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図書館で本を読んでいたのが、フランコ侯爵家の令嬢、ロザーラ・ド・フランコの婚約破棄の理由だ。


「……そんな馬鹿な話、ないでしょ」


ロザーラはその王立図書館、アルベザでお気に入りの本を読みながら涙する。

何度も何度も涙を拭い、既にハンカチはびしょ濡れだ。

……今日はもう、本を読めそうにないわね。


「おやおや、どうやら図書館の魔女はお困りらしい。どうされましたかな?」


泣いてるロザーラの元へやってきたのは仮面の男。

南方でしか採れないオッカムという宝石を仮面の全面に彩っており、怪しいながらも高貴な生まれと一目で分かる。

彼は図書館の管理人とも仲が良く、謎が深いながらも優しい人だ。

思わず、口から愚痴が漏れる。

昔からの婚約者でありながら、急に別れを告げたステリックへの。


「……私の婚約者が、別の女性と結婚式を挙げるって言っていたのよ。昔からずっと、彼の為に生きてたのに」


ロザーラの家と両親の為に、ロザーラは婚約相手のステリックに相応しい令嬢として育てられた。

国一番の家庭教師を雇い、彼の貿易商を支えられる勉学を、侯爵令嬢として相応しい規律を。

ステリックに気に入られる為に努力し、両親から遊ぶことを禁じられ、結婚式を間近にして漸くロザーラは完璧に相応しい令嬢となった。

それなのに、彼のより相応しい相手を見つけたの一言で全てが終わり。

……あんまりでしょ、そんなの。


「……酷い話だ。で、君は彼に復讐したいと思ってるのかな?」

「まさか! ……そう思っていたとしても出来ないわ。相手は公爵家、変に抗議しても大変なのはこっち。それに私は第三令嬢。既にお姉様は結婚してるし、私が駄目でも家は無事だから」

「……あまり納得してるようには見えないな。まぁいい、それよりハンカチをどうぞ」


そっとロザーラに渡されたのは、王家の紋章が縫い付けられているハンカチだ。

嘘でしょ!? 彼、王族だっていうの!?


「何やら物凄い勘違いをされているみたいだけど、僕は王族じゃないよ。宮廷道化師なんだ。歌と踊りで悪い話も楽しく聞ける、それが僕の役割でね」

「そうだったのですね。でも、不思議です。宮廷道化師は身分のせいで王族と触れ合えないと聞きますが」

「今の王子様は優しいから大丈夫なのさ。このハンカチもその王子様から貰ってね」

「なら……大事な宝物じゃないですか。どうして私なんかに?」

「王子様から大切な人を出会えたら贈るといいと言われてるから大丈夫だよ。君と一緒に本を探すのは楽しいし」

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