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悪役王子に転生したら、ヒロイン全員から好感度マイナス100で断罪確定ルートにいた件

作者: 桜木ひより
掲載日:2025/12/10

「──断罪イベント、明日じゃん。」


気づいた瞬間、レオン・バルツァーは青ざめた。

ここは乙女ゲーム『エターナル・ブロッサム』。

前世で俺……有岡慎也がプレイしていた、悪名高き"死に確キャラの悪役王子"の世界だ。

そして俺はよりにもよって、その悪役本人に転生していた。


いや、なんでだよ。


転生するならもっとマシなキャラがあっただろ。

なんで悪役王子なんだよ!?

しかも、レオン・バルツァーって、ゲーム内で一番の嫌われ者じゃねぇか。


俺は鏡を見た。

金髪碧眼のイケメン顔が映っている。

見た目だけなら確かに王子様なんだが、性格が最悪という設定の人物だ。


「くそ、思い出してきた……」


原作のレオンは、ヒロイン三人全員に嫌がらせをし続けた結果、好感度マイナス100で断罪イベント確定という救いようのないキャラだった。


しかも明日が断罪の日。


「間に合うわけねぇだろ!」


いや待て、落ち着け俺。

とりあえず善行だ。善行を積めば好感度は回復するはず。

ゲームならそういうシステムのはずだ。


そう思って俺は城の廊下を走り出した。




最初に会ったのは、清純派ヒロインのアリシアだった。


金髪碧眼の美少女で、見た目は天使そのもの。

だが原作では、レオンに家族を陥れられた恨みで復讐心を持っているという裏設定がある。


彼女が廊下で本を落としているのを見つけた俺は、即座に駆け寄った。


「おい、アリシア! 本を拾ってやる!」


善意100%の行動だ。

だが、彼女の反応は最悪だった。


「──レオン様……?」


彼女の目が、氷よりも冷たくなった。


「また嫌がらせですか。もう結構です」


「いや違う! 純粋に拾おうとしただけで──」


「触らないでください!」


バシィン!


本ごと手を払われた。


痛ぇ! いや、なんで善行が嫌がらせ扱いなんだよ!




次に出会ったのは、不思議系ヒロインのミレイだった。

銀髪に紫の瞳を持つ、幻想的な美少女。


だが裏では暗殺組織の刺客という設定がある。


原作では、レオンが彼女の任務を妨害し続けたため、めちゃくちゃ嫌われている。


彼女が中庭のベンチで昼寝をしているのを見つけた俺は、毛布を持ってきて優しくかけてやった。


「風邪ひくなよ」


完璧な善行だ。

だが、目を覚ましたミレイは毛布を見て、顔を真っ青にした。


「……この毛布、毒でも塗ってあるのかしら」


「塗ってねぇよ!」


「信じられない。あなたのすることに善意なんてあるわけがない」


彼女はそう言って毛布を投げ捨て、去っていった。


なんでだよ! ひどいな…普通に親切心だったのに!



最後に会ったのは、天使系ヒロインのエステルだった。

ピンクの髪に優しげな笑顔が特徴の美少女。


だが実は隣国のスパイという設定で、レオンが彼女の正体をバラそうとしたため、絶対に許さないリストの最上位に入っている。


彼女が階段で転びそうになっているのを見た俺は、全力で駆け寄って支えた。


「危ない!」


「──きゃっ!」


完璧に受け止めた。

だが、彼女の顔は怒りで真っ赤だった。


「……わざと転ばせようとしたんですか?」


「いや支えただろ今!」


「演技です。私、騙されませんから」


彼女は俺を睨みつけて去っていった。


もう無理だ。

好感度マイナス100ってこういうことなのか。何をやっても悪意に取られる。




そして次の日。

今日は断罪イベント当日だ。


俺は謁見の間に引きずられていた。

三人のヒロインが並んでおり、それぞれが冷たい目で俺を見つめている。


「レオン・バルツァー。お前の罪状を述べる」


裁判長役の貴族が声を上げた。


「ヒロインたちへの嫌がらせ、陰謀、妨害行為。その全てが確認されている」


「待ってくれ、それ全部前のレオンの行動で──」


「言い訳は無用だ」


ああ、終わった。

このまま断罪エンドか。転生した意味ねぇ。


だがその瞬間──。


ドガァン!


大きな音と共に、謁見の間の扉が爆発した。


「──何だ!?」


煙の中から、黒いローブを着た男が現れた。


「お前ら、レオンを断罪してる場合じゃねぇぞ」


男が笑う。


「俺が仕掛けた爆弾が、この城のあちこちに設置されてる。あと五分で全部爆発だ」


「な──!」


周囲が騒然となった。


この男は元宮廷魔術師のガルドという奴で、原作では中盤に出てくる黒幕キャラだ。


「ヒロインたちも道連れにしてやるよ」


ガルドがそう言った瞬間、爆弾が三人のヒロインの足元に転がった。


「まずい!」


俺は咄嗟に動いた。


縄を引きちぎり、三人に駆け寄る。


「逃げろ!」


アリシア、ミレイ、エステルを押し倒すように庇った瞬間──。


ドガァン!

後ろで爆発が起きた。


背中に痛みが走る。


「──っ!」


だが、三人は無事だった。


「レオン様……?」


アリシアが驚いた顔で俺を見上げる。


「どうして……私たちを……?」


「そりゃ、お前らが死んだら困るだろ」


俺は笑った。


「ここで断罪されるにしても、お前らには生きててもらわないと」


「……っ」


三人の目が揺れた。

だがまだ終わりじゃない。


「ガルド、お前が黒幕だったのか」


俺は立ち上がり、男を睨んだ。


「ヒロインたちを陥れたのも、俺に罪を擦り付けたのも、全部お前の仕業だろ」


「よく分かったな」


ガルドが笑う。


「だがもう遅い。お前も、ヒロインたちも、ここで終わりだ」


彼が魔法を放とうとした瞬間──。


「させるか!」


俺は剣を抜き、全力で斬りかかった。

原作知識がある分、ガルドの動きは読めていた。


ガキィン!

剣と魔法がぶつかり合う。


「くっ……!」


だが、魔法を防ぎきった。


「お前の企みは、ここで終わりだ」


俺は剣を振り下ろし、ガルドの杖を叩き落とした。


「ぐあっ!」


彼は倒れ、そのまま兵士たちに取り押さえられた。




事件が解決した後。


俺は謁見の間で、ヒロイン三人と向かい合っていた。


「レオン様……」


アリシアが口を開く。


「私、ずっと誤解していました。あなたが私の家族を陥れたと思っていましたが……真犯人はガルドだったんですね」


「ああ。全部あいつの仕業だった」


ミレイも頷いた。


「私の任務を妨害していたのも、ガルドだったのね。あなたが止めてくれたから、私は罠に嵌らずに済んだ」


エステルも涙を浮かべている。


「私の正体をバラそうとしたのは、ガルドが私を利用しようとしていたからで……あなたは私を守ろうとしてくれたんですね」


「まぁ、な」


俺は頷いた。


三人は顔を赤くして、俺を見つめてくる。


「レオン様、ごめんなさい……」


「私も……誤解していました」


「本当に、申し訳ございません」


三人が深々と頭を下げた。


そして──。


「私、レオン様のこと……好きになってしまいました」


「私も、です」


「私も……!」


三人が同時に告白してきた。


「──は?」


いや待て。

好感度マイナス100だったよな? なんでいきなり告白を…?


「レオン様、私と結婚してください!」


「いえ、私です!」


「私が先に言いました!」


三人が俺に詰め寄ってくる。


「ちょ、待て!」


俺は後退った。

いや、嬉しいけど、展開が早すぎるだろ!




それから数日後。

俺は城の自室で、のんびりと紅茶を飲んでいた。


「ふぅ、やっと平穏が戻った……」


断罪ルートは回避した。

ヒロインたちの誤解も解けた。


これでやっと、普通の生活が──。


「レオン様♪」


ガチャ。


扉が開き、アリシアが入ってきた。


「今日は一緒にお茶をしましょう!」


「いや、今飲んでるんだけど」


「レオン様♪」


続いてミレイが入ってきた。


「今日は一緒に訓練をしましょう!」


「訓練はもう十分だ」


「レオン様♪」


さらにエステルが入ってきた。


「今日は一緒にお散歩しましょう!」


「散歩も昨日したばっかりだ」


三人が同時に俺に抱きついてきた。


「「「レオン様、大好きです!」」」


「重い重い重い!」


俺は叫んだ。


(いや、確かに断罪ルートは回避できたけど、これはこれで別の地獄じゃねぇか!)


「レオン様、どうしたんですか?」


「顔が赤いですよ?」


「もしかして照れてます?」


三人がニコニコと笑ってくる。


ああ、もうダメだ。

平穏な生活は、もう戻ってこない。


だが──。


俺は三人の笑顔を見て、少しだけ笑った。


「……まぁ、悪くないか」


前世では冴えないサラリーマンだった俺が、こんな美少女三人に好かれるなんて。

悪役王子に転生したのも、悪くなかったのかもしれない。


「「「レオン様!」」」


三人がさらに抱きついてきた。


「だから重い!」


俺のツッコミは、誰にも届かなかった。


こうして、俺の断罪確定ルートは、ハッピーエンドへと変わった。

まぁ、別の意味で地獄だけどな。


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