2.天獄
「きゃぁぁぁぁぁ!」
と叫び声が響き渡る。
どうやらジークは陥没した道路から真っ逆さまに落ちてしまったらしい。
どうやら、この空間は魔力が充満しているようで特殊な光で満ちていた。
頭がくらくらする中、泥の泉に浮かび上がった彼が目にしたのは――二人の裸の少女だった。
彼女たちはこの泉で水浴びをしていたようだ。
銀灰色の髪を濡らし、警戒心を隠さずにこちらを睨む少女。シルクのような滑らかな肌が泉の光を受け、聖女めいた輝きを放っている。
一方、隣の少女はジークにバシャリと水を浴びせ、甲高い声で助けを呼んでいた。
茶色の三つ編みが揺れ、怯えて震える姿は小動物のように愛らしい。
「……ここは、天国か……」
ジークはうっとりとつぶやいた。
しかし次の瞬間――
「おい!なにがあった!」
と、大柄な男が壁の向こうから乱入してきた。
「変態よ!私たちの水浴びを覗きにきたの!」
「お父さん!早くこいつを片付けて!」
ジークは泥の中から慌てて両手を振る。
「ち、ちがう!俺はただ、陥没した穴から落ちてきただけで――」
「黙れ変態!」
男の怒声が下水道に響く。
「だから違うって!俺はそんな趣味じゃない!……いや、まぁ多少はあるかもしれんが!」
「自白したな!」
瞬間、男はジークの首根っこを掴み、軽々と持ち上げた。
「お前みたいな怪しい奴は、この地下街で裁きを受けてもらう!」
「裁き!?やめろ!俺は酒が飲みたかっただけなんだ!」
少女たちは水面から顔だけ出して、冷ややかにその光景を見ている。
銀髪の少女は鼻で笑い、茶色の三つ編みの少女は「ざまぁみろ」とでも言いたげに舌を出した。
こうしてジークは、光り輝く不思議な下水道の奥――「地下街」へとずるずる引きずられていくのだった。




