ですが、今年もよろしくお願い致しますm(_ _)m




