神に等しき化け物
第二話です。
今回は、『長く、ゆっくりと……』をモットーに投稿していきたいとおもいます。年末になるにつれて 、更新は不定期になりますが、どうか長い目で見守 って頂ければ光栄です。
今回も、窮地に立つ主人公ですが、必ず最後には『 幸福な結末』が待っています。
悪い、――――さん。俺、あんたの事守れなかった。
なぁ、あんたは今、
どこにいるんだ?
『あいつ』はどこに行ったんだ?
なあ、なあ、……教えてくれよッ!!
序章・個人戦争の開幕。
室内に高らかに鳴り響く警報。
それは堕天使覚醒事件から二週間後の出来事だった。
薄暗い室内が慌ただしく、異質な熱気と焦りが籠っている。室内には数人しかいないが、その身につけている軍服は少々変わっていた。藍色の開襟型のジャケットに緑色のネクタイ。ベレー帽を被れば、第一次世界大戦の軍隊に見えなくもない格好だ。
「た、隊長っ! 先程から第二部隊からの応答がありません!」
一人の軍服を着た若い男が上擦った声を上げる。
室内はさらに騒然とし、血相を変えた。
「狼狽えるな。まずは襲撃者の正体と各部隊の状況確認が最優先だ」
彼らは二週間前の堕天使覚醒事件から作られた警省と日本政府の対奇術組織の特殊部隊、魔術警備隊。だが、二週間でこの有り様だ。この島を救った少年に顔が立たない。
「……ですが、第一部隊も応答なしと見ると、結構な厄介事なのでは?」
副隊長の眼鏡の男が隊長に耳打ちをする。
「むぅ、二週間前の事件もあるからな。多少のいざこざは発生すると思っていたが、案の定だ」
「応援を要請しますか?」
隊長が言葉を返そうとしたが、直接監視カメラへと繋がるモニターを確認していた男が声を上げた。
「た、隊長。襲撃者の正体が発覚しました……」
室内が沈黙する。誰しもが固唾を飲んで彼を凝視した。そして彼はモニターを指差し、震えた口で言葉を声と化す。
「MSL第一位の神流月です」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
意識を失った無数の魔術警備隊達の中心には冷たい瞳を持った黒髪黒ロングコートの青年が佇んでいた。
その青年の眼差しは、魔術警備隊を蔑む様な視線でも鬱陶しそうな視線でもなく、ただ虫けらを哀れに思う様子だった。
「…………」
青年は無言で夜景を見つめ、呟いた。
「……三年ぶり、か。ここが、あの事件の現場」
彼の名は神流月。最強を名乗れる称号を持つ奇術師の中の頂点に君臨する男。
MSL第一位だ。