3.灯淵
下水道の臭いが鼻にツンと刺し、時々首まで熱いものが込み上げる中――
ジークはお父さんと言われる男に縄でぐるぐる巻きにされ担ぎ上げられていた。
泉で見た2人の少女はうしろをひょこひょことついていき、茶髪の少女はべろべろと舌を出してジークを挑発し、銀灰色の髪をした少女は腕を組み澄ました顔をしたかと思えば、彼に裸を見られてしまったことを思い出してしまったようで時々頬を赤らめジークに砂をかけるのであった。
実は、ジークには逃げ出す手段はいくつもあった。
彼にはダンジョンの奥深くで見つかった古代の秘宝やその辺に落ちていた石まで、12個の秘密兵器がある。
これらはリウム王国では酔っ払いジークの12兵器と言われ彼を象徴するものであった。
しかし、彼はそんな無粋なことをしない。
どころか、こういったトラブルを体験し、のちに酒の席の話として話すのが彼の楽しみであった。
「なぁ…よい」
ジークは樽に話かける。
「なんだ、酔っ払い…死にてぇのか?」
大きな樽は答えた、しかし、驚きもせずジークは続ける。
「俺は今どこに向かっているんだ?そろそろ眠くなってきたぞ…?」
すると、銀灰色の少女が嘲笑を浮かべながら話に割り込む。
「なに言ってるの!?あなたは今から“裁きの広場”へ連れて行かれるのよ!」
銀灰色の少女は冷たく言い放ち、その瞳はまるで刃のように鋭かった。
「裁きの……広場?」ジークは首をかしげる。
「広場ってことは……酒場も近いのか?」
「バカ言わないで!私達が住んでいる灯淵では聖女の覗きは重罪なのよ!!!」
茶髪の少女が笑いながらも舌を出す。
「あんた、そこで死刑宣告されるんだから!」
しかし、ジークはにやりと笑った。
「聖女にしてはかわいらしい身体だったな」
2人の少女は赤面し、ジークを睨みつけた。
『こいつここでぶっころす!!!』
気づけばジークの目の前には2つの拳があった。
ジークは灯淵という地下街に着くまでの間、2人の少女から恐ろしい目にあったとのちに酒場で語る。
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ジークは殴られ、蹴られ、砂まで口に押し込まれながらも、酒のつまみを食べている気分で耐えきった。
そして縄で縛られたまま運ばれた先に現れたのは――
地下とは思えぬ光に満ちた、奇妙な都市 灯淵。
石造りの回廊には露店が並び、人々のざわめきが満ち、中央には巨大な広場が口を開けていた。
その名も「裁きの広場」。
ジークのゲスい人生にとって、ここは間違いなく次の酒の肴になる場所である。




