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「前々からステリックの行っている違法な取引には王家も注目しててね。ただ、調査しても証拠が見つからないまま手詰まりしてて。そんな時に今回の舞踏会を閃いたんだ。アイツをここに呼び出して君の立派なドレスを見せたら、どうするのかとね」

「……よく分かりましたわ」

「あっ……勿論、それだけじゃなくて、普段から図書館で本の事を楽しく教えてくれた君に恩返しをしたいとも思って……」

「……もう、いいのです」


マルカラン王子がロザーラを愛して国一番のオッカムを贈ったのではない、そう彼女は思った。

考えてみれば当たり前の話。

宮廷道化師が王子様と面と向かって話せない様に、公爵家のステリックが行った婚約破棄を侯爵家のロザーラが覆せない様に、王子様が本来、ロザーラなんかにプレゼントを贈ったりしない。

期待した私が馬鹿だったわ。

どれだけ都合が良くても夢は夢、朝になれば必ず覚める。

夜が更け、街頭に照らされる花が美しく輝く庭園での一時も、次の日になればロザーラは二度と見る事は出来ないだろう。

それ程までに、王子様との身分の差は覆せないものだった。


「今日、休憩が終わって次のダンスを貴方と一緒に踊れれば、それで十分ですわ。お気になさらず、王子様に私なんかが似合わないのは分かっています」

「ロザーラ……」

「ステリックの調査は私も協力しますわ。相手は私を無茶苦茶な理由で婚約破棄してきた人ですもの。ですから……今日だけは夢を見させてくれませんか?」

「……喜んで」

「ふふっ、婚約破棄して新しい女を作った人が王子様とダンスをするのを見てしまったら、きっとビックリするでしょね」

「きっと驚いて、ボロを出すだろうな。君と僕の仲を妬み、嫌がらせしてくるかもしれない。そうなったら王家に手を出したという大義名分が出来、君を陥れた事も撤回が出来る。……約束するよ、君を幸せにする」

「その言葉だけで十分ですわ。さっ、暗い話は終わらせて本の続きでも話しましょう?」

「……そうだな」


勝手に期待したのは自分、ロザーラはそう納得させ涙が流れそうになるのを堪えた。

王子様が私の事を案じてくれただけでも十分、それ以上を求めるなんて駄目よ、私。

私が今日、こんな大舞台に来れただけでも嬉しいのに、王子様と結婚だなんて……無理に決まってるわよ。

こんな優しい笑顔を二人だけの空間で、侯爵家の私だけに見せてくれただけでも本当ならありえない話なのに。

こうやってロザーラは自分を必死に納得させた後、また元の本の話に戻った。

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