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episode 2

2人は歩き続ける。

魔族との戦闘の際に崩れたビルやショッピングモール学校などの残骸が道に広がっている。

2人はそれを避けながら、歩いていく。

颯太はどこに向かっているのかわからない。

ずっと紗夜についていくだけだ。


「あの、さっきは助けてくれてありがとうございます」


沈黙が気まずかったのか、颯太は口を開く。


「うん」


真顔で応答する紗夜。


(どうしたんだろう)


颯太はさっきから元気のない紗夜を心配する。


(やっぱさっきのあれだろうか…

身内を魔族に殺されたと言っていたし、そりゃ元気はないだろうな)


顔を少し下に向けながら颯太は思った。

兄の奈央は魔族の吸血鬼に殺された。

家族も魔族に殺された。

魔族が原因で颯太は身内が1人もいない。

今生きている人間たちだって、家族や、友人、恋人などの大切な人を失った人がほとんどだ。

それに、颯太も幼馴染の美玲を魔族に攫われて

魔族を恨んでいる。

魔族に恨みを持つ人間は多くいる。

そもそも魔族に恨みを持たない人間などいるものか。


「!?」


颯太と紗夜は目を見開く。

突如隣に建っていたビルが崩壊してきたのだから。


突然斧のような武器が颯太の真上まで来る。


バンバンバンバンバン


紗夜の武器である銃―5連発銃弾が放たれる。


その銃弾は斧に五発とも当たった。

が、斧には傷一つもつかない。

その銃弾に驚いたのか、斧を颯太に向けて振り下ろしていた人物が紗夜の方を向く。

その一瞬を見逃さず、斧を持っていた間に光が全くない人物の腕と足に銃弾を放つ。


「っ…」


痛みに口を尖らせる斧を持っていた女。

その瞬間を見逃さず、颯太が大剣で、その人物の後頭部を狙う。だが、斧で防御されてしまいその反動で、颯太は倒れる。


バンバン


2連発の銃弾は対象に当たることができず、不発に終わる。


紗夜は迷いの表情を浮かべる。

敵は強い。紗夜と颯太の力じゃ敵わない。

迷ってる最中だった。

斧は颯太の肩を深く抉り、出血している。

それも大量にだ。早急に手当てしないと失血死してしまう。目の前でまた人が死ぬと悟った紗夜は、

指を口で噛み、血を出した。

その血を地面に滴らし、円のようなものを描く。


「出てこい、クソ女」


紗夜の体は闇に取り巻かれた。

そしてその闇が消えた途端、さっきまでそこにいた紗夜は、別の人物になっていた。

幽霊のように真っ白な肌、薄青色の髪、

露出度の高い黒のドレスを着た女性だった。


「クソ女とは、気分が悪いな」


その女性は口を開いた。


「我が名はクルーシュ。8大魔女の一角だ」


そう言って片手を前に出したクルーシュが、

ニヤリと笑う。

その瞬間斧を持った女がいる場所の地面が亀裂した。

斧を持った女は上空に飛んだ。

女は上空に飛んだまま、下に降りてこない。

びびっているのか?と颯太は思ったが、

女は苦しんでいる表情をしている。


「貴様程度に、我の手が見えるわけなかろう。

我のこの手は、我以上に強い者しか視覚確認ができない。そういう技だ」


そう口角を上げたクルーシュ。

斧を持った女は、クルーシュの視覚確認ができない手によって、上空で締め上げ


られているのだ。

その女の前までクルーシュはやってきて、

驚いた表情をした。

なぜなら、その斧を持った女は、首に特徴的な刺青のようなものが彫られていたからだ。


「貴様さては、あの女に操られている操り人形(マリオネット)か?貴様人間だろ。魔族でもないただの人間が人間を襲うわけがない」


「っ…、ん、…っ」


痛みに悶える斧の女は、息ができなくなり、

気絶する。


「我の技で人間に戻してやる。我は魔女だが人類の味方にさせられた、良き魔女だからな、だが、操り人形(マリオネット)にさせられた時間が長い人間こそ自我を失い、人間の敵になり、処刑されることもしばしあるという、貴様はどうなるのだろうな」


クルーシュがそう言った後、激しい音を立てて辺りが発光した。


颯太は眩しさのあまり目を強く瞑る。


発光が終わって颯太が目を開くと、

先程まで、斧を振るっていた人物は目を瞑って寝ている。


「体は返す、紗夜」


クルーシュはそうつぶやき、クルーシュが闇に取り巻かれた。その闇が消えた途端、紗夜がそこにいた。


「力使いすぎてるね、私の体に負担が出るのも知ってるくせに」


紗夜はぽつりといった。


「あのさっきのは、?」


颯太が紗夜に問う。


「さっきのは私が契約してる魔女。8大魔女の一角だから、相当な力を持っているの。でも、私と契約したことにより本来の姿と力は出せずにいる。元の体から、魂だけを取り出し、魂だけを私の体の中に住まわせることによって、私が呼び出せば、私の体はクルーシュのものになり、体の主導権は全てクルーシュのものになる。さっきの姿はクルーシュの本来の姿。その間の私の魂は、クルーシュが握ることになる。目的を達成すればクルーシュは魂だけになり、私が戻ってくるということよ」


すごく難しいことを言われて颯太は困惑する。

そうこうしているうちに、さっき襲ってきた、斧を振り回していた人物が目を覚ます。


「っ!?ここは…」


目を覚ました人物は、目をこすりながら起き上がる。


「ごめんなさい!ごめんなさい!!さっきうちがしちゃったことは、ちゃんとわかってます!本当ごめんなさい!でも支配されてて、操り人形(マリオネット)になってて、うち自身の意志じゃなくて!!」


可愛らしい声をした女性は先程まで斧を振るっていた人物だとは思えない。


操り人形(マリオネット)って……?」


颯太はずっと言われている操り人形(マリオネット)がなんのことだが、さっぱりわからない。


操り人形(マリオネット)は、魔族が人間に勝った時に、自分の支配下に入れるためにする魔術の一つ。本人の意思は尊重されず、操り人形(マリオネット)を支配している人物が指定したことしかできない。それが操り人形(マリオネット)


「そうです!そうです!うっかり戦いで負けちゃって!」


紗夜が言ったことに、頷きながら元気に答える斧の人物。


「ねぇ、さっきから気になってたんですけど、貴方、

2年前に消えた『メシア』の最強戦力の、天城(あまぎ)めいさんですか?」


「そうそう!よく知ってるね!うちの名前天城めい!2年前はちょうど私が任務に失敗して、操り人形(マリオネット)になった時期と一緒だね!」


可愛らしい桃色の髪のツインテールを揺らして満面の笑みで笑うめい。


「最強の貴方でも負けるような強い人物だったんですか?」


「あー油断したの!イケメンだったからさ!だってうち、面食いだもん!」


思わぬ回答に紗夜は目を丸くする。

颯太は2人の会話についていけない。ただそれを見守ることしかできない。


「貴方の面食いは『メシア』でも有名でしたからね、」


紗夜は苦笑する。


「ねー君たちの仲間に入れてくれない?!」


めいはひらひらと自身が履いているスカートを靡かせそう言った。


「最強の貴方が加わってくれれば、それは嬉しいですが、自我もある様子なので、『メシア』に戻ったらどうですか、私は『メシア』を抜けてきましたが…」


「君だって知ってるでしょー?任務を遂行できなかった無能な人間は『メシア』を追い出されるって。直接言われたわけじゃないけど、あんな光景(・・・・・)見ちゃったら、わかるでしょ?君だって元は『メシア』にいたんだから」


さっきまで元気に笑顔で話していためいの顔には笑顔は消えていた。


「まあ、それが嫌で…他にも理由はありますけど…

『メシア』を抜けたのはそんな感じの理由ですからね」


「だーかーらー!2年も戻ってこなかったうちのことなんて忘れてるって!だから仲間にしてよ!」


「わかりました。よろしくお願いします。

私の名前は紗夜です」


「よろしく紗夜ちゃん。そこのイケメンくん?名前は?」


めいが颯太をちらりと見る。

颯太は誰のことを言ってるのかわからなかったが、周りに自分以外に男がいないので、自分のことだと悟った。


「俺は加賀美颯太です」


「そっかー!よろしくね!」


めいは満面の笑みを浮かべた。


「貴方は11歳で『メシア』の最強戦力。今は13歳という認識で間違い無いですか?」


紗夜は問う。


「そうそう!でもなんで?」


「11歳で最強戦力なんて、本当にすごいなって、羨ましいです。私は魔族狩りの才能ないので。契約してる魔女がただ強かっただけで。」


「君強いよ、うち見ただけでわかるもん」


めいは不思議そうに紗夜を見る。


「そう見えますか…」


紗夜は下を向く。

その会話をしている紗夜とめいを颯太は驚くように見る。


「紗夜ちゃん達はどこに行く予定だったの?」


めいが問う。


「あちらに行こうと思っていて」


紗夜が指差した方向には白色の建物が立っていた。


「食料を手に入れる場所も少なくなっているので」


紗夜はいう。魔族が蔓延ってから、食料の確保が難しくなっていった。お金があっても食料を手に入れるのが難しいというのが現状だった。


「うちお腹減った!いこー!」


めいは颯太と紗夜の背中をばんと叩いて、走って白色の建物へと走っていった。









天城めいの特徴を本文に入れていなかったので、補足させてもらいます。

白いフリルがあるワイシャツに黒のリボン、黒色のスカートに、ガーターストッキングを履いています。

あと桃色の髪でツインテールしてます。

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